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鬼ケ島伝説 鬼がしらと呼ばれた男  作者: 武田 健太郎


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131/133

131.

赤ちゃんが出来た。その言葉を聞いて飛び跳ねて立ち上がるとハルナと夢の手を握る。

「ハルナと夢と2人とも赤ちゃん出来たのか?」


「「うん」」

「やったな。おめでとう」


「ありがとう」「将も喜んでくれるの?」

「当たり前だろう。こんなに嬉しいことは無いよ」


そう言うと2人を優しく抱きしめる。

2人は俺がどんな態度を取るのか不安だったと思う、そんな不安の中で一生懸命に俺に教えてくれたのだと思う。


俺が抱きしめると2人が涙を流していた、2人共に緊張したんだろうな、心配したんだろうな。


この日の夜は3人で仲良く川の字になってゆっくりと寝た、俺もハルナと夢と一緒にいるとホッとするのか何時になく熟睡していた。


朝の準備を終えて、ハルナと夢と手を繋いで仲良く愛の屋敷に来るもう道中はルンルン気分だ。


異世界に呼ばれて始めて感じる喜びに完全に有頂天になりながら、愛の屋敷に来る。俺達が到着するとすでに伝次郎と幸太郎が来ていた。


愛はすでに神職の格好して祭壇のある部屋で待っていて、俺達が到着すると直ぐに神事が執り行われる。


神事が終わると愛とサネルが揃って上座に座る。

「将、あした幸太郎を連れてカメルン達の村に行ってちょうだい」


「駄目、早すぎる」「愛姉、私も反対。折角将が帰ってきたのにまた直ぐにいなくなるのは嫌」


ハルナと夢が愛に抗議する。

何時もの事だが、この抗議が始まると愛が俺を睨む。って言うか睨む相手違いません? そう抵抗するも愛の苦情は全て俺に来る。


「早まるな、今回はハルナと夢も一緒だ。あのアンと言う娘は産婆の経験もある、早い内にハルナと夢を合わせて見せておくのが一番だ。


なんならあの村で暮らしても良いぞ、お前達はこれからが大事な時だ、余り歩き回るのは控えないと行けない時期に入る」


ハルナと夢が互いに見合う、そして目を輝かせながら愛を見る。


「但し、将はこっちの村と行き来してもらうけどね」


俺が行き来するの気に入らないらしく2人がむくれてしまった。


「愛様、幸太郎を連れて行くのは何故ですか? 未だ造船の途中で人手が欲しい所です」

伝次郎が愛にそう聞く。


「鷹と約束したんだよ。次はユキを連れてくるってね、デンが行って美雪のあんなに喜んだ姿をみちゃったら、鷹が可哀想だろ」


伝次郎もそう言われると直ぐに納得したかのように頷く。

「ユキ、狼の心配は要らない。鷹の顔を見て来い、二~三日ゆっくりと遊んで来たらどうだ?」


「そんなにゆっくりとしてられないだろ」

実はここ最近、忠勝のおっちゃんがやけに元気が無い。目下の伝次郎と幸太郎の最大の心配事だ。


「ねぇ、私達も時々帰って来ても良いのかな?」

「じいちゃんも一緒に行っちゃ駄目かな?」

忠勝のおっちゃんを心配してハルナと夢が毎日おっちゃんの家に顔を出している、それ程に忠勝のおっちゃんが弱って来ているのだ。


だが、愛がはっきり心配無いと言う。

「門馬の親方なら、心配無い。


それよりもハルナと夢は自分の身体を心配しなさい。もう自分1人の身体じゃない、良いね。


大体、門馬の親方に何か有るなら私がお前達2人を出す訳無いでしょ」


そう説明を受けても未だ不安そうにする、そんなハルナと夢に愛がさらに言う。

「心配無い。あの実田の暴れ狼と呼ばれた男だぞ、そう簡単にくたばるわけがないであろう」


「「うん」」

ハルナと夢が不安そうに頷く。


実田の暴れ狼と言うのは門馬 忠勝の若かりし頃の通り名だ。京の都にまで轟いたその名声は恐怖の対象として恐れられていた。


一介の漁師で有りながら戦えば都の兵士100人をたった1人で倒し、牛や熊等と力比べをしても負けることの無い力を持ち。何よりも恐ろしいのはその大きさだ。


当時の平均身長が160cm位の時代に2mを超える身長に筋骨隆々な体付き、そして身体能力の高さから京の都の兵士や実田の兵士。元々の地元の豪族達や盗賊等まで忠勝のおっちゃんを見て見ないふりをしてまで関わらないように避けていたのだ。


争えば一国を失う。そう言われた程の存在が実田の暴れ狼こと門馬 忠勝の若かりし頃の姿だ。


ハルナと夢が少し納得したのか、不安そうな顔をしていたが少し落ち着くと次は俺の話になる。


「将、これからは私が許可をするまで妖術は使うな」

「何故だ?」

みんな驚いた顔で愛を見る。


「お前さんなら分かるだろ」

どうやら魔力が回復出来ない事を愛は知っていたようだ。


「約束は出来ない、狼達を倒すにはどうしても必要な事だった」

「やもうえない時は仕方ない、それは私も理解している。

だが、夢やハルナがちょこまかと使わせようとするだろう、そう言う時は絶対に駄目だ。


ましてや、最後の埋葬の時のあの炎は神様の聖なる神炎だ。私達の世界で使ってはならない」


愛は何処まで知っているのだ? 本当にこの月読みの神職の能力は凄すぎる、流石に現在の占い師でもここまで分かるやつとかいない気がするぞ。


「…」「良いか将、お前さんを元の世界に戻す、私達は龍神様とそう約束をした。その為に必要な事だ」


俺が何かを言いかけたが愛の真剣な顔に、その覚悟の強さに、その全てを背負う気迫に負けて押し黙ってしまった。


「わかった」


「ふ、将もそんな顔をするんだな。ようやく能面から人になって来たな」

愛が良く分からない事言って笑い出す。



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