38.
桃太郎Side
カマリ達が大蔵村を襲撃した報告は物見達を通じてすでに桃太郎を始め時東 鎌田薫 只信、京にいる時東 太助 小三郎の耳にも入っていた。
その後、物見から次々と報告が入る。それは桃太郎達が当初予定していた事と完全にずれた報告だった。
桃太郎と時東 鎌田薫 只信が揃って屋敷にいた時、物見の1人が駆け込んで来た。
「お館様にご報告」
「申せ」
「は。 カマリ棟梁 真北 辰之助様、討死。お目付け役 丹波 直之様、真北 ヒマリ様共に果たし合い上、討死なされました」
その報告を聞いた桃太郎と時東 鎌田薫 只信が固まる。
この真北 ヒマリは桃太郎付きの侍女であり、桃太郎の護衛を兼ねた存在で桃太郎の夜の相手でもある。
「待て、何故にヒマリがそのような戦場に行ったのだ?」
時東 鎌田薫 只信が不思議そうに言う。
「は、カマリの親方の一人が連れて行ったのは覚えております。但し崖の下に待機し真北 辰之助様の帰りを待つだけでございました。
所が崖の上にてあの鬼頭 将が待ち受けており、勝てる者なしと真北 辰之助様が戦いを挑み敗れてございます」
「まさか? あの辰之助だぞ。この桃太郎の剣術指南役である男が敗れたと言うのか?」
桃太郎が余りに信じられないと言った顔で物見を睨む。
「は、はい。
私も仲間と一緒に確認いたしました。
真北 辰之助様と鬼頭と言う男の話しを少し聞いておりましたが、同じ流派のようでございます。
真北 辰之助様は鬼頭に対し、師に対するかのような態度で話しをしておりました」
「「同じ流派?」」
時東 鎌田薫 只信と桃太郎の声が合わさる。この2人に取っては同じ流派である事の方が余っ程驚いたようだ。
実際には全く違うのだが、物見達の報告が勘違いを起こさせたのは確かだ。
真北達は蝦夷の一族。蝦夷の土地を奪われ路頭に迷った所を時東 鎌田薫 只信が拾ったのだ、そしてその棟梁である真北 辰之助は物凄い剣術の達人。
時東 鎌田薫 只信の配下と対戦させたが誰一人として勝てる者がいない程の強者だった。
だが、真北達は拾ってくれた事に物凄い恩義を感じ時東 鎌田薫 只信に対し忠誠を誓い、様々な汚れ仕事をこなすようになった。
それもあり、真北 辰之助を桃太郎の剣術指南役に抜擢。桃太郎は実田の国を超えて京にまで名前を届かせる程の実力者となったのだ。
「続きを頼む」
時東 鎌田薫 只信が物見に対し指示を出す。
「ハイ、真北 辰之助様が負けた後、1人の親方が真北 辰之助様の遺体を真北 ヒマリ様の所に連れ来られました。
そして負けた経緯等をヒマリ様に説明した所、ヒマリ様がご自身で鬼頭 将との対戦を望みました」
その話しを聞いた桃太郎があきれた顔をする。この真北 ヒマリはそう言う所が有る、義理堅く何よりも親である真北 辰之助を本当に尊敬していた。だから、自らの力で敵を討とうと思ったのだろう。
「その後にございます。
真北 ヒマリ様があの鬼頭を捕まえ、鬼共の頭、鬼がしらだと鬼頭を挑発。
その後、カマリ達との対戦が始まりました。実際に真北 辰之助様との対戦の時は鬼頭も穏やかな顔でしたが、ヒマリ様の鬼がしらの言葉の後はキツイ顔付きとなり、カマリの親方5名を含むカマリをあっという間に倒してしまいました」
「ほう。あの鬼頭が鬼がしらと言う言葉で感情的になったか?」
「はっ、ハイ。
我々物見の中でも何時も鬼頭 将を監視し続けている者が、かなり驚いておりましたので間違い無いと思います」
時東 鎌田薫 只信が分からないと言う顔で桃太郎を見る。
「桃太郎、それがどうしたと言うのだ?」
「父上、鬼頭はいつ如何なる時も冷静沈着で笑う時ですら腹から笑ってはおりません。
それがヒマリの言葉で怒を見せた。
つまり鬼がしらと言う言葉に何かしらの心に響く事があると言うことです。奴も人の子だと言う事です、そこに隙が生まれます。
つまり攻める手立てがあると言う事です」
「わかった、今は如何なる情報でも些細な情報でも欲しい時だ。
奴を打つに当たり何でも良い、情報を上げろ」
「かしこまりました」
桃太郎が嬉しそうにそう返事をする。
それから物見の方向が続く。
崖の上から戻った鬼頭こと鬼がしらは村の出入り口に来る。
そこを守っていた三羽烏の1人、伝次郎と猟師の親方 又兵衛が守る場所に現れる。
「して、村の入口は誰が行った?」
時東 鎌田薫 只信が顎髭を触りながら聞く。
「ハイ、カマリの副棟梁 立花 狂歌様っ」
「ほう!! あの狂犬がではったか。フハハハハ。
あの鬼がしらと言えど立花 狂歌は手を焼く存在だろうな。他は誰が行った?」
「ハイ、真北 辰之助様のご子息、真北 雄心様が馬兵を連なって参戦しております」
「何、あの馬兵を動かしたのか?」
その事を一番驚いたのは桃太郎だった。実田国や京の都では馬は物凄く貴重、見栄えの良い馬等は帝に献上される程のに貴重なのだ。
おまけに野生の馬を躾、背中に乗る等余程の能力がないと出来ないものだと考えられいる。そんな馬兵を動かす、一国と戦争でもするかのような状態だ。
カマリの一族が鬼頭こと、鬼がしらをそこまで評価している事に驚きを持ってしまったのだ。




