39.
桃太郎Side
「立花 狂歌様、真北 雄心様は約30名の馬兵を伴い鬼がしらに挑み、討死されております」
「ば、馬鹿な!?」
物見の話しを聞いた時東 鎌田薫 只信が固まってしまう。
時東 鎌田薫 只信は真北達の馬兵の能力を良く知っている。機動力が高く、馬兵1人で時東一族の兵5人分に当る能力を持つ。
単純計算だが馬兵30名あれば、鬼の島等簡単に潰す事が出来るほどの能力が有る。それだけの能力を持つ者達だ。
実際に時東 鎌田薫 只信が関東一帯を統治出来たのは、このカマリの一族が合っての事。それ程の戦力一つが負けた事になる。
「もう一度聞く、あの立花 狂歌は馬兵30を連れ山賊の王と呼ばれたオガルの一族100名を潰した手練れだぞ。
その立花 狂歌が殺られたと言うんだな?」
「ハイ」
物見が頭を下げる。
「順を追って説明いたします。
最初は真北 雄心様が鬼がしらに1人で挑みました、立花様も父である真北 辰之助様の敵討ちと申して許可をなされました。
戦いが始まり馬を走らせた途端に馬が鬼がしらを見て暴れ出しました。その常軌を逸する暴れ方に流石の真北 雄心様も馬上から振り落されました。
真北 雄心様は何が起きたかわからないと行った感じでしたが、油断無く鬼がしらと対峙。
すると何度と無く鬼がしらが真北 雄心様を挑発するかの如く、立花 狂歌様に声をかけておりました。
真北 雄心様はそんな挑発に乗らず鬼がしらと対峙、まことに立派な御姿でございました」
その後の話を聞いた桃太郎と時東 鎌田薫 只信が更に固まってしまった。
鬼がしらを取り囲んだ馬兵達が突然馬から振り落とされた、物見達も見ていたが特に何かをしたとは思えなかった。それは雄心が馬から振り落とされた時と同じ状態と判断される。
鬼がしらの妖術は馬ですら脅威を与える、そう判断されると考えられた。
つまり最強の馬兵たる所以、馬を操る技術すらを簡単に崩してしまう妖術が有る。それこそがカマリが負けた所以の一つとなったのだ。
その後、鬼がしらを囲むようにいた馬と人をたった一振りの閃光でほぼ全てを倒してしまった。物見達も、その恐ろしさに思考すら止まってしまったのだと言う。
信じ難い話しばかりで固まっている桃太郎と時東 鎌田薫 只信の所に、タイミング良くと言うか、気持ちの切り替えれるタイミングに猿山 胸吉 六郎がやって来る。
「お館様、桃太郎様。ご報告がありやってきました」
「あ、ああ。猿山か? なんだ?」
「ハイっ」
猿山 胸吉 六郎が思考停止している時東 鎌田薫 只信と桃太郎を見ていて驚いて動きが止まる。
「桃太郎様より話があった石を遠くに飛ばし猟を行う者達が発見されました。
そして、その猟師の中で特に優秀と言われる者を連れて来ております」
「わかった、先ずはその者の腕が見たい」
「ハイ、では外に行きましょう」
少し疲れた顔をしている桃太郎と時東 鎌田薫 只信が猿山の後に付いて屋敷の外に出る。
すると獣の皮を着込んだ3人の男達がいる。その手に縄の両端に重りのような石を取り付けた物を持っている。
「おい、待たせた。
こちらが実田の国のお館様と桃太郎様だ」
猿山が猟師達の所に行くと的に見立てた板を4枚準備する。
「では、これよりこの猟師達の腕をお見せします。普段は動く動物を狙う者達ですが、今日はその威力だけでもと思い板を準備しました」
桃太郎と時東 鎌田薫 只信が不思議そうに猿山と猟師を見る。
猟師の一人が縄の両端に付いた石の片方を持つと勢いよく振り回し始める。
ヒュン ヒュン ヒュン
と軽快なリズムを刻みながら縄を回す猟師が桃太郎を見る。
「桃太郎様、どの板に当てるか決めてもらえますか?」
「何? 当てる板を選ぶ事が出来ると申すか?」
「ハイ」
猟師が不敵に笑う。
「なら、右からふたつ目」
ヒュン ダガン!!
「「おおー!!」」
猟師が投げた石は桃太郎が指定した板を突き破り地面に落ちる、それを見た桃太郎と只信が顎が外れんばかりに口を開けて呆けている。
「ではお館様、次の的を指定して下さい」
最初に投げた猟師と違い片側だけに30cm位の大きな石を付けた猟師が、石を振り回しながら言う。
「な? そのようなデカい石であの板まで届くと言うのか?」
「ハイ、これは普段熊等の大きな獣を仕留める時の仕留め石にございます」
「されば左端だ」
ビュン、ビュン、ビュンと力強い音が聞こえ仕留め石が放たれる。
ドガン!! ダダン!! ドン!!
放たれた仕留め石が板の真ん中に命中すると、板が真っ二つに割れ石が勢い良く通り過ぎ、納屋の壁に突き刺さり何とか止まる。
「「おお〜」」
只信と桃太郎の驚きと喜びが混じった溜息が出る。
「猿山、猟師の者達よ。良い物を見せてもらった。褒美を取らす」
時東 鎌田薫 只信が満足気にそう言う。
「桃太郎。このような技術を持つ者達を集めよ、これ程の腕利きが揃えば鬼がしら等恐れるに足らず。
如何に奴の妖術が優れていようとも物の数にはなるまい」
「ハイ、農作業が終る頃までには十分な数を揃える事が出来ると思います」
「それと、カマリ達が集めた農民や山賊達にもおふれを出せ。
奴等に農作業を行う暇を与えるつもりはない、食が無ければ生きて行けぬが人としての道理。来月再度鬼共の島を襲わせろ」
「は、分かりました。ですがよろしいので?」
「かまわん、鬼共の島と繋がりを持った事を後悔させてくれる。さすれば我らが本隊が戦う時に鬼共の島に味方する者はいなくなるだろう」
「かしこまりました」




