4.
海辺で呆然と門馬 ハルナと村の子供達が消えて行くのを見送る、人の姿が見えなくなるまでその場に留まってボヤッとしてしまった。
そして重要な事に気が付いた。
ここは平安時代初期、俺がいた時代よりも1200年も前の時代来てしまったと言う事だ。有る意味異世界に行くより厳しい事かも知れない。
本当にどうしよう? 時代が違い過ぎる、どうやって生き残れば良いんだ? 一応、財布に金はあるけど今の日本円は100%使えないよな。
まずだ、まずは住む場所、そして食べ物は最低限必要だ。向こうでは俺を呼び戻すと言っていた、もうそれを信じて待つしか無いが、待つにも最低2ヶ月は待たないと行けない。
そこにプラスして俺を呼び戻す為の元の場所、恐らく召喚された場所に戻らないと行けないはずだ。多分だけど。
その日俺は、学校の休みを利用して御台場海浜公園に来てプラプラしてたんだよな。そんな時に急に召喚されたからなぁ、どうしたものかなぁ。
ましてだ、歴史関係のテレビなんかでたまに見る事が有る古地図なんかだと、今とは海の位置とはかなり違う。
御台場海浜公園って完全に海の中だ、そんな場所にどうやって行けば良いんだ。どうやってあの海の上で待てば良いんだ?
1人で悶々と考え込んでいると村の中から男衆が集まって来た。
手には海の漁で使うのだろう銛を持ち、警戒心MAXで俺を見ている。
「いた、じいちゃん。まだあの男いやがるよ」
門馬 ハルナが男衆を引き連れ一際でかいオジ様。と言うか、まるで角の無いオーガのようなガタイの良いオジ様を連れてきた。
身長も2m近いじゃないかな、俺より確実にでかいし、俺で175cmだ。その俺と比べてもでかいな。
このオジ様も男衆もみんな金髪に白い肌だ。さっきの鑑定の通り渡来人、ここはいわゆる外国出身の人達が集まって作った村なのかも知れない。でも、やっぱりできの悪いコスプレを見ている気分だ、まぁこの人達からしたらこれが普通なんだろうけど。
しかし俺みたいな黒髪に黒目の奴がいない、俺の方が完全な異分子だな、不必要と言われてここから弾き出されそうだ。
「お前さん、何処から来た?」
突如、オーガの如きオジ様に声をかけられた。
「ああ−、詳しい事は俺も分からないが、海のあっちの方角だ」
そう言って海を指さす。
俺の答え方に男衆が物凄い緊張感を持つ、手に持つ銛を握り直し何時でも俺に銛を突き立てる準備ができている。そう言ってるみたいだ。
「お前さん、名前は?」
「俺か、俺は鬼頭 将。おっちゃんは?」
「わしか、わしは門馬 忠勝。このハルナの祖父でこの村の漁師頭をしている」
「そうか、おっちゃんって偉い人なんだな」
「きさまぁ」
門馬 忠勝の前に立つ男が動こうとして止められる。
「頭、こんな奴殺して魚の餌にしてやればいい」
「「「「「そうだそうだ」」」」」
門馬 忠勝が男衆の前に立つと両手を広げて、まるで俺を守るように立つ。
「鬼頭 将はわしが預かる、皆今日は屋々に戻れ」
「「頭?」」「おじいちゃん?」
「聞こえ無かったか? この鬼頭 将はわしが預かる」
門馬 忠勝の静かだが、強く気迫のこもった声に男衆も門馬 ハルナも従うしかなかったようだ。集まった男衆が1人、また1人と家に帰って行く。
「来い、何も無いが寝る所と食うもの位は出してやる」
門馬 忠勝がハルナの手を引き移動する、そこに俺もくっついて行く。
だってしょうがないじゃ無い、先ずは今日の寝床と飯の確保が大事だ。2人の後を付いて行きながら、心の中でガッツポーズを取ってしまった。
家に案内されるとそこはでかい家だった。平屋で手前に3部屋、奥にも2部屋も有る。
「すげ、でけぇー家だな」
その大きさに驚いているとハルナが俺を見てドヤ顔している。
「蝦夷程度に、こんな家は持てんだろう」
「ハルナ、余計な事を言うもんじゃ無い。この家は漁師達の冠婚葬祭も行う、広く無いと皆入れんだけだ。
普段はハルナと二人で使っている。空いてる部屋を好きに使ってもらってかまわん」
自宅で冠婚葬祭を行うのか、知らない習慣だ。
◇◇◇◇◇◇◇
「ハルナ、あいつ何処にいる?」
「畑だよ、畑の石を拾ってる」
忠勝が畑をちらっと見る。
「じいちゃん、何であんな奴に気を使う。とっとと追い出せば良いのに」
ハルナが凄く不機嫌に忠勝に文句を言う。
「ハルナは気づかんかったか?」
「何を?」
忠勝がフゥとため息を出す。
「あいつに会った時だ。幸太郎、又佐、伝次郎の3人が恐怖で震えて後退りした」
「はっ? あっはははは。ありえないよ、だってあの三馬鹿烏(※)だよ。
海に入ればデカい鮫やデカい鯨を銛だけで捕らえるし、山に入ればあの3人で熊や猪の群も仕留める命知らずの大馬鹿者だよ。
ありえないってぇ」
「そうだ、その大馬鹿者の3人があいつに挑む前に負けたんだ」
忠勝の言葉にハルナが緊張する。
「すると奴は蝦夷じゃなく、実田の連中、もしくは都の者だと言うの?」
「恐らくは蝦夷の系統だろう。あいつの独特の話癖は蝦夷のものだ。
だが、わしらがそれを決める訳には行かない。菅生の棟梁に報せる」
「はぁ、仕方ないね。しばらくは私が面倒見るよ」
「だが無理はするなよ。万が一、都の関係者だとしたら実田に対する偵察の可能性も有る」
ハルナの顔が青くなって引き締まるる。
「ここに攻めて来る気かも知れないって事?」
「分からんが、そうならん事を願うしか無い」
三馬鹿烏(※)⇨当初は三羽烏と表記をしましたが、三羽烏よりも愛着や信頼関係の有る関係性の表記に少しでもなればと思い、この表現方法となりました。




