32.
メルダリア達が赤龍と会うために頭を悩ませている中で俺とハルナ、夢は祭壇のような場所の真ん中に通されて、座らされると愛の祈祷が始まる。それに合わせるかのように、いがみ合い化かしあいをしていた2人の近隣の村の棟梁達も急に大人しくなる。
祈祷が終わると愛が俺達3人の前に来る。
「将、ハルナ、夢。これより3人を夫婦として認め永遠に共に歩む事を許可する。月読み様からも3人に祝福の言葉が届いている。皆幸せになれるよ」
「月読み様からの祝福の言葉!!」
「おい、三条の女将。お前とこの源田以来じゃねぇか、月読み様からの祝福の言葉なんて」
「ああ、間違いねぇ。なんてめでたい時に呼ばれたんだ、私は感無量だよ」
「おお、こうしちゃおれねぇ。菅生の棟梁、悪いが俺達は一旦戻る。
また、明後日来るからよろしくな」
「あたしもだよ」
「ハイ。お二人のお気持ち確かに受け取りました、では明後日お二人をお待ちしております」
「ああ」「どいてどいて、こうしちゃおれないよ。将だったね、あんた良い男だ」
何が起きたか分からないが嵐のように2人の棟梁がドタバタと菅生の棟梁の屋敷を出て行く。
「なぁ、愛。祝福の言葉って何の事だ?」
「月読様が将とハルナ、夢の結婚を正式に認めてくださり、幸せになる事を保証してくださったのだ。
この月読様の祝福の言葉は滅多に無い。私も記憶している限り月読の神職が世に出てから片手で足りる位しか無い出来事だ。
それに立ち会ったのだ、高砂村の棟梁も湯面村の女将(棟梁)も大興奮だろ」
「そんな珍しい事なのか?」
「そうだな、月読様がお認めになった夫婦は、永遠の時を超えて幸せを得ると言われている。
それだけ珍しい事だ」
そうか、でも俺が元の世界に戻る事は必然で有るわけだ、なら何故今その祝福があったんだ?
やっぱり、俺には理解出来ない。
「将、難しくとらえるな。
人の生き方にこれと言った決まりはない、自分の思いがそのまま自分の向く方向になる。そして自分が発した言葉がそのままお前を作る。
だからお前が望む事を言葉にしろ」
「そうか、俺はハルナと夢が幸せであればそれで良い。俺もどれだけ出来るか分からないが出来る事はさせてもらう」
その2日後、高砂村の棟梁と湯面村の女将を筆頭に別の3つの村からも祝福と祝いの言葉、祝いの品が届けられた。そしてたった2日で、月読み様の祝福の言葉が5-60年ぶりに出たと実田の国とその近辺の国々に広がったのだ。
この話しを聞いて慌てたのが時東の一族だ。月読み様の祝福の言葉を得た夫婦がいる、しかも自分達が潰そうとしてる鬼の島から出た。
それがあの鬼頭 将、ハルナ、夢の3人と聞かされた時は桃太郎の曽祖父に当る時東 太助 小三郎が腰を抜かした程だ。
自分達の戦略をことごとく潰していく鬼頭 将を速やかに消さないと行けない。
そして、この結婚の話しが京に伝わった時、カマリの一族による鬼の島の討伐が正式に決定された。
時東一族が知らない所で鬼の島が潰れた、それが時東一族にとって最も理想的な最後なのだ。カマリは時東一族の子飼いの者達だ、それに合わせ今回は山賊や海賊等も多く向かわせる。
山賊や海賊が潰してしまった。そしたらその後始末を行えば良い、やらかしてくれた山賊や海賊を時東一族が倒して終わりだ。そう考えていた。
その頃、俺達を囲み村の人達や高砂村や湯面村を始め複数の村の代表者達が集まりお祝いの宴が執り行われていた。
以外にも大蔵村と付き合いのある村が多い事に驚いていた。様々な特産物やら海の幸等が俺達の回りに集まっている、それを菅生の棟梁が各屋々に配布するなど多いに盛り上がった。
夜に家に帰る時にはハルナと夢は完全に酔い潰れていた、それをおんぶして二往復して家に行き2人を寝かせる。
俺達が与えられている屋敷は、部屋数が多く3人で一部屋づつ使っても未だ余る位に部屋が有る。
翌日には夢の家に行き夢の荷物運びだ。夢の荷物は基本が武器だった。
着物なんかが多いと思っていたが、ほとんど着物等はなく刀が3本、弓矢のセットが2セット、鎧一式に簡素な畑仕事用の農機具しかなかった。
「夢、茶碗とか箸なんかは何処だ?」
「うん、これだ」
そう言って夢が出したのは小さい箱に収まった箸と茶碗のセットとだ。
そこに3セット収まっている、大人用が2セット、子供用が1セット。
「両親とこの村に流れて来た時に唯一、私が持っていた物だ」
「夢はこの村の出身じゃないのか?」
「ああ、詳しくは知らないが蝦夷の近くの村で鬼武村と言う村があるらしい。両親はそこの出身だ、都の兵士達に攻められたらしくてなその時逃げてここの村に匿ってもらったらしい。
私は小さくて良く覚えていないんだ」
「そうか、すまなかった」
「気にするな。それよりも将の両親の事とか、色々と教えてもらえるか? 私もハルナと同じように将の事を色々知りたい」
「良いよ、ハルナも加えて話しをしようか」
「うん」
家に帰る時、夢が恥ずかしそうに手をつないできた。




