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鬼ケ島伝説 鬼がしらと呼ばれた男  作者: 武田 健太郎


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21/55

21.

この大蔵村の三羽烏こと又佐、幸太郎、伝次郎は其々に得意な事が違う。

其々、見た目は角の無いオーガそのものだ。


だが、又佐は俊敏性が高く槍、投擲等が得意な奴で、斥候のような事もこなす軽業師でもある。


幸太郎はそのパワーが凄い。又佐や伝次郎に比べると足が遅い、たが他の2人が持てない物を軽々と持ち上げたりする、大蔵村一番の力自慢。

なんせ素手で大人の熊や野良の牛を倒してしまう程の超肉体派だ。


伝次郎は凄く器用なタイプで、身体能力も高い。マルチプレイヤータイプだ。

武器も刀、槍、弓矢も名人級だ。


特に得意なのが船の操縦術だろう、門馬のおっちゃんよりも上手いと評判だ。こんな時代じゃ無ければどれだけ凄い漁師となったか、そこは少し残念だ。次の漁師の親方の予定だ。


「将、考え事か?」

忠勝のおっちゃんが俺を見る。


「気にしないでくれ。俺は何時でも準備が出来ている」


その時、幸太郎がいきなり攻めて来た。門馬のおっちゃんが驚いて後ろに下る、幸太郎の強烈な両手付きが来る。


ダゴン!! 激しい音と共にそこから力一杯に幸太郎の張りが手更にが飛んできた。


バン! バチン! ダン!

幸太郎の張り手は本当に強烈だ。

これ、俺じゃ無ければ死んでるレベルだよ。

実際に両手突きと張り手で、翌日にも体に痣が残った程だ。どんだけ強いんだよこいつら。


でも幸太郎の力は分かった、身体強化を使う程じゃ無い。で、張り手を受け手でかわし幸太郎の腰紐を掴むと横投げにする。


流石に体幹も強く、俺の投げに耐えていたがそこから更に体を捻るように押し出すと、その大きな体がゴロンと倒れた。


「ヤッター。将凄いぞ」

ハルナが俺に抱きついてくる。


「驚いた、ユキに相撲で勝てる奴なんてこの世に存在しないと思ってた」

そう言って、楽しそうに俺の服のシワを伸ばす。


「将、少し良いか?」

脇で見ていた夢が突然声をかけてきた。


「ここまで見てよく分かった。将を相手にするのに1人では勝ち目がない、そこでだ、私がデンの仲間になって対策を講じたい。かまわないか?」


「えっ? 夢、それは」「良いぞ」


「有難う」「ま、将?」

夢が伝次郎達の所に行き何やら話しを始め、ハルナが俺の横で不機嫌そうな顔をしている。


「将、何で許したの? 夢は戦略も練る事が出来るくらいに戦い方を勉強してるし、相手はデンだよ。

デンはマタやユキなんかと比べ物にならない位の策略家なんだぞ」


ハルナがそう言って納得行かないと文句を言っていた。


すると伝次郎の所に又佐と幸太郎が揃い何やら話しを始める。


「ハルナ、ここからは私もハルナと一緒に見る事にする」

菅生 愛が何故かハルナを引っ張って行く、そして何かをハルナに言う。ハルナが少し驚いた顔をしていたが何やら楽しそうにしていた。


伝次郎が俺の前に来る。

「将、正直に言う。マタとユキをこうもあっさりと倒すとは思っても見なかった。


おまけに、あの2人が本気を出した」


「本気?」


「ああ、俺達3人は強くなり過ぎた。俺達3人を見た他の村の奴等は俺達を鬼の子孫だと本気で思っている」


確かにな、だって見た目角の無いオーガだし、何よあの強さ。あれが桃太郎達のような普通の人なら最初の一撃で皆死んでるよ。


「そこでだ、俺は相撲が余り得意じゃない。俺が得意なのはこれだ、これで決闘を申し込む」

伝次郎が出したそれは刀だ。


「かまわないが本当に良いのか?」


「良い、その代わり夢が立ち会う」


「なら、木刀は無いか? それでやろう。俺は愛刀の鬼がしら以外に刀を持つつもりが無い。


が、鬼がしらは余りに強すぎる」

そう言って腰にさした鬼がしらを抜くとハルナに持たせる。


「ハルナ、他の奴に持たせるなよ」

「え? あ、うん」


「そいつ、嫌いな奴が触ろうとすると暴れるからな」

「え?」


ハルナが鬼がしらを見て、少し震え出した。

「私持ってて問題無いの?」

「ああ、嫌がってないだろ。前に手を出した盗賊が一瞬で小間切れにされた事がある。


愛、手は出すなよ」


「え? だ、だめ?」

「今、この場で死にたければ良いぞ」


「分かった」

愛が納得行かないと言った顔をしていたが、無理やり触ろうとはしなくなった。


「将、木刀がどう言う物か分からないが、折れた(カイ)だ。こんな物しか無いがこれでもいいか?」


伝次郎が持ってきたのは折れたオールだ。長さは刀と変わらないサイズだ、それを持って軽く振る。結構手にしっくりと来る。


「ああ、これでいい」


伝次郎が刀を持って構え、俺が折れたオールを待って其々に構える。夢は少し離れた事ろでこっちを見ていた。


「俺は大蔵村の伝次郎だ。俺も初めて全力で行く」

「鬼頭 将だ。 受けて立つ」


チッ! ガン! ヒュンッ。

伝次郎は背が高い上に、リーチも長い。俺の攻撃が届くにはかなり踏み込まないと行けない。


互いの武器が当る事は有るが、互いに相手を制する程ではない。

伝次郎は刀術が凄く上手い、正直にこの時代の人達の中で一番なのではないだろうか。俺も技術で言ったら伝次郎に勝てる気がしない。


伝次郎の構えが上段から下段に変わる、軽く刀を後ろにさげ足幅が少し狭くなった。


伝次郎の構えを見て腰を深く落とす。敢えて隙を作り誘っているような、その猫系の獣のような狂暴な筋肉が俺を襲って来るような、何とも言えない気持ちになる。


伝次郎も腰を落とす。


俺と伝次郎が互いの距離を計る、次で決まる。俺はそう思った。


互いにジリジリと距離を詰める。すでに伝次郎の範囲に入ったはずだ、だが伝次郎が動かない。


勝負をかける。


ガチン!!!!



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