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鬼ケ島伝説 鬼がしらと呼ばれた男  作者: 武田 健太郎


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124/135

124.

要塞化を進める村から大蔵村までは大した距離は無く、2人の足なら夜までには大蔵村に付くだろう。


そう思い村の整備を進める。

村の脇の林に入り、等間隔で木を伐採しては村の中に運び入れる。


俺が作業の為に動くと狼のハクロウがちょこちょこと付いて来て俺の回りで遊んでいる。


「おい、この枝を運んでくれ」

「ハイ、でもこれ何に使うの?」


年長の子供達が不思議そうにしている。

「燃やすようだ、村の中に入れて風通しのいい場所で乾燥させる」

「わかった、みんな持て」


「「「おお!!」」」

「ワン!」


何故かハクロウが年長の子供達と一緒に返事をする。ハクロウはまだ幼い狼だ、体も小さく体力も無い。


多分、村の中に入ると疲れてしまって直ぐに昼寝するだろうな、そんなふうに思って見ているとアンが来た。


「あらハクロウもお手伝い。偉いわね」

アンに褒められたのが嬉しかったのか、尻尾をブンブンと振って年長の子供達にくっついて楽しげに村の中に入って行く。


「棟梁、これからどうするの?」

「ああ、この下に堀を作る」


「堀って何?」

「大きな穴だ。穴を掘って出た土をこの木を切った所に盛っていく」


「何で?」

疑問に思ったのだろうアンのキョトンとした表情が少し面白かった。


この村の下辺りは元々湿地帯、この村の所だけ盛り上がった丘になっており米や野菜などを作るに適した土だ。


湿地の辺りは粘土質の土が多く水はけも悪い、ならその環境を利用しようと考えたのだ。


アンに堀の事を説明する。


穴を深く掘り粘土質の土を慣らして固め、一度入ったら簡単には出れないようにするのだ。


掘りは出来るだけ深く掘る必要が有る、そこから出る土を木を切った所に盛り土して行きより堀に高さと深さを付けるの。


「あのさ、そんなに沢山の作業をやるとなるともっと人手が必要なんじゃないの?

私達だけだと足りないよ」

アンが真剣にそう話す。


確かに堀を村全体を覆うように作ろうとするとかなり大変な作業だ。だが、ここは元々湿地帯の中にある。


大小の沼に囲まれた場所と言えば分かりやすいだろう。つまり天然の堀が最初からある程度有るのだ。


それを上手く活用する。


「この村の下には元々深い沼が幾つも有る。村全部を覆う訳じゃないから心配無い」


「そうなんだ」

アンがふと安心した顔になる。


     ◇◇◇◇◇◇◇


コハルとカメルンが小走りのような速度で歩き大蔵村に付いたのが日がくれる前だ。



コハルの案内でカメルンと一緒に愛の屋敷に向う。

久しぶりにコハルと合った愛と女中の人達が嬉しそうに抱き合っている中、カメルンはサネルと会って挨拶をしていた。

「サネル様お元気そうで何よりです、ここでの暮らしは慣れましたか?」

「ああ、だいぶね。カメルン、ユンバルの時は迷惑をかけたね」


蝦夷のムミューマの国を治めるカンバラとサネルは元々カメルンとアンの母親を良く知る人物だ。


そんな兼ね合いもあってか、カメルンとアンが保護した子供達を預かりムミューマで何人も引き取って暮らしているのだ。


そんなカメルンがここ大蔵村に来た。それは危険が迫っている事をサネルは理解していた。

「カメルン、お前達の父親か?」

「ハイ。何とか鬼頭の棟梁のお陰で俺達は難を逃れた、でも手助けしてくれていたじいさまと子供達が犠牲になってしまった」


そんなやり取りをしている所に愛が来る。

「ソナタがカメルンか?」


カメルンが咄嗟に膝を付いて頭を下げる。

「ハイ。鬼頭の棟梁の元で子供達の面倒を見ております」


「楽にしなさい。

コハルから話しは聞いています、今日はゆっくりと休んで明日、朝一で村に行ってもらいます」


「かしこまりました」

「明日は私も一緒に行くのでそのつもりでな」


「「え?」」

カメルンとサネルが驚いて愛を見る。


「サネル、お前はここに残ってやってもらう事が有る。

今、使いを出した。又兵衛と湯吉、伝次郎を連れて移動する、帰りは私と伝次郎、将の3人で戻って来る」


「わかりました」

「将を帰してやらんと、ハルナと夢がすねてしまうからな」


するとサネルが何やらニコニコとしながら頷く。


夜、飯を食いながら愛がカメルンに普段のコハルの様子を聞く。

この村を出る時のコハルは何処かに行ってしまうのではないか? そう心配になる程に衰弱して苦しんでいた。


だが今のコハルはスッキリとしたような、晴れやかな顔をしている。

「コハルはおもにおしめが取れたばかりの子供達の世話をしてもらっています。料理をしたり、遊んでやったり、子供達の着物を縫ったりと寝る時間意外はほぼ子供にかかりきりです」


「そうか、それは将がやらせたのか?」

「そうです。鬼頭の棟梁にこの小さな命をお前に預けるって言われて、最初は怒ってしまって子供達が近付かなったんですけど。

コハルは元々面倒見が良いんだと思います、段々子供達が集まってコハルの回りに集うようになってます」


「そうか」

そう言うと愛が安心したかのように頷く。


「私の目から見てもコハルは良くなっている、また私達は将に救われたな」

愛がそう呟く。


翌朝、朝飯を食べ終わった頃に伝次郎、又兵衛、湯吉が愛の屋敷の前に揃う。


カメルンが伝次郎を見た時に腰を抜かす程に驚いていた。


「で、でけぇ。俺、こんなでかいの初めて見たぞ」

「そうか? 伝次郎は凄く優しいんだぞ」


久し振りに伝次郎と会ったコハルが楽しそうにカメルン言う。だが、初めて伝次郎、幸太郎を見るとみんな同じ感じになると思う。だって異世界では無いがこっちの世界にいるオーガそのものの見た目なんだもの。



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