13.
そしてギクシャクとしながらハルナと別宅に入る。それこそ誰も住んでいなかったのだろう、結構ホコリまみれだった。
たが、家の壁や天井は固く頑丈な造りで入口の反対側は崖になっており、誰かが侵入するのは難しい造りになっているは確かだ。
なんせ家に入るには崖の脇の狭い階段を上がるしか道が無い。こんな所に誰が攻め入る? そう聞きたくなる場所だ。
家の前に井戸があり、湧き水が蓄えられている、ある意味過ごし安い場所かも知れない。
「将、ボヤッとしてないで掃除するよ。ここ、ずっと使って無い場所だから結構ホコリまみれ何だからね」
そう言うハルナに尻を叩かれつつ掃除に没頭する。
その間は何も考えなくて良かった時間だ、俺とハルナにとって唯一の落ち着いた時間だった。
夜になると菅生の棟梁の使いと言う女中のような人達が数人来て、飯を置いていく。
食べ終わった食器等は階段の上に置いていくようにと言付かっている。
夜、2人で飯を食べている時もなにも音が無く困ってしまい、ハルナに話しかける。
「ハルナは実田の国が攻めて来るのは知っていたのか?」
「いや。
(ハルナが顔を振る)
あ、でもな、一応じいちゃんからそれとなく聞いていた。何時もじいちゃん武器や防具を拾いに行くから、その時にそれとなく教えてもらった。
この辺は元々、盗賊や海賊が跋扈している所でさ、その為か今だにその争いが絶えないんだ。
皆死んだ者を葬る事も無いから、そんな死体から剥いだりして取ってきて集めていたんだよ」
一息ついてハルナから質問があった。
「将は怖く無いのか? 突然来た村の事に巻き込まれて。
し、死ぬかも知れないんだぞ」
「怖く無いと言えば嘘になるな。俺は勿論だが自分の家に帰る。その為に何でもする」
「そ、そうだよな。
家に帰らないといけないんだよな。お母さんだっけ、どんな人だ?
あ、べべ、別に大した意味は無いぞ。私は物心付く前に両親を失った。門馬のじいちゃんは私を引き取って育ててくれたけど、お母さんの事は良く分からないんだよな」
「そうか、俺の母さんは凄く不器用な人だ。料理は不味いし、家の事もほとんど出来ない人だ。
けど、物凄く頑張り屋さんだ。失敗してもめげずに何度でもやり続けるそう言う意思の強い人だよ」
「な、なぁ。実の親の食べ物を不味いと言うのは駄目なんじゃ無いか」
ハルナに少し睨まれる。
「しょうが無い、事実だ」
そう言うと少し思い出す。
俺が母親の料理が不味く、飯が食えずにかなり痩せてしまい母ちゃんが病院の先生に怒られた事があった。
「良いですか、お母さん。
料理が下手なら下手でもいいんです。今は良い総菜や冷凍食品なんかも豊富にあります。
お母さんが頑張り過ぎると子供は不安になる事が有ります。
適度に手を抜いて、少し気持ちに余裕を持たせて下さい。
誰かに頼る事は恥ずかしい事では無いんてすよ」
なんて言われてらしいしな、そんな事を思い出すと何故か笑えて来た。
「でも、そうか。
誰かに頼るのは恥ずかしい事じゃ無いんだな、そんな話しを聞くと少しホッとする」
ハルナが急に俺の目の前に座り両手を付いて頭を下げる、そして真剣な眼差しを俺に向ける。
「将、今回は私達の事に巻き込んでしまって申し訳無い。
でも、私達だけだと必ず負ける、一族郎党揃って誰1人として生きながらえる者はいないだろう。
私からもお願いします。我が一族と私の仲間を助けてやって下さい」
明かり取りの窓のような所から月灯りが差し込みハルナを照らす。
その姿が凄く美しく見惚れてしまう程にハルナが神々しく見えてしまう。
おまけに、俺は押しに弱い。ありたいていに言えばお人好しだ、ハルナのその真剣な眼差しで見られると断る事が出来ない。
「わかった。俺の出来る事をやるよ、それで良いな?」
「ハイ!」
翌日、朝から菅生の棟梁の屋敷に来て棟梁と愛と話し合いをする。
「すると逆茂木とかは知らないんだな」
「そうだね、そう言う物で足止めをするとか考えた事が無かった。
直に手配させよう、木で良ければ売るほどここに存在してるからね」
「それと、海に関して何の位の数が来るか分かるか?」
愛の顔が沈む。
「実は陸から来るのは誘導だけで大した戦力じゃ無い。本命は海、門馬の親方を潰すのが最も優先される事だ」
「え?」ハルナの顔が沈む。
「なら俺も海に出よう。逆茂木を設置して道の両側の崖の上に弓矢を扱える者達を配置させて対処しよう。
それを指揮出来る奴はいるか?」
「猟師の又兵衛だな、本人はだいぶ歳だがその分経験も豊富だ。
集団での狩りにも慣れている」
「他に誰かいた方がいい奴はいるか?」
「であれば夢を配置したい。又兵衛と夢が揃えば確実に敵の侵攻を抑える事が出来るはずた」
その話し合いの後で門馬のおっちゃんの所に来る、幸太郎、又佐、伝次郎の3人に何故か凄く睨まれてしまう。
するとハルナが3人の前に立つ。
「じいちゃんに会いたい。じいちゃんは舟?」
「ハルナ、お前は問題無いのか?」
伝次郎の言葉にハルナが一瞬下を向く、だが直に顔を上げるとしっかりとした声で話す。
「私は自分の使命を果たす、それだけだ。だからあんた達も自分達の使命を果たしな、それを果たす前に死んだら化けて出てやるからな」
「ハルナ、嫌なら辞めても良いんだぞ」
「そうだ、又佐と言う通りだ」
「お前たちっ!!」
ハルナが怒を露わに3人を見る。
「この問題は私達の一族の問題だ。
それに将を巻き込んだのは私達だろ!
巻き込まれた将が私達の為に命をかけると約束してくれた。それに対してお前達は何だっ!!
小さい事にこだわって何を言ってる。そんな恩知らずがこの私の仲間だったのか? もし、そうなら私は物凄く恥ずかしい」
ハルナの迫力に、幸太郎、又佐、伝次郎の3人がしなだれてしまう。




