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鬼ケ島伝説 鬼がしらと呼ばれた男  作者: 武田 健太郎


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128/133

128.

狼のボスが上手く他の狼達を動かす、上手く連動して俺と伝次郎を分けて倒す算段だと思う。


どうやればこんな連携が取れるのかと思う程に多数の狼が動き続ける。

何かで聞いた事が有るが狼の群れは基本的に家族単位だ、父親と母親を中心に家族で構成されていると聞いた事が有る。


だとするとあのボス狼が群の父親で、その下に複数の子供達のグループがいるのだろうか?


近くにいる狼を狙い刀の鬼がしらで斬り付けながら少しづつ数を減らす、そこで個別のグループに別れている事に気が付く。


大ボスがいてその周りに5匹の狼が常に付いて回る、大ボスの指示を受けて動くかのように5匹〜10匹前後の別群が幾つも存在していて、其々に司令塔の役割をする中ボス的な存在がいる。


大ボスの動きは俺達に合わせた動きを見せている、俺達が前に出れば引き後に下がれば前に出る。


それが分かってからいちど伝次郎の側に来る。

「伝次郎、一度村の側の堀に向う」

「何か有るのか?」


「又兵衛が作った獣用の罠だ、かなりの数を作って設置してある」

「わかった」


俺と伝次郎が少しづつ後に下るとそれに合わせ狼達がジリジリと前に出る。

「ハクロウ、お前もこっちに来い」


ハクロウを呼んで後に下げると合わせるように数匹の狼が飛び出す、そこに合わせて横薙ぎに斬り2匹の狼を倒す。


それを数回繰り返し又兵衛が仕掛けた罠が有る場所まで来る。

「伝次郎、そこを動くなよ」

「わかった、罠はどの辺だ?」


「回り全てだ。これから俺が狼達を撹乱する」


俺達がジリジリと後退した事に気を良くした狼の群が俺達仕留めるにかかる、好機とふんで飛びかかろうとする数匹の狼をボス狼が抑える。やはりこのボス狼は幾多の死線を生き延びて来ただけの経験と感が素晴らしいのだろう、俺の狙い通りに動いてはくれないようだ。


唸る狼達を撹乱する為に俺が一気に前に飛び出し斬り捨てる、一匹の狼が斬られ倒れるとボスの命令を待てずにいた数匹の狼が動き出す。


それからは混戦だ、伝次郎は上手く回転するように動き攻めて来る狼を倒し、ハクロウが伝次郎をサポートするように上手く動いていた。何よりも体の軽いハクロウは罠にハマっても罠が反応しないのが良かった。


それを見た司令塔のボス達が一気に俺達を囲むように回りに広がる。


「ファイアウォール 」

狼の群の奥を炎の壁を作り逃げ道を塞ぐ。狼の群が驚き慌てる以上に、俺の後にいた伝次郎が驚き過ぎて言葉を失っていた。


「な、なんだ? 天変地異か? 神様の祟かぁ?」

そうボヤッと言うとポカンと口を明けて炎の壁を眺めている。


「伝次郎、ボヤッとするな。あれは俺が出した物だ、ここで完全に狼の群を叩くぞ」

「ほえ?」


放心状態の伝次郎をよそに近くにいて動けなくなっている狼を一匹、また一匹と切り倒していく。倒した狼の中に中ボスが何匹かいたらしく段々と統制が取れなくなっていく、そこをチャンスと思い一気に大ボスの前に来る。


大ボスと対峙すると何時も大ボスと行動を共にしている5匹の狼が俺を取り囲む。刀を下段に構え後に下げ腰を深く落とす。


俺の雰囲気が変わったと感じたのか、後の炎に恐怖を覚えたのか大ボスの狼が動く気配を示さない。


それから炎の壁の範囲を俺達の側に少しづつ移動させる、狼の群が俺達の回りに自然と集まるようになる。


だが、その緊張感をぶち壊す出来が起きた。俺が発生させたファイアウォールの火によってカメルン達の父親が逃げ込んだ穴から出て来たのだ。


「あちぃ、勘弁してくれ俺は火が苦手なんだぁ」


その声に驚いた狼が何匹かファイアウォールに自ら入り焼かれて行く、そして何匹かはカメルン達の父親に噛み付いて引き倒していた。


「ひ、ひい。助けてくれ」

「自業自得だろ、自力で何とかしろ」


カメルン達の父親と目があった際、咄嗟にそう言い放つ。


「てめぇあの時の弓矢を放ったガキだなぁ!!」

カメルン達の父親が大声を上げたせいで狼達が一斉にカメルン達の父親に噛み付く。その行動は確実に敵を倒す為の行動だ、首に噛み付き腹に噛み付き腕に噛み付いて動きを封じている。


それを見て伝次郎も少しまともになったのか辺りにいる狼を斧で倒して行き、ハクロウも弱った自分よりデカい狼に噛み付いていた。


そんな中でも狼の大ボスは一切油断すること無く俺の事を睨み続けている。互いに目線を逸らす事無くいると後の狼が俺に噛み付いて来る、相手の死角を狙う上手い作戦だ。


「ファイアーボール」

噛み付こうと近付いて来た狼に炎魔法を放つ、噛み付いて来た一匹を吹き飛ばしその後にいたもう一匹に当たると狼が燃えだす。


その隙を狙い大ボスに斬りかかる、ブン!! 小気味良い音を立て刀が空振りした。


大ボスの狼がギリギリの所を避け体勢を立て直す。この大ボスはどれだけの死線をくぐり抜けて来たのだろう、これだけの炎を見て、囲まれた状況の中でも冷静に勝ち残る事を考えている。

俺にはその事が凄く事だと感じてしまった。


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