27.
忠勝のおっちゃんの家で簡単な話し合いが終わると村唯一の窯元に来る。
そこに猟師の棟梁の又兵衛が薪を持って来ていた。
「おや、又兵衛の親方。もうお仕事は終わり?」
「愛様。お久しぶりでござます、今日は特に猪等の被害も出ていないので、薪を集めた帰って来たところです」
そんな話しをしていると伝次郎が何かに気が付き、俺達の所を音もなく離れて行く。
「将、この間の逆茂木は良かったぞ。狩りにも応用が効いてな結構楽をさせてもらってる」
「そうか、それなら良かった」
「それで将と愛様が一緒に家に何の用です?」
「え? 窯元って又兵衛の家だったの?」
「何だ、将知らなかったのか?」
愛達が俺を不思議そうな顔で見る。でも、誰にも聞いた事が無い。
「なぁ又兵衛。将がな、お前さんに作ってもらいたい物が有るらしい」
「作ってもらいたい物?」
窯元になっている又兵衛の家に入り、木の板に炭を使い簡単に描き始める。
それは陶器で作った撒菱だ。
踏んで足の痛みで相手の動きを止める為の物だ。
この時代の人の足元は草鞋だ。多少の凸凹で痛いと言う奴は余りいない。だが先が尖った物や割れて刺さりやすくなっている物等は別だ。
結構、足に傷ができてそこからバイ菌が入り亡くなると言う事も多い。
この撒菱を焼き物にしたのは踏まれて割れたり、投げた時に割れて鋭く鋭利になる焼き物の特性を使ったもの、割れると更に足元に刺さりやすくなる為の物だ。
但し、争いが終わった後は綺麗に掃除しないと自分達の足がやられるけどね。
「それで、この撒菱を作れば良いんだな?」
「ああ、お願いしたい」
「かまわないがどうやって使うんだ?」
「足元に撒くのさ」
「「「「足元?」」」」
いつの間にか何処かに出かけていた伝次郎が又兵衛の家に入っていた。
「伝次郎戻ったか?」
「おお、将。お前の言った通りだった。3人捕まえて門馬の親方に引き渡した、今はユキとマタが付いてる」
「なら、心配無いな」
伝次郎が愛に向き合い頭を下げる。
「愛様、将の言った通り空き家に3名の男女を確認しております。
指令書と呼ばれる物を持ち歩いておりました。指示を出したのは、時東 太助 小三郎。先代の帝の懐刀と言われた人物です」
「あいわかった。伝次郎、又兵衛と共に村の見張りを強化して頂戴。
それと又兵衛、将が言ったこの撒菱なるのは何の位で出来上がる?」
「はい、早速取りかかかります。割れて問題無いのであれば1週間とかからずに出来上がると思います」
「分かりました、撒菱は又兵衛に任せます。私は門馬の親方の所に行きます。将、デン付いてきて頂戴」
「ああ」「ハイ」
俺達が忠勝のおっちゃんの家に付くと、庭先に正座して足にでかい石をのせられた男女がいた。
所謂拷問って奴だ。座ってる男女がかなり脂汗を流しながら耐えていた。
「門馬の親方。こいつらかい?」
「ハイ。愛様何か聞きたい事等お有りですか?」
「いや、私は無い」
そう言うと愛の動きがピタッと止まる、そこから数十秒程動かなくなった。
「将、この3人はお前さんに預ける。好きにして良いとそう月読みのお告げがあった」
愛の言葉にその場にいた者全てが動きを止める。それは捕まり拷問を受けている3人も同じように止まっていたのだ。
愛をこっそりと横に寄せて小声で聞く。「愛、悪い。月読みのお告げって何?」
「ぶっ はは」愛が腹を抱え笑い始める。
「笑わなくても良いだろう、俺は良く分からないんだから」
「ははは、悪い悪い。
月読みのお告げと言うのは、父の法明と私が行っているものだ。
所謂、神様のお告げだよ。こう言うのも何だが、結構当るんだぞ」
「良く分からない、分からないけどそうなんだな」
「そう、それで良い。将の妖術は私らには良く分からないけど、実際に将は使う事が出来る。
それと同じで、将には良く分からないかも知れないけど、私と父は使う事が出来る。分かりやすく言うとこれが私達の妖術だよ」
その後、この捕まった3人の両手、両足を縛り付け動け無い状態にする。
そしてこの3人を連れて崖下に移動する。その時は伝次郎、又佐、幸太郎の3人が其々に捕まえた3人を担いで連れてきてくれた。
「将、こいつらをどうするんだ?」
「うん? 決まっている逃がしてやるんだよ」
「「「はぁ!?」」」
伝次郎、又佐、幸太郎の3人が如何にも嫌そうな顔で俺を見る。
そして伝次郎が呆れた顔で話し出す。
「まぁ良い。愛様が将に任せるって言ったんだ、それで何処で離してやるんだ? まさか海の上で離すなんて言うなよ。
今時期の海は引き波って言って一気に沖に向かう潮の流れが有る。それに飲まれると俺達でも帰ってこれん位に引っ張られる。海には出れんぞ」
「心配するな、これからこの3人を連れて崖の上に行く、そこで帰してやるのさ」
伝次郎、又佐、幸太郎の3人がうんうんと頷いた後で固まる。
「「「はぁ!?」」」
「将、冗談は休み休み言え」
「本当だそ、こっから崖の上に放り投げるつもりか?」
「まさか、担いで登るつもりじゃ無いだろう?」
なんか、冗談に聞こえたみたいだ。捕まった男女3人も顔を下に向け笑いをこらえていた。




