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鬼ケ島伝説 鬼がしらと呼ばれた男  作者: 武田 健太郎


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2.

グランバルト国王が立ち上がる。

「精霊族 ダリア マルセン。

またそなたの力を借りたい、キトーを元いた世界に帰す事は可能か?」


「ハイ、可能です。ですが今日は駄目です。


二つの月が重なり満月となるその日に行います」


グランバルト国王がダリアを見る。

「あい分かった。

一番、魔力が高まる時に合わせると言う事だな。その時に合わせエルフ国、精霊国の王も呼び皆で送りだそう」


「ハイ、ではそれまでの間キトーは例の場所に隔離をお願いします」


「あの場所か?」

「ハ~イ」

グランバルト国王とダリアが悪い顔で笑う。


この国の王宮の中に唯一誰一人として近付かない場所がある。王宮の建物の塔の天辺、こんな所に部屋があるのか? そう思う場所に俺専用の部屋がある。


元々は罪人を捕らえて置くための部屋だ、その為誰一人近づく者はいない。おまけに、その部屋に向うにあたり円形の塔の中をグルグルとした階段を登って、最上階まで行かないといけないのだ。


そんな誰も来ない場所を俺専用として王宮にいる時に使っているのだ。

部屋の広さは6畳程、そこにベットに椅子と机、洋服タンスを置いている。


一応窓もあり、窓から王都が一望出来る位に高い場所にある。


宰相を始め、お偉方から俺を隔離する目的でそんな場所に俺専用の部屋を設けている。

実際にこの部屋に来てからは様々な囲い込みは無くなった。

俺専用のメイドとして与えられた貴族の子女達も俺がこんな所に居るとは思ってもいないし、知らないのだ。


この部屋で満月の日になるまでの数日を過す。

そしてその日が来た。そう、ついに日本に戻る日がやって来たのだ。このグランバルトに召喚されて約4年が立つ、一応帰る時は時間軸を戻し召喚された日の午後に戻る予定だ。


おまけにこっちに来てからは、どう言う仕組みかは知らないが肉体の年齢は止まったままらしい。もともと元の世界に戻す予定だったと説明は受けたが、何故肉体年齢が止まったままかは誰も説明はしてくれなかった。


王宮のとある一室にグランバルト国王、エルフ国の国王、精霊国の国王等が集まる。


厳かに俺を元の世界に戻す召喚の儀式が始まると地面に魔法陣ができ、その回りを勇者のパーティーの仲間が囲む。


そして勇者のパーティーに付いて来たメイドやシスターのような人達が大外をぐるっと囲んでいる。


グランバルト国王がその場を仕切る。

「これより、勇者 キトーの送還を行う。

担当するのは精霊国の英雄 ダリア マルセンだ、ダリア マルセンよろしく頼む」


「ハイ」

厳かな雰囲気の中で送還の儀式が始まり回りを囲む人達の呼吸する音すら聞こえなくなる位に、静かな時間が流れる。



     ◇◇◇◇◇◇



そこは少し暗い、狭い部屋だった。


その中で粗末な椅子に座らされ強面な騎士から質問を受けていた女性がいた。

「貴女は何故キトーの送還の邪魔をしたのですか?」

「早く死刑にして下さい」

(女性が生気も無く答える)


「貴女は死ぬには早い歳です、これからいくらでもやり直しがいくでしょう。正直にお答え下さい。


我々もできる限りの援助はするつもりです」


そこにいたのは送還の儀式の時に俺を突き落とした伯爵令嬢だ。が、突然その静寂が打ち消された、捕まった令嬢が突如暴れだしたのだ。


ドン!! 突如女性が立ち上がり騒ぎ始めた。


「え?」

女性の向かいに座る騎士が驚き過ぎて変な声を出す。


「キトー!! お前だけは許さない、この私に恥をかかせやがってぇ」

「おい、その女を捕まえろ」


ドサッ!! 「貴様」「捕えろ!!」


「思い知れ、この私に恥をかかせた事を後悔しろ…。

あはははははっ あっはははははー」


複数の騎士達に捕えられたのは俺付きのメイドであり、裸で俺のベットに潜り込み俺を誘惑しようしたり、風呂に裸で勝手に入って来たりして不敬罪で捕らえられた伯爵令嬢だった。

俺を呼んだのは国王であって、その国王の賓客に当たる者に令嬢が行った行動は不敬罪に当たるのだとか。


そんな伯爵令嬢が俺の送還の儀式の時、送還の途中で俺を突き飛ばした。突き飛ばされた俺は不完全な送還の転送魔法陣の中に入ってしまう。


それは3カ国の国王が集まる中で起きた出来事だ。そしてこの状況に一番慌てたのが、ダリア マルセンだ。召喚するにしても送還するにしても、送り先の経度と緯度、高さ等と時間軸が合っていないと元の場所に戻れないのだ。

つまり、場所の位置が違ったら住んでいた所じゃなく海の上だったり、海外マフィアのアジトだったり、火山のマグマの中だったりする可能性があったりする。

時間軸が違えば現代に戻るのでなく、戦国時代や戦争の真っ只中の可能性だってある、だからとても重要な事なのだ。


ダリアは先に送還する位置を固定させていたが時間軸が定まっていない状態だったらしく、そんな状態で俺が送還の魔法陣の中に入れられてしまい俺が元の世界に戻って行ったのだ。


『キトー、聞こえる?』

『ダリアか、珍しいな念話なんて』


『そんな事より聞いて、時間が無い。

後2ヶ月待って、もう一度二つの月の満月が重なる時にキトーをこの国に呼び戻す。

それから貴方のいた所に戻すから』

『分かった。俺はダリアを信じている』


『ほっとぅ、この天然男』

『な・・か・った・・・らぁ』


精霊国の王がダリアの元に駆けつける。

「ダリア マルセン。どうなりましたか?」

「ハイ、場所はキトーがいた場所ではあります。


「そ、そうか」

(回りから安堵した声が漏れる)


ですが、時間軸が大きくずれた状態で転送した状態にあります。

2ヶ月後の満月が重なる時、再度キトーをこの国に呼び戻しそれから元の世界に送り届けないと行けません」


「「「なに!?」」」

グランバルト国王、エルフ国の国王、精霊国の国王の3人の声が揃う。


「それで、送還は確実に行えるか?」


「問題はありません。ですが送還に使う赤龍の宝玉、鳳凰の宝玉がありません。それを取りに行く必要があります」

グランバルト国王、エルフ国の国王、精霊国の国王の3人の顔が固まる。


赤龍と鳳凰はこの世界を作った神と言われる存在であり、けして手を出したらいけないと言われる存在。

下手に関わり逆鱗に触れるとこの世界自体が消滅すると言われる程の存在だ。


「父上、私が行きます」

声を上げたのは勇者パーティーの仲間。姫騎士 メルダリア ルッツ フォン グランバルトだ。

それを見たダリア マルセン、タテク バルト アンデルセン、ミューモ レイサンの3人が頷く。


「しかし、そなた達にあてでも有るのか?」

「キトーは赤龍様と鳳凰様とは非常に仲良くしておりました。

始めて出会った時にも、笑いながら飯を食い、酒を飲んで酔い潰れた程です。

キトーの一大事となれば彼らも協力してくれるはずです」


グランバルト国王、エルフ国の国王、精霊国の国王の3人が顔を見合わせる。それから数分後、意を決したようにエルフ国の国王が話し始める。


「メルダリア、ダリア、タテク、ミューモの4人に我等3人揃いお願いを申し上げる。

これから2ヶ月の間に赤龍の宝と鳳凰の宝玉を取り、キトーを元の世界に戻して下さい。

我等の世界を救った英雄を助けて上げて下さい」


「「「「ハイ!!」」」」


こうやって俺の日本への送還は大失敗したのである。


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