36.
伝次郎が勝てない奴には俺も負けると言った発言でみんな笑い出す。
少しみんなの緊張感が解けたようだ。
「確かに、伝次郎に勝てるのは将以外にいないな」
「あははは。私らそんな事も忘れる位に緊張してたんだね」
夢と愛がそう言って笑い出す。
「ハルナ、心配しなくてもいい。俺は死なない」
「うん」
ハルナが頷くと抱き着いて来る。
本当に心配していたのだろう、体が震えていた。
そんなハルナを優しく抱き締める。すると少し落ち着いたのか恥ずかしそうに離れた。
「夢」
「うん? 何だ」
ハルナが離れた事も合って夢を優しく抱き締める。
「ま、マサル!?」
「悪かったな、心配かけて。でも俺は大丈夫だから」
「うん」
夢が俺に体を預ける。
「じゃあ、伝次郎を見に行く。又兵衛も残っているんだろう」
「ああ、頼む」
愛にそう伝えて村の入口に向かう。
又兵衛が村の老人達を集め入口の上の山からカマリ達を狙い弓を構えていた。
又兵衛を始めとして猟師を長年務めていた者達だけ合って弓矢の扱いに上手く、動くものを的確に捉えるその能力は凄まじかった。
伝次郎は逆茂木の途中に陣取り、入ろうとするカマリ達を止めている。
そして上からの矢の攻撃にカマリを始め山賊達がかなり殺られていたようだ、撤退するか攻めるかを考えている。
「俺はカマリの棟梁 真北 辰之助を討ち取った男だ。
カマリの姫からは鬼がしらと呼ばれた、俺はこの鬼の島の大将である。死にたい奴から名乗りを上げろ」
俺が増援として来た事もあり山賊達が逃げようとするが、後を固めるカマリによって阻止される。
「伝次郎、俺が前に出る」
「わかったよ。
お前の言葉には逆らう事が出来ない力が有るな」
伝次郎が笑いながら右手を上げる、それに合わせ又兵衛達が一斉に矢を放つ。
手前側にいた山賊達がバタバタと倒れて行く。
そんな中、逆茂木の上空を蹴るように飛び出す俺を見てカマリ達が騒然とする。
「棟梁を討ち取った奴だ!」
「妖術使いが来たぞ」
「敵を打て」
怒号が飛び出し、殺気が一層強まって俺と対峙する。カマリの棟梁、真北 辰之助を討ち取ったのはすでに伝わっているみたいだ。
するとカマリ達がいる西側とは反対の東側から馬に乗った集団が来る。
ガキン!
馬上から刀を振り俺を狙う。
「俺は真北 辰之助の息子。雄心、鬼頭 将に対戦を申し込む」
「その申し出受けて立つ」
「貴様かぁ~!!」
馬に跨り、クラも鐙も無いのに馬を手足のように操るその能力に驚きを覚えつつ雄心に警戒する。
馬は今の馬と違い一回り小さく、動きも遅い。だが機動力としてはかなりのものだ、そしてこの雄心と言う男は体が太い。
恐らく相当な力の持ち主なのだろうな。だが、残念だが伝次郎達と比べると小さく感じてしまう。
「又兵衛、袋を」
「ああ」
又兵衛から撒菱の入った袋をもらい腰に付ける。
「又兵衛、悪いが下がっててもらえるか?」
「構わないが良いのか? この若者は相当だぞ」
「心配無い」
「ふっ。お前さんが言うと、本当にそうなると思わされてしまうな」
又兵衛がそう言うと伝次郎のいる所まで下がって行く。
「準備は出来たか?」
「何だ? 俺は何時でも準備出来てるぞ。お前達も余裕が有るな、対峙してるんだ油断してると思えば攻めてくればいい」
雄心が馬の腹を蹴る、馬が俺に向かい突進して来る。そこに合わせスキル威嚇を放つ。
馬が恐怖でいななき雄心を背中から落とす、そこに鬼がしらを振り抜く。
ガキン!!
「来るな!!」
雄心が地面に這いつくばり俺の刀を受け止めながら、仲間を止める。
「何だ、別に仲間を呼んでも良かったんだぞ。お前達が揃った所で片手で事足りる」
「貴様が言うと本当にそうなのだと思わされるな」
雄心が下から俺を睨み付ける。
そんな雄心から離れて起き上がるを待つ。カマリ達が俺の行動に怒りを覚えたようだが、動こうとするのを1人の男が止める。
「親方、このままでは若様まで」
「馬鹿野郎!! 若様がやると言ったんだ。若様の顔に泥を塗るんじゃねぇ!」
親方と呼ばれた男の一喝で、全てのカマリが止まる。この男はカマリ達をまとめるのが役割なのだろう。
この男も真北 辰之助も異世界で出会った魔人国のルッシュも、出会い方が違えは本当は仲良く慣れただろうな。
それだけ残念だ。本当にそう思えるだけに残念で仕方ない。
「おい、鬼共の王よ。鬼がしらよ、貴様何処を見ている? 貴様の相手はこの雄心で有るぞ」
雄心が落ち着きを持って対峙していた。
「残念だ。
ここからは俺も本気を出す、目を閉ざすなよ」
そう言ってカマリをまとめる男に指を指す。
雄心がその行動を油断と捉えたようで距離を詰める、そこに合わせ縮地を使い雄心よりも先に斬りかかる。
ザッパァ−!
雄心の体が左肩から股にかけて綺麗に半分に別れる、本人は何が起きたか分からない状態で倒れてしまったようだ。
「さて、最後だ。お前達はまとめてかかってこい」
「棟梁と若の敵討ちだ、名乗り等要らぬ、あの鬼共のかしらを討ち取れぇ−!」
「「「「「「「「おおー」」」」」」」」
馬に乗った集団が狭い通りを器用に駆けて俺を通りの真ん中に押し留める。
そこに撒菱を撒き散らす。
バリン!! ヒヒーン!! ブルル!
「おい、馬が言う事をきかぬぞ」
「グアー」
「落ち着けぇー、落ち着けー」
又兵衛に焼いてもらった素焼きの撒菱を踏んだ馬の足が傷付き、血を流し、びっこを引くようにして馬達がウロウロとする。そして上に乗る者を容赦無く振り落としていた。
この時代の馬は蹄鉄と言う物は付いていない。もっと時代が上がると馬に草鞋を付ける等と馬の足に気を使うが、この時代にはまだ無い。
それが功を奏したようだ。馬の体重の重さに焼き物の撒菱が砕けてしまい、より深く足に傷を付ける事が出来たみたいだ。
「ドラコンショット」
鬼がしらを横薙ぎになぐと金色の光の線がカマリと馬を捉える。
その一閃でほとんどのカマリと馬を一斉に倒す。
そして最期に残ったのはあの親方と呼ばれたカマリだ、馬を降りると刀を抜き横に倒し構える。
「私は、真北 辰之助の腹心を務める立花 狂歌(タチバナ キョウカ)。押して参る」
「鬼頭 将だ。真北 辰之助を始め、雄心、立花 狂歌と出会えた事に感謝する」




