130.
俺達の対戦が終ると又兵衛、カメルン、アン、美雪、鷹がやって来る。
狼の内の何匹かは村に近付いて来たが又兵衛の罠にはまりみんなで対処してくれたようだ。
人攫いの奴等は罠に捕まり伝次郎に叩かれ気絶していたが、狼達は逃すつもりは無かったようで首を複数噛まれ皆亡くなっていたらしい。
倒した狼と亡くなった人を一箇所に集め、インベントリから藁や枯れ木の枝等を出して乗せると火魔法を使い一気に焼き払う。
「将、お前はこの炎が怖くは無いのか?」
不意に伝次郎にそう声をかけられた。
「炎は怖いよ。でも全てを浄化する力が有る、狼達が持つ病気は全て消さないと駄目だろ」
「浄化する力か」
伝次郎がそう言うと何も言わなくなる。
実際に燃やしたのは穴を掘って埋める手間を省いた事と、カメルン達の父親や狼達に敬意を表す方法だと咄嗟に思ったからだ。
俺はこの時代に飛ばされた、そんな俺を助けてくれた大蔵村の人達を単純に信じる事にしただけだ、だからこそ大蔵村の人達を助けようと思った。狼の大ボスは自分の信念を貫いた、仲間を少しでも生き延びられるようにする為に。多くなった群と仲間を食べさせる為に。
そんな事を考えると、カメルン達の父親を責める気にはなれなかった。何処かで間違えば俺がカメルン達の父親のようになっていたかも知れない、そんなふうに感じてしまった。
何処かで自分を理不尽に貶められるとは誰であっても許せる事じゃない。
生きるだけで大変なこの自体に俺の考えは間違えているのかも知れない、でも誰かの為に泣いてくれて、笑ってくれて、信じてくれて尽くしてくれる仲間を見捨てる事は誰にも出来ない。
だからこんなぶつかりが生まれるのだろう。
次の日、愛と伝次郎を伴い大蔵村に戻る事になった、又兵衛と湯吉はこの村に残って子供達の為に色々とやってくれる事になる。
実田の支配地域を縄張りとしていた狼の群がいなくなった事で色々な事が動き始める事になった。
要塞と化している村を出る時のアンの落ち込みようは凄かった。美雪が少しふてくされていたが伝次郎に美雪が何かもらえないかと言って、帯を止める藍色の留め紐をもらっていた。
するとそれをこっそりとアンに渡すとアンの顔がパッと明るくなる。
「将、行こう。余りゆっくりとは出来ないから急がないといけないぞ」
「何か合ったのか?」
「ここ最近な、ハルナと夢…」
「デン!! それは本人たちが言う事」
伝次郎が何か言う所を愛が止める。
「なあ、中途半端に話しが終ると余計に気になるんだが」
ジトッとした目で2人を見るが2人は何も気にする様子も無く歩き始める、そんな2人を追うように少し駆け足になると急に膝が抜けるように倒れてしまった。
「おい、どうした?」
「将、少し疲れたのか?」
伝次郎と愛に凄く心配されてしまう、狼達を逃さないために使ったファイアウォールをかなり広範囲に張った為にかなりの魔力を消費してしまった。
これ以上の魔力の消費はかなり不味い気がする。
異世界ならどんなに魔力を消費しても辺りにだだよう魔素を吸収して魔力を元に戻す事が出来るが、如何せんここは地球だ。魔力の自然回復が異常に遅いのだ。
恐らく1年近くかけないと全ての魔力回復は見込まれない無い気がする。
魔力が抜けて少し重たい身体を無理やり動かして村に移動する、愛と伝次郎が俺の歩くスピードに合わせてくれてる。
「将、まさかと思うが昨日のあの炎はお前の妖術か?」
愛が緊張気味に俺に聞いてくる。
「ああ、狼の群を倒した時と全てを燃やした時な」
「やはりそうか」
愛がそう言って黙ってしまう。少しそのまま考えた後、突然伝次郎に背負子を使い運んでくれと言い出す。
「デン、悪いが背負子でおぶさってもらえるか?」
「ハイ、わかりました」
伝次郎の返事を聞いて直ぐに愛が背負子に座る、すると軽々と伝次郎が愛を背負う。その後、何するでも無く伝次郎とくだらない話をしながら大蔵村に付く。
村の入口にサネルがいて俺達を待っていた、そんなサネルに愛が声をかける。
「サネル、悪いね」
「いえ、お知らせの通りでした」
「わかった。悪いが今日は将を家に帰す、どうも調子が悪いらしい」
「わかりました」
サネルが深々と頭を下げる、愛は背負子から降りると1人先に屋敷に戻って行く。
「サネル、何か起きたのか?」
「将、伝次郎。明日またおいで、その時は夢、ハルナ、幸太郎も連れておいで」
「「ああ」」
サネルからは何も返事が無くその場は終わってしまった、俺と伝次郎が良く分からずに生返事を返してその日は別れる。家に付くとハルナと夢が待っていた、農作業はあらかた終わりを向かえており、今日は2人ともゆっくりと過ごすつもりらしい。
家に帰るとハルナと夢が何時ものように抱きついてくる。その日はゆっくりと3人で色んな話をして過ごす。
夜になり、2人が俺の前に正座して真剣な顔をする。
正直にビビってしまった、何かやらかしたのか? だって俺が何かやからした時しかこうして正座して向き合わないもの。そう思いドキドキとしながら2人が話を始めるのを待つ。
「将、あのね」
「う、うん」
ドキドキ、ドキドキ、ドキドキ。
心臓が口から飛び出さないか心配になる位に激しく心臓が動く。
その数秒の空白が、1年にも2年にも感じる位に長く感じる。
「「赤ちゃん出来た」」
「えっ?」
「えっ、えーー!! やったあ! やったあ!! 2人共か、ハルナと夢と一緒に」
「「うん」」




