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鬼ケ島伝説 鬼がしらと呼ばれた男  作者: 武田 健太郎


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120/133

120.

メルダリアとミューモの苦労を余所に平和な日常を堪能している俺を愛が呼び出す、俺の平和で楽しい日々をぶち壊して来るのが愛だ(ただの偏見です)。この日も愛に呼ばれ鷹と美雪を連れて、集落に移動する準備を進めていた。


実田の国々との対戦が迫って来るこの時期まで来ると、少しづつ大蔵村から避難する人達が増えてきている、それを誰であれ文句を言うものもいない。大蔵村を抜け出して頼れる者が入ればいいが、いない者達が中心になって村に残っているのが正直な所だ。


もっとも、若い者から亡くなるが戦だ、年を取り移動するのがしんどい年寄り達が村の中に増えて来ている。


その中には伝次郎と幸太郎の家族も含まれている。日本人とは違う渡来人の見た目の違い他の村から追い出された者達も少なくは無い、そんな者達は実田との対戦を覚悟して準備に取り掛かっている。


そして俺はカメルン達がいた元丸玉村で美雪と鷹を連れて行く前の準備に勤しんでいた。大蔵村から一番近い村でかつて隣村の猟師の親方の又次や、タガルとヤガル兄弟が住んでいた丸玉村に来て村の改造を行っていたのだ。


この村は狼の群れに何度も襲われ、その都度居着いた者達が全滅してしまい今は完全な廃村になっいる場所だ。


ここは小高い山のような場所の上に作られた村で入口は大蔵村から入る方向と、真後ろの抜け道のような道がある。ヘタに山の上に作くられた村の為か大蔵村方向の入口から攻められると逃げようが無い作りとなっている。


俺がそこに目を付けてここを要塞化させて立て籠もる場所を作る為に、今いろんな魔改造をしている最中だ。


村の周りは林になっており結構急な斜面で群生する木々に覆われている、その木を等間隔で伐採して村の入口に集める。


幸いこの村の入口の道は真っ直ぐでは無くS字カーブが2回つながったような道をしている、それを利用するように要塞化を進めて行く。


今日のお手伝いは美雪と鷹だ。

2人は今大蔵村で流行っている風邪のような流行り病を避ける為に俺と一緒にこの廃村に来ている。


実は最初の二~三日は夢とハルナも一緒だったがやはり体調が2人とも優れないようで、愛に預かってもらってもらい大蔵村に帰したのだ。


俺としては寂しい限りだが、また元気になったら一緒に移動しようと言って別れた経緯がある。

そんな事を考えていると美雪から話しかけられた。


「ねぇ将兄、何でこんなにくねくねした道に沿ってこんなに柵を作ってるの?」

「これか? これは所謂(※)切り通しって言う罠だ」


「「罠?」」

罠と言う言葉に鷹と美雪が反応する。


そんな2人を柵の内側に作った足場に案内する、道の傾斜を利用して上から見下ろす事が出来るように設置した足場だ。


「ほら、ここから柵越しに覗いてご覧」

「ほ〜い」「うん」


鷹と美雪が道沿いを除くと鹿が出てくる、この辺りに鹿が出るのは珍しいがその鹿を興奮したように2人が見下ろしていた。道の間に門を2つ作りその2つ目の閉めた門に鹿がハマった形だ。


弓矢を取り出して構えて鹿に放つ。

シュト!! っと鳴って鹿の左前足の後ろ側に深々と矢が刺さり鹿が暴れて柵に追突、その後数分で倒れてしまう。


「す、すげぇ」「何で? 鹿って物凄く警戒心が強いのにあんなに簡単に倒せたの?」

鷹と美雪が目を丸くして驚いている。


「これが切り通し言う物だ。詳しい事は飯を食いながら教えるよ、先に鹿を回収しに行くぞ」

「「おおー!」」


夜になって晩飯に鹿肉を焼いていると美雪から質問が出た。

「将兄、要するに切り通しって狭い道路を作ってそこを上から狙うって事?

そうかそうか、そうなると相手は動きを止めて列を長くしないと行けないし、自分達は見やすい所から狙うって事ね。だからこんなに簡単に見えたって言う事なの?」


地面に枝で絵を描きながら切り通しの説明をしていた時に美雪が一人考え納得していた。


「そうだ、ここで門を閉めたら入って来る奴は門の前で足止めされる。

そこを俺達はここ、ここ、ここの3箇所、足場がある上から狙い撃ちにするんだ」


「ほえぇ、何で将兄ってこんな色んな事を知ってるの?

こんな戦略なんて今まで何処の国も使った事無いよ、街や村だってこんな山の上にある方が珍しいんだから」


美雪は物凄く頭の良い子だ、所謂天才と言うやつだと思う。


戦略に長け、人をまとめる事に長けた子で菅生の棟梁がいずれは神職でなくても村の棟梁にしたいと言った程だ。

そんな美雪と鷹に知っている事を伝えつつ、要塞作りにせいを出す。


道作りと足場を作り、村の回りを囲うように木の柵を設置していき村全体を囲う。


柵の前に掘りを作り出た土を持って土塁を作り、その土塁の上に足場を作り自分達にとって有利な立地を作る予定だ。


鷹と美雪に手伝ってもらい作業を続けて村の入口の道の横に深い掘りを作り、出た土を盛り盛土の要領で土塁を作って行く。この高低差を使い有利に動く事が出来るようにする事が俺の目的だ。


3人で頑張りやっとこさ入口の守備を固める事が出来た、正直に桃太郎達が狼に翻弄されている間に俺としては堅牢な要塞を作り、やり返す為の場所を作りたいと言うのが本音だ。


ここが俺達の生命線になる。

ここで何ヶ月も桃太郎達を足止めして蝦夷に足が向かないようにする事、夢やハルナ、愛やサネルが無事に蝦夷のムミューマに付いてカンバラの保護を受けられるようにする事が俺の目的だ。


この後、鷹と美雪を送り届けたらこの要塞に爺さま達と婆さま達を呼んでさらなる準備を続ける。


(※)本当の切り通しとは関係ありません



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