37.
立花 狂歌と対峙する。
立花の刀が突然飛んでくる、動きに癖がなく、いつ動くか分かり難い動きをする。どれ程の時間をかけて刀を振ってきたのか、思わず感心してしまった程だ。
無駄を徹底的に無くし、相手を仕留める為だけに特化した技術、才能だけではこうはならないだろう。そう思わされる程に洗練されている。
「聞いても良いか?」
突然立花が俺に話しかけてくる。
「真北 辰之助は勇敢だったか?」
「ああ、勇敢でいい男だった」
「そうか。
あいつは棟梁には向かない、優しい奴だった。家族を大事にして、仲間を大事にする奴だ。
今の世には勿体無い男だ」
まだ、何かをいいたそうな雰囲気があったが構わず攻める事にした。
距離を詰め、上段から振り下ろすが立花がそれを軽くかわし中段突きを放つ。
「俺は真北のような甘ちゃんじゃない」
そう言うと足元の石を蹴り上げ俺の顔に石をぶつける。
飛んできた石を額で受け止めると、構わずに右上段からの振り下ろし帰す刀で下段からの切り返しを行う。
立花は、俺の上段からの攻撃をかわす事が出来たが下段からの振り上げは予想外だったようだ、俺の攻撃が途切れると踏んだ立花が攻めに回る、そのタイミングで下段からの切り返しが立花を襲う。立花は両腕を切り取られ上に腹に大きな傷を作り倒れてしまう。
「ホリ、いまぁ~行くぞ」
そう言葉を残すと事切れてしまう。
カマリ達が全て倒されると辺から人の気配が完全に消える。カマリ達の動きを見ていた者達も何処かに消えて行った。
「将、戻ろうか。後始末はじいさま達がかって出てくれた」
「そうだぞ、将。今日は休め」
伝次郎と又兵衛が俺を心配して声をかけてくる。
「わかった、中に入ろうか。
又兵衛、じいさま達もか足元には十分気を付けてな」
「まかせておけ、しかしこれ程の効果があるとは思っても見なかった。
将は軍師だな、撒菱と言い先だっての海での戦いと良い。将がいれば負ける気がしない」
「たまたまだ。毎回上手く行くことなんて無い、今の勝利に浮かれていると足元をすくわれるぞ」
「将、お前さんは歳はいくつだ? お前と話していると儂らと変わらん歳の奴と話している気になってしまう」
又兵衛にそう言われてしまう。
「将、この逆茂木何だが、枝じゃなくて幹を切り先を尖らせても問題無いものか?」
何故か伝次郎に突然とそう聞かれた。
「本来は尖った幹を使い、馬の侵入や荷車の侵入を抑える為の物で、今あるこの逆茂木は簡易的に村に入り難くする為の措置だ。
尖った幹を使うと重さも出る、そう簡単には突破される事も無い」
「そうか、なら俺の考えに間違い無いな。幹を尖らせた逆茂木を舟に取り付けようと思う、間もなく俺達の漁船も交換しないと行けない。古くなった漁船に幹を尖らせた逆茂木を取り付け敵の舟に直接ぶつける、それだけでだいぶ違う結果になるだろう」
その話しを聞いた又兵衛が伝次郎に声をかける。
「デン、それなら俺達が協力する。ここの入口用と合わせて準備しようじゃないか」
「ハイ、お願いします」
やはり伝次郎は頭が良い。様々な事を直に取り入れ戦略を立てる、これ程の逸材はそう出て来ないだろうな。
本当に惜しい気がする。
「けど良いのか? 逆茂木を取り付けて相手の舟にぶつかると、そのぶつけた舟は使い物にならないだろう」
「心配無い。予備の舟ならすでに30隻はある、舟大工達の練習ように沢山作らせてあるから問題無い。
本当は逃げ出す時用の予備だが、問題無いだろう」
この村に舟大工がいたのか。そっちの方が驚く、けど又兵衛は窯元だし漁師達が舟大工を兼ねてるのかも知れないな。
伝次郎と共に村の中に入ると、丁度海での戦いを終えた忠勝のおっちゃんと又佐、幸太郎達も帰って来ていた。
3人の顔はかなり渋い顔をしていた。どうも近隣の村々から漁師達が集められてここに攻めて来ていたようで、多くの近隣の漁師が亡くなったようだ。
前回の俺の石攻撃を恐れ、実田の兵士達はほとんどいなく、海賊崩れや近隣の漁師達がほとんどだったらしい。
忠勝のおっちゃんとしては、近隣の漁師達は仲間みたいなものだ。そんな仲間との対戦に悶々とした気持ちになってしまったようだ。
「将、近隣の村にいるわしらの仲間を助ける事は出来るか?」
「忠勝のおっちゃんの仲間? それは普通に漁師仲間か?」
「それもいる、だが多くは我らのような渡来人の一族と結婚した者達だ。
どうらや実田の役人達に家族を人質に取られているらしくて。それが悔しくて仕方ない」
「出来ない事は無いだろう。でも、助け出した後はどうする? 何処に帰って何処で暮らすんだ、当てはあるのか?」
「い、いや」
忠勝のおっちゃんが悔しそうに下を向く。
「悪いが俺は何でも出来る訳じゃない、俺が守れるのはこの両腕に収まる者だけだ。
だからハルナと夢の安全は約束する、だがそれ以上となると約束はできかねる」
「わかった。悪かった」
忠勝のおっちゃんが落ち込んたまま家を出て行った。
気持ちは分からなくは無いが、出来る事と出来ない事がある。
ましてこれから俺達は実田の国と京のお上達と戦争をする予定だ、そんな俺達が助けに入ったとなればその人達以外にも村全体が疑われる事になりかねない。




