119.
異世界Side
キザンの話をミューモがただ黙って聞く。
「つまりな、キトーは人間じゃなくなった。キトーはそうならないと我らの世界では生きて行けなかったんだ。
俺を含めて魔人族の王やメル、タクテ、ダリア、人族の国、エルフの国、精霊の国も含めてみんながキトーを人じゃ無い化物にしてしまったのだと俺は思う」
「それはそうだと私も思う。
キトーは最初本当に大丈夫かって思う程に酷かった。でも、その分物凄くまともな優しい人だったし、良く笑う人だった」
「うん、俺達と関わった事で普通の人間が化物になる。その凄まじい出来事が赤龍様と鳳凰様に取っては辛い事なんだよ。
だから、キトーを普通の人に戻してから帰してやりたいだと俺は思っている」
「そっか、そこに私達は要らないんだね」
「キトーの元の世界に我ら行くと我らはただの異分子でしか無い。だからキトーを招いたこの世界ではキトーは異分子で、排出されないと行けない存在なのだろうと思う。キトーを化物から元の人間に戻せる人がいたら、それは元の世界の人達だけだろう」
「うん」
ミューモがそう返事をするが落ち込んだようで目に涙をためていた。
「キザン、ごめんね」
ミューモが謝ると古城の中に入って行く。
キザンとしてはキトーにずっとこの世界にいて欲しい、出来るならずっとこっちにいて時々剣を交え拳を交えて一緒に旅に出たい。それがキザンの本音だった。
キトーとキザンが対戦した時はキトーと魔人族の王が対戦した後だ。その一週間にも渡る対戦の後でキザンがキトーに挑んだが無論キザンが負けた。
理由は簡単だ、キトーは魔人族の王との対戦でさらなる強さを得た。キザンと対戦した時、キザンは即座に負けを直感した。
この男は自分よりはるかに強い。
キトーと対峙して越える事の出来ない大きな壁に感じてしまったのだ。
キザンはそこで負けを認めてしまう。国王を抜けば魔人族の国の中ではキザンが一番強い、そのキザンが負けを認めないといけない程の強者がキトーだ。
だから、他の魔人族の戦士達には手を出さない事を約束させてキトー達を国から出したのだ。
キザンがミューモを見ていて何故かそんな事を思い出した。
ミューモは聖なる炎に焼かれるメルダリアの側に行き、メルダリアに声をかけていた。
「ねぇ、メル。私はスッキリした。キトーの事を完全に諦めた。
だって、キトーは元々私達の世界からしたら異分子なんだもの。何時までも一緒にいちゃ駄目だよね」
「はっ ふゅ~。ミュッ ミューモ、だずげでぇ~」
メルダリアが打ちひしがれながらミューモに向い手を伸ばす。
「メル、貴女もキトーを異物だと認めなさい。キトーを元の世界に戻してあげるの、それを認めたら私も助けてあげる」
ミューモの言葉を聞いたメルダリアの目が一瞬カッと開く。
「駄目よメル。もし私達がキトーのいた世界に行ったとして、そしたら私達が異分子、異物になるんだよ。
そしたらやたらと優しいキトーが私達が困らないようにと必死になって、私達を元の世界に戻してくれるはずだよ」
ミューモの話しを聞いたメルダリアが泣きながらミューモを見る。
「ざみじいよぉ、そんなの寂しいよ。何で一緒に居ちゃいけないの?」
「メル、私達が強制的にキトー呼ばなかったらキトーとは会わなかった。
グランバルトの貴族が奴隷を作らなかったら、魔人族は私達を攻めてこなかった。だから、キトーをちゃんと帰してあげよう」
「やだぁ、そんなのやだぁ」
メルダリアが起き上がりミューモに抱きつきながら大声をあげて泣き始める。目から大粒の涙を出し体の中からありとあらゆる不浄な物を出し尽くすかのように泣き続けた。
その時メルダリアは気づいていなかった。鳳凰の聖なる炎が消えていた事に。
メルダリアが落ち着きを取り戻した後、気を失ったかのように寝はじめてしまう。
「ミューモ、小娘は助かったのか?」
「ハイ。
鳳凰様、私もキザンと話しをしてやっと少しキトーの気持ちがわかりました。
もし、私がキトーの世界にたった一人で放り出されたら、私はキトーのように強くは生きて入れません」
「立場が変わればみんな思いが変わる。キトーがあれだけ感情を無くしたのは仕方ない事だ、だがお前達がキトーをこれ以上この世界に引き止めるのは私と赤龍は許す事が出来ない」
「ハイ」
「なら、ほれ準備をせい」
「は、はい? なんのですか?」
「キザン!!」
「はっ!」
鳳凰が強制的にメルダリアとミューモをキザンに預け獣人族の国に送り出すと告げられて、ミューモの顔が一気に固まってしまう。
そして“折角ここまで来たのにぃ”と雄叫びを上げていた。
それからキザンの荷馬車にメルダリアを寝かせ、横にミューモが座る。
「おじさん、食料置いておくね」
「あぁ、レベッカ。
今度はお前の戦い方を見てやるぞ」
「勘弁して」
「がはははははは」




