20.
「で、誰が最初だ?」
「俺だ!! ユキ、デン良いな」
幸太郎と伝次郎を睨むように又佐が見ると幸太郎と伝次郎も黙って頷く。
この3人は本当に仲がいい。普段、一緒にいても言葉は少なめだ、それでもお互いの気持ちは伝わるのだろう。
少し羨ましくも感じてしまう程だ。
さて、このオーガのような3人を相手にどうやって勝つか、そこが問題だ。
だが、これでもレベルはカンストしている。
いくらオーガよりも身体能力が高くてもレベルをカンストしている俺には勝てる訳が無い、取り敢えず怪我や殺したりしない様に注意しないといけない。
俺が異世界に召還されて2~3ヶ月位は王宮内での稽古やら、異世界の常識等の勉強がメインだった。
それから王女のメルダリア、精霊国のダリア、女神教会付きの聖女のミューモの3人に連れられ行った先がダンジョン都市 エルパニックだ。
ダンジョン エルパニックの名前をそのまま都市名につけた場所。
最初から中級者向けのダンジョンに入れらされたのだ。そこで地獄の猛特訓が始まった、剣を持ち素振りを始めたばかりの初心者を、ゴブリンの巣の中やオークの集団の前に放り出して「生きて帰れ」そう言って後ろから俺を威嚇し続けた。
モンスターに囲まれて好き放題にやられ、もう駄目だ、そう何度も思い死を覚悟した事も何度あったか。
そんな鬼の猛特訓の最中、死の恐怖から俺の中の勇者としての様々なスキルが発動して、何とか生き延びる事が出来たのだ。
そこからは魔人王との戦いに備えレベルアップの日々だった。
何で今、こんな話しをしてるかって。
単純だ、言いたかっただけだ(嘘)。
じゃなくて、幸太郎、伝次郎、又佐の3人よりも、もっと強くて恐ろしい強敵を相手に勝って来たんだ。
どれだけ手加減すれば良いのかが良く分からない、それが正直な所だ。
伊達にレベルがカンストしている訳じゃ無い、普通にしてても能力的に差があり過ぎるのだ。怪我をさせないように、殺さないように注意をしないと行けない。
かと言って手加減してるのがあからさまに分かると、また文句を言われるだろう。そんな風に考えて頭を抱えているのだ。
「どうした将? 今さら臆病風に吹かれたか?」
「あほ」
「あ、あほぅ? 貴様だけは許さん。死んでから後悔するなよ」
又佐が鬼のような顔で俺を見る、軽い挑発に乗せられ顔が真赤になっている。
行司を務める忠勝のおっちゃんの声が聞こえた気がする。それに合わせ又佐が突進して来た、突進と言うよりもタックルに近いと感じた。
又佐の持てる力全てを出して俺にぶつかる。
ドシン!! ザザッ!! 又佐のタックルが俺の腰に当る。そのまま少し後ろに押されるが又佐の動きが止まる、又佐が足を滑らせ何とか押し出そうとするが動かせずにいる。
「ぶっハァ。てめえは太い木の幹みたいな奴だな」
「そうか」
「フン、余裕を噛ませるのは今のうちだ」
又佐が俺の膝裏に手を添えると一気にて自分の方に引き込む。俺の体勢を崩して後ろに倒すつもりだ、だがその目論見は不発に終わる。
又佐がどんなに力を入れても俺の足は動く事が無かった、別に又佐が弱い訳じゃ無い。元々の能力差があり過ぎておれを倒す事が出来ずにいるだけだ。
それから5分、10分と又佐が俺を攻め続ける。
投げを打ったり、引き込んでみたり、突っ張ってみたりと様々な事を行うがダメージすら与える事が出来ずいる。
流石の又佐も息が上がって来た所で背中と腰の着物を押さえ上に体を持ち上げる。
「又佐。負けを認めるか?」
「くっ」
「そうか、一応怪我をしないようにと思っていたがその線まで放り投げるぞ、ちゃんと着地しろよ」
「まてまて、分かった。負けだ、負けを認める」
そう言われて仕方なく又佐を降ろす。その時の顔が凄く残念そうな顔だったのかも知れない、俺の顔をみたハルナが爆笑していた。
「将、そう残念がるな。それじゃマタが可愛そうだぞ」
そう言ってハルナが俺の背中をバシバシと叩く。
ハルナが幸太郎と伝次郎を見る。
「ユキ、デン。あんた達も将とやるのかい?」
「当然だ。やはり自分で確かめないと納得は行かない」
ハルナが少し呆れる。
「デンも一緒かい?」
「そうだな、他にも理由がある。どうやればこの男に土を付けれるか色々と試したいと思ってた所だ」
「将、次は俺だ。デン、先に行くぞ」
「兄ちゃん頑張れよ」
幸太郎の弟の鷹が興奮気味に応援している。
「将、このままやるかい? 少し休んでも良いんだよ」
ハルナが少し心配してきて俺に聞く。
「気にするな、この程度体を動かした内に入らない」
俺からハルナが離れると門馬のおっちゃんが来る。
「では次だ。幸太郎、将、負けても相手を恨む事は無しだ。これが終わったらまた一緒に戦う仲間になる、良いな」
「ああ」「ハイ」




