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鬼ケ島伝説 鬼がしらと呼ばれた男  作者: 武田 健太郎


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34/54

34.

真北が俺を見て動きを止めた。

「鬼頭殿は何処でこの“柳”を覚えられた? それもここまで完璧な“柳”は私も初めてだ」

「“柳”と言うのは受け流しの事か?」

真北の言った“柳”を確認する。なんかここで間違っていたら少し恥ずかしい気がして来てしまった。


「受け流しと貴方達は仰るのですね。


“柳”は我が剣術の師匠、蝦夷のアマルイと言う棟梁から教わったております。


鬼頭殿は私の親類(いとこ弟子)に当る方なのかも知れませんね」


「あまり考えない方が良い、それと俺は全く違う。これは遠い国の英雄から教わったものだ」


「そうでしか、この“柳”は海を越えて伝わった技術と聞いております。

なれば鬼頭殿の方が源流、私もタスキを締め直す必要がありますね」


真北の構えが変わる、腰を落し刀を中段に構える。

すると配下達も静かになる、自分達の棟梁の動きが変わった事に気付いたようだ。


「真北、良い配下を持ったな」

「ハイ。ありがとうございます」


真北が感激した顔になる。

何故か俺と真北の会話が師匠と弟子の会話のようになっている事に気がつく。


次で決まる、そう直感した。


腰を下ろし下段に鬼がしらを下げ、真北との距離を少しづつつめる。


俺の動きに合わせ真北がジリジリと後に下がる、だが山の中だ。そこまで平坦な場所は広く無い。


真北が後に下がれない事が分かると目を閉じた。

この真北と言う男は物凄い人物だ、そう思う。出会い方が違えば仲良く慣れたはずだ。


本当に敵味方関係無く、素晴らしい奴は素晴らしい。本気でそう思う。

異世界でも魔人族の騎士で一人仲良くなった奴がいた、真北はそいつに良くにている。


魔人族の名前はルッシュ ダント。

魔人王に憧れ騎士隊に入隊。数々の戦績を上げた男だ、ルッシュは本物の騎士だ。

決して倒した村や町、国から物を奪わず横暴な態度を取ることも無かった。そして戦えば魔人王からも一本取る程の実力者と言われた男だ。


たまたま、森の中で迷子になった俺と同じように迷子になったルッシュが一ヶ月程、共同で魔獣や魔物達を倒し近くの村まで逃げ延びた事があった。


その時にルッシュと意気投合した。

たが、互いに名前を名乗ったりはしなかった。何のなく、名前を名乗ると戦かわないと行けないのが分かったからだ。


そんなルッシュとは魔人王の国で最初に対戦する事になった。

俺達が魔人国を次々と撃破し、魔人国の王を追い詰め最終決戦となった時、ルッシュと対戦した。


この真北の顔がルッシュと重なる。


真北の上段への突きをかわし鬼がしらを真北の腹に深々と刺すと、鬼がしらが背中から飛び出す。


「最後までルッシュと一緒か」

「えっ?」


真北が最期の力を振り絞り刀を持ち上げようとした時、真北の体から鬼がしらを一気に引き抜く。


真北が膝から落ちて後に倒れる。


「決闘の流儀だ」


そう言うと真北にとどめを刺す。


カマリの1人の男が俺に対し膝を付いて頭を下げる。

「最期を見て頂き感謝いたします。

我らが棟梁はこちらで始末したいと思います。ご容赦いだきたく思います」


「かまわない。だが、お前達を見逃すつもりは無い」

「ハイ、一時程お待ち下さい。

戻って参ります」


そう言うと、他のカマリ達がその場に座り始める。

「我らが残ります」


そこまでされると信用するしか無い気がする。まぁ、戻って来なくても仕方ないけどね。


カマリの1人が真北を抱えると山を降りて行く、それを見て地面に座ると1人の男が俺の側に来て座る。


「我らの望みを聞いて下さり有難うございます。

間もなく、私どもの全ての勢力がここに集結いたします。ですが私どもでは鬼頭殿には勝てないでしょう」

「勝てないのを承知で俺に挑むのか?」


「我ら一族は時東様に拾われた一族。同じ蝦夷の一族に討ち滅ぼされるなら本望と言うものです」


「同じ? そうか、どうも桃太郎達は違う感じを受けるはずだ。

愚直に真っ直ぐな奴が多いと思ったよ、真北も出会い方が違えば仲良く慣れた気がして少し残念だ」


「有難うございます。そのようにおっしゃって頂ければ我らとしても本望です。しかし鬼頭殿は都言葉の他にも良く我らの言葉を知ってらっしゃる。


我らの言葉は一括りに蝦夷言葉と言われて都人には通じません。何やら懐かしい気すら覚えます」


「そうか」

思わずドキッとした。スキル言語理解がずっと発動しているから普通に話しているけど、京言葉に蝦夷言葉か。


本当に便利なスキルだ。しかしこいつらいつ言葉を変えたんだ?


すると、本当に1時間程で出ていったカマリが戻って来た。


そこには、俺と年の変わらない男が一緒にいた。

「遅くなった。俺は真北 辰之助の愚息で幸政と言う、これより父上の敵討ちをさせてもらう。


敵討ちの流儀は基本的に一対一だ、だが、そのような流儀は私は知らない。我らカマリの一族全てでお相手致す」


「了解した。俺は鬼頭 将、おして参る」


「ふ、鬼頭と言ったか。そなたは、鬼どもの棟梁であろう。ならば鬼がしらで十分、成敗してくれる」


その声で気が付いた、こいつは女だ。

男と同じ格好と髪型だが間違い無い。


だが、関係無い。男だろうが女だろうが子供だろうが老人だろうが決闘の流儀として全力で全てを刈り取る。



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