44.
ハルナ、夢、愛の会話録
愛が白い着物を着て榊を手に祈りを捧げる、その姿は神がかり見る者を魅了する美しさが有る。
祈りが終わり愛がハルナと夢を見る、祭壇を照らすかがり火が愛を後ろから照らし、愛に後光がさすがのように愛を照らす。
「ハルナ、そなたが黙っていると話しがわからない。何をそんなに思い詰めている?」
愛がハルナに相談の内容をたずねる。
ハルナが自分の胸の前で手を組む。
「あの、愛様。将は夜になると何時もっ」
ハルナの話しが止まる。
「何だ、もしかして将はまだ。はっ、まだ女になっておらんのか? 困ったの、将の奴そこまで奥手だとは思わなかったぞ。
仕方無い。私が一肌脱ごうかな」
「「え?」」
「ち、違います。どちらか言えば凄く激しいと言うか、情熱的と言うか」
ハルナが顔を赤らめ手を頬に添える。
愛が夢を見る。
「夢、お前さんはどうだ?」
「えっ、いや。ど、どうって。
わ、私は嬉しいかな。刀と農作業しかしてこなかったから、あんなに情熱的に求められるとって、違う、今日はそんな話をしにきた訳じゃないの」
「まあまあ、良いじゃないの。女同士、ゆっくりと聞きましょう」
「愛様」「愛姉」
ハルナと夢が愛を睨む。
「なんじゃ、つまらんの。それで悩みは何だ?」
愛にそう聞かれ夢がハルナをつっつく。
「あ、うん。
将ね、寝てる時何時もうなされるの。何時も脂汗かいて苦しそうにしてる、愛様。将を助ける方法は無いかな?」
「うなされる? 何か夢でも見てるのかい?」
「うん、そうだと思う。私が初めてハルナと将と一緒に寝た時も将のうなされる声で目が覚めたもの」
「そうか」
愛が短く返事をすると深い溜息を出して下を向く。
「将はな、凄く優しい男だ。
人を傷付ける事も苦手で、人が嫌がる事をするのも嫌うような奴だ。
今の将からしたら不思議だろ。今の将は敵と認めた者には容赦無い、冷徹で冷酷な男にしか見えないからな」
「うん、何時も不思議に思う。将は凄く優しい、私と夢が嫌いな事はしないし嫌がる事も言ったりしない。
星空を見て綺麗だなって言って喜んだり、虫が入ってきたのを見て逃げたり、その辺に咲いてる花を見て綺麗だって言ってワザワザいけたりするしね。
だから、敵を追い詰める時の将が本当の将なのか、私や夢と一緒にいる時の将が本当の将なのか分からなくなる」
「ハルナ、その両方が将だよ」
「私も何と無く不安に思う事がある。将は恐怖心が欠けてる気がする、崖の上から降りて来る時も卒倒しそうになったけど、対峙している時の将は冷静過ぎる。
私だっていまだに対峙する時は興奮したり、怖かったり、呆然となって頭が真っ白になる事だってある。
でも、将はそんな事を感じさせない。なんか、将1人の中だけ時間が違う動き方をしている気がする」
「何だ、2人共良く理解してるじゃない」
愛がハルナと夢を見る。
「これはババ様から聞いた話だ。
将を私達に預ける事にしたのは、将がいた世界の龍神様だ」
「「龍神様!?」」
「そうだ、龍神様だ。
将は元々戦いをしない、武器を持たない、実際に農具すら持った事のないひ弱な男だった。
それがある日、勇気ある者を欲した国の大姫によって将が呼び出された。
戦いを知らない将が武器を手に取り、人と人との殺し合いに駆り出され、いつしか将を中心に戦いが進むようになった。
そこでね、将は心の中の大切な物をどんどんと失って行ったの」
「愛様、それはかなり悲しい話ですか?」
「ハルナ、そうよ。でも貴方はそれを知らないといけない」
「愛姉、それは私とハルナと一緒に知っても良いんだよね」
「当然よ。辛い事は貴女達2人で分けなさい、嬉しい事は将を入れて3人で分かち会いなさい。
ハルナと夢は将と一緒に暮らして将を癒してあげなさい」
「うん」「はい」
「私はババ様と一緒にその龍神様から話を聞いたわ。
その龍神様が私とババ様にわざわざ頭を下げたの、将を助けて欲しいって」
「あ、あのさ愛姉。
龍神様って、あの龍神様だよね。
そんな凄い神様が何で将の為に頭を下げるの? 将ってもしかして物凄く高貴な家柄とかじゃないよね」
「無い無い。将はその辺の子供だよ。ただ一つ違うは私らのずっとずっと先の子孫だって言ってたことかな」
「「え?」」
ハルナと夢が固まってしまう。
理解が追いつかないハルナと夢を見て愛が楽しそうに笑う。
「そうだよね。それが普通の反応だって言うの、私も固まったもんね。
でもさ、ババ様は何一つ驚かないのよ。将はその運命を授けられた男であって龍神様が選んだ男だ、なら我々の一族全ての思いを将に預けるって」
「愛様、私の頭じゃそれ以上は無理」
「愛姉私も無理、外で型の稽古でもして体解さないと続き聞けない気がする」
「仕方ないね。体ほぐしたいなら将にほぐしてもらいな。どうせ毎晩ほぐしてもらってるんだろう、羨ましいよ本当」
からかうように言う愛に対し、顔を赤らめ慌てるハルナと夢。でもそんな、本当にくだらない事で頭の中がスッキリとしたのだろう、落ち着きを取り戻す。
「あの愛様。将が私達のずっとずっと先の子孫って言ってましたけど、それってどう言う事ですか?」




