22.
伝次郎の刀を止めつつ、反対の手で俺のオールを抑え俺達を動けないようにして、その場を制したのは夢だった。
「そこまでだ。これ以上の戦いは私が預かる」
この行動に驚きしか覚えなかった。しかしこの大蔵村は化け物しかいないのかね? 伝次郎、又佐、幸太郎は本物の鬼だ。オーガ以上の強さがある、正直に対戦した感じだと其々オーガロードと変わらない強さだ。
どうやったらただの人がここまで強くなる事が出来るのか? 俺には不思議で仕方ない。もし、現代にこの3人がいたら間違いなくオリンピックで優勝するとか、其々の競技で英雄扱いされる程の能力だ。
そして本当に恐ろしいのは夢だ、どうやればあんな対戦している2人の間に入り、俺と伝次郎を事何気に止める事が出来たんだ。
普通に考えて対戦中に割って入る事も難しいのに、更に俺と伝次郎をの攻撃を抑え更にあの場をたった1人で制した。それも俺と伝次郎は怪我一つしていない、それが一番信じられない。
つまり俺と伝次郎は夢に手加減されたと言う事だ。
本当の強者は夢なんだろうな、見た目は華奢な女の子なのに、夢は鬼神と変わらない実力者だ。夢はこの村の守り神なのかも知れない、正直に夢に勝てる奴がいたら見てみたい気がする。
そして大蔵村にいる月読みの神職だ、菅生 法明に娘の菅生 愛。
贔屓目じゃ無く、世界最強の村じゃ無いのかここ。
何でこんな村が負けるのか、何故負ける事を前提に様々な事を準備しているのか? 物凄く興味が湧いてきた。
桃太郎を筆頭に彼奴等はどれだけの戦力と戦略で攻めて来るのか、俺はそいつらにどれだけ抵抗出来るのか。
そして勝てるのか。
未知数の事ばかりだ。
“敵を確認しました。頭上、崖の上の3名。海、敵の船1隻。乗船2名を確認。
警告します、敵意を感じます”
頭の中に何時もの機械音が流れる。
崖を見ると誰かがいてこっちを見ているのを確認、海を見ても俺には分からなかったが、忠勝のおっちゃん達はすでに気が付いていたのか嫌そうな顔で海を見ている。
それに気が付いたのか、ハルナや愛が騒ぎ始める。
「ハルナ、鬼がしらをちょうだい」
「え? なに?」
ハルナが少しパニックになっているようで、慌てているだけで動けずにいる。
「鬼がしら、来い!」
鬼がしらがブンと震えるとハルナの手元から飛んで来る。
「「「え? 飛んだ!!」」」
愛、美雪、鷹の3人が目を丸くして固まる。
「美雪、妖術が見たかったんだろ。これから見せてやる、ちゃんと見てろよ」
「えっ、わかったぁ!」
俺の言葉に美雪が目を輝かせる。
鬼がしらを腰に付けると腰を落とし柄を掴み、鬼がしらに魔力を込める。
「ドラコンショット」
居合のように抜刀。刃から光の刃が飛び崖の上にいる人に当たり人が倒れる。
ドラコンショットはいわゆるスラッシュだ。たが鬼がしらは元々ドラコンの素材を使った刀であり、元々のドラコンとしての能力や魔力を持った刀だ。
スラッシュでありながら鬼がしらが放つのは、スラッシュにドラコンの魔力が加わって放たられる。
崖の上でこっちを覗き込む1人に当たり後ろに倒れたのを確認。その後、崖の上から完全に気配が消える。
「すっ、す、すっごぉ~」
美雪の顔がキラキラとしている。
「将、何だあの技は? あれがいわゆる妖術なのか?」
気が付いたら愛が俺の横に来ていた。ハルナや忠勝のおっちゃんは言葉を無くしているし、何より伝次郎と又佐の二人が腰を抜かしてへたり込んでいた。
「愛、弓矢は有るか?」
「ああ、有るよ。夢が持ってる、それが何か有るのか?」
「お前にも体験させてやるよ」
「へ?」
戸惑う愛に弓矢を持たせて構えさせる。
「将、どう考えたってここから弓矢を放っても海の上に落ちるだけだぞ。そもそも矢の飛ぶ距離を考えろ」
「心配するな、俺を信じて構えろ」
愛が仕方ないと言った顔で弓矢を構える。そこに合わせ風魔法を発動、矢に風魔法をエンチャント。目標に向い真っ直ぐ飛ぶのと、飛行距離を飛躍的に上げるのが目的だ、そして風魔法を使い風の流れを調整する。それから愛に補助魔法をかける。目視強化、集中力強化をかける。
この二つの補助魔法は唯一俺が使える補助魔法だ。
「愛、準備出来たぞ」
「なあ、将。この感覚は何だ? 船の上に入る人まで見えるぞ」
「まぁ、気にするな。それより放ってみろ、お前達が言う妖術を実感出来るぞ」
「わかった」
愛の集中力が一気に高まる。
回りで見ている人達が大人しくなると、愛の呼吸する音が聞こえてくる。
「ふっ」
愛が呼吸を強く早く区切ったように思えた、その瞬間に矢が放たれる。地上と平行に放たれた矢は、地面に落ちる事無く真っ直ぐに進み、海の上に停泊している船で我々を観察している者を正確に捉える。
「す、すごい!」
「ありえない!」
皆口々に驚きをこぼしていたが、そんな中で美雪が俺を見て目を輝かせていた。
「まさるにぃっ、まさる兄ちゃん凄い! ねぇ、どうやるの私も出来るようになる? 凄い、見た事無いよ。すご過ぎだよ」
矢を放った愛が一番信じられないと言った顔で動けにいる。
「何であの距離に届く?」
そう言うとポカンとしてしばらく動けなくなっていた。
俺達のいる場所から、ゆうに300mは離れた場所の人を正確に捕らえた事に愛自身が驚きを覚えたようだ。
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