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「フ~。これでキト―ともお別れですね」
寂しそうに、そして、悲しそうにそう言い始めたのは俺をこの世界に召喚した国の第一王女。メルダリア ルッツ フォン グランバルトだ。
因みにメルダリアは姫騎士のスキルを持ち、剣聖に名前を連ねるグランバルト王国随一の剣の使い手であり国内最強を誇る騎士だ。
ここグランバルト王国は魔人族、獣人族、精霊族、エルフ族と其々に国境を接する人族の国。
遥か昔しから魔人族は、人族を目の敵にして幾度と無く戦争を繰り返して来た。そして魔人族の国に史上最強の王が誕生、その最強の魔人王が出た為に今までの拮抗が崩れ人族、精霊族、エルフの国が壊滅的なダメージを受けた。
そこでこの三つの国が共同で行ったのが禁忌魔法の勇者召喚。それで召喚されたのが勇者の資質を持つ俺だ。
人族の国、精霊族の国、エルフの国が共同で禁忌魔法を使い勇者を召喚、三国が世界最強の魔人族の王に対抗する為に手を取り合った形だ。
俺は鬼頭 将16才だ。
こっちの世界の人達はキトウと喋れずに皆キトーと俺を呼んでいる。
学校がなんかの記念日で休みの日に、1人でお台場海浜公園に遊びに来ていた時に突如異世界に召喚された、それから姫騎士のメルダリア直々に鬼のシゴキを受ける。
正直に何度も死を体験しその都度回復魔法で死の淵から何度も復活させられて、そんな目にあいながらも勇者としての資質が開花。世界最強と歌われたあの魔人族の王を討ち取る事が出来たのだ。
「本当ですね、キト―って召喚したばかりの時なんてゴブリンを見てビビってしまいお漏らししてたのに、今やこの世界で最強の勇者ですものね」
そう言い始めたのが魔法師で精霊族のダリア マルセン。
ダリアは精霊魔法の天才で4大魔法の使い手だ。火、水、風、土の精霊魔法を使い、魔人族が攻めてきた時に精霊族の王をたった1人で守り抜いたと言われる最強魔法少女だ。
精霊族は長寿でこのパーティー内では一番年長者なのだが、自らを天才魔法少女と言っている。因みに見た目が本当に15~6才に見えるのだ。
そして禁忌魔法を使い俺を召喚した本人でもある。
人族、精霊族、エルフ族の国が揃い魔人族との最終決戦に勝つ為に禁忌と言われた禁忌魔法を使ったのだ。
そしてこの世界の人々は俺達を勇者のパーティーと呼んでいいる。
仲間は、勇者 鬼頭 将(キトウ マサル)。
剣士 メルダリア ルッツ フォン グランバルト。
魔法師 精霊族のダリア マルセン。
タンク エルフ族のタテク バルト アンデルセン。
聖女 至上最高の聖魔法の使い手と言われ、グランバル王国唯一の聖女であるミューモ レイサン。
この5人でパーティーを組み、魔人族との長い戦いを乗り越えた俺の最高の仲間だ。
魔人族の国に侵略を受けた国を支援、全ての国から魔人族を追い出し、最終的に魔人族の国に乗り込み最強の魔人と言われる魔人族の王を倒し、今後他国に侵略しない事を確約させたのだ。
まあ、魔人族も最強の王が亡くなり、また国を立て直す必要もある状況で他国に攻める所では無いだろうけどね。
そんな思いにふけっているとメルダリアとダリアが何やらワイワイとやっている。
ダリアが俺の脇に来て腕にしがみつく。
「キトー、キトーはどうしても元の世界に戻るのか?
どうだろう、このまま私達の世界で暮らさないか? 今ならメルダリアと私がお前の妻になっても良いぞ」
「ぶっ!!」
ダリアは俺をニコニコとして上目遣いで見ている、それに対しメルダリアはモジモジとして何か恥ずかしそうにしている。
しかし無理だな。俺の母ちゃんはシングルマザーだ、俺を赤ん坊の頃からたった1人で育ててくれてた人だ。そんな人をこれからずっと独りぼっちにするわけにはいかない。
メルダリアがモジモジしているのを見て、聖女のミューモがメルダリアを押しながら近付いて来る。
「ねぇキトー。貴方年上の女性はどう思う?」
ミューモが突然聞いてきた。ミューモは現在25才だ、自分の事だろうか?
「嫌いじゃ無いよ、ミューモは特にいつも戦いの中で助けてくれましたな」
ミューモが凄く微妙な顔をする。
するとエルフ族のタテクが呆れた顔で俺達を見る。
「おい、感傷に浸るのは早いぞ!! 先ずは魔人族の国を抜けてエルフの国か精霊族の国に移動しないと、追ってが来てから慌てても意味がないだろう」
「「「は~い」」」
女性3人が不満そうにそう返事をする中、俺がタクテに「行くか」と声をかけてから先を進む。
その後無事にエルフの国に到着、国王に魔人族の王を討伐した事を説明。その際、国王から俺達全員に感謝の言葉と謝礼が贈られた。
因みにタクテは幼馴染でエルフの国の第一王女との結婚が決まった。
タクテは元々エルフの国の守護騎士であり幼馴染の王女に惚れていたのだ。ただ、あくまでも守護騎士の一人であり国王の娘と結婚とか恋愛等は出来る立場では無かった。
タテクと王女はお互いに好き合っていた。だが、叶わぬ恋と互いに諦めていたのだ。
所が、ひょんな事からタクテが勇者のパーティーに選出されて今回の大活躍となった。
それをもって2人の婚約と正式に結婚が認められた。その事はエルフの国だけに留まらず、精霊の国とグランバルト国にまでその声が届き、多くの人達から祝福の声がエルフの国に届いていた。
◇◇◇◇◇
場所はグランバルト国の謁見の間。
国王 ダンツ ラインハルト フォン グランバルト国王と謁見していた。
エルフの国に寄った後、精霊の国に寄りその後グランバルトに戻って来た。
そこにいたのは俺、メルダリア、ダリア、タテク、ミューモの5人だ。
其々の国を周り勝利報告がなされた。
最初は第一王女であるメルダリア。その後ミューモ、タクテ、ダリアと続き其々に報奨が渡されていた。
「さて、最後だ。
キトー、その方は異世界から突如呼び出され、大変な思いをしながらも良くぞこの世界を救ってくれた。
感謝しても仕切れない」
そこまで穏やかだった国王の顔が厳しいものになる、俺を睨み付けながら問いかけて来た。
「して、長い道中である。姫であるメルダリアと聖女であるミューモには、何もしていないな?」
「ハイ。誓ってそのような事はございません」
「ふむ」
国王が一安心と言わんばかりに安堵の表情になる中、宰相を始め多くの国のお偉方が苦虫を噛み潰したような顔を見せ、所々で舌打ちをする音が聞こえた。
「してキトーは元の世界に戻る。それが褒美で良いのだな?」「ハイ」
「「「なっ!?」」」
宰相を始めとしたお偉方が国王を見て話を止めようと躍起になる。
宰相を始めとしたお偉方は、俺をメルダリアやミューモとくっつけこの国の安全と発展の為に使いたいのだ。
俺が異世界に召喚されたばかりの時はこのような華奢な男に何が出来る。
そう言って城から追い出す算段をしていたが、俺の勇者としての能力が開花して強くなるに連れて様々な囲い込みを行うようになった。
最も酷いのが、メイドと称して伯爵家の令嬢を始め複数の貴族令嬢を付け、時に俺のベッドに裸で潜り込ませたり。時に風呂に勝手に乱入せたり、時には食事に薬を仕込ませ寝た所を拉致して公爵家の令嬢の部屋に寝かせる等の暴挙があった。
その都度、メルダリア、ミューモ、ダリアの3人が俺の窮地を救ってくれた。
そんな事が多々あり、早々と王宮を出てダンジョン等がある街に移動、そこで地獄の猛特訓が始まった。
そう、この猛特訓で本当に何度か心臓が止まりミューモの回復魔法で死の淵から生還すると言った経験を何度もした。まあ、今になればいい思い出だ。
そして俺が元の世界に帰る。その希望を伝えていたグランバルト国、エルフの国、精霊の国の国王の3人は国王同士の約束として魔人族の王に勝った暁に俺を元の世界に戻す、そう決まったのだ。




