115.
異世界Side
獣人族の国王が騎士団の詰所に来る事も珍しいなら、牢屋に来て直接捕まった者達に話しかける事も珍しい事だろう。だが、アパレル ナトリュウは何も気にすること無く白狐族の戦士に話しかける。
「爺さまは元気か? 余り心配かけると寿命が縮むぞ」
「大爺なら元気でやっております、今も若者達を捕まえてはしごいていることでしょう」
白狐族の大爺とは、かつて獣人族の中でこの人ありと謳われた戦士だ。名だたる強者達を抑え獣人族最強の名を欲しいまました人で、このアパレル ナトリュウと先代の魔人族の国王を武術の師匠でも有る。
強さが正義の獣人族の中で白狐族の大爺は少し変わった人だった。自ら権力を持たず、自由に旅をしたいと言っては国を抜け出しあちこちに行っては武者修行をしていた人だ。
その為か多くの白狐族の者達は何故国王にならないのかと大爺に詰め寄ったものらしい。
だが白狐族の大爺は何時も同じ答えしか言わなかった。
「国王等窮屈でかなわんし、そんなものに興味は無い」
当時、最強の白狐族の大爺にそう言われると誰一人として異議を唱える事も出来ずに、次点に当たる獣人獅子族のアパレル ナトリュウの父親が国王となり、国を運営していた。
時が経ち先代の国王が亡くなるとアパレル ナトリュウが国王を努める事になる、この時すでにアパレル ナトリュウに勝てる者は誰もいなくなっていた。
獅子族は元々一夫多妻制度を取る一族、その妻に白猿族の族長の娘が決まった時、その他の最古の一族、特に白狐族の反発が大きかった。
だが白狐族の大爺が最古の一族を止めたのだ。体を張り自らが最古の一族達を倒して回った。
「こんな老いぼれ一人に勝てないなんて情けない。お前等がアパレルの坊主に勝つのは何時になることやら」
対戦が終わるとこのような小言を残して帰ったと言われている。
その白狐族の大爺を最古の一族の者達は誰も追う事が出来ず、誰も勝つこと無く表舞台から消えて行ったのだ。
そしてキトーがかつて獣人族の一部の者達ともめた事が合った。その時この白狐族の大爺が獣人族を代表して戦い、キトーに手加減された状態で負けたのだ。
それからだろうか、キトーにユウメル王女やレベッカを初めとした獣人族の娘との結婚を強く勧める事になる。
顔を合わせるとキトーに詰め寄りキトーから逃げられる程に、キトーを気に入っていたのも確かだ。
余談はこの辺にして、国王アパレル ナトリュウが獣人族独特の解決方法を使い、白狐族の戦士達のけじめをつけようしている、そしてその内容をタクテと白狐族の戦士達に伝えている。
「でだ、問題が起きたらそれを解決しないと行けない。お前等はその覚悟は出来ているな?」
「当然です。例え我ら全てが死のうとも全ては覚悟の上です」
白狐族の戦士の一人がそのように言う。
「決まりだ。タクテ、悪いがお前さん相手してやってくれ。私が相手をすると相手にならんしな」
「は、はい?」
タクテの上擦った返事が牢屋の中に響く。
「あの、アパレル国王。何故私なのでしょか?」
「うん? 単純だ。タクテはキトー程強くは無い、かと言ってこの辺の者達に負けるような実力でもない。
私が戦えば確実に皆亡くなるだろう。それでは誰も責任を取らない状態になる、だから丁度良いのがタクテだ」
「な、なんだその屁理屈は?」
「ガハハハハ、細い事は気にするな」
国王のアパレル ナトリュウがタクテの背中を叩きながら、かなり適当に話しをまとめていた。
「何故、こうなった」
タクテがボソボソと呟きながら闘技場に立っていた。
タクテとしては了承した覚えは無かったが何時のまにか闘技場にいて、何時のまにか白狐族の戦士達と対峙していた。
そしてそれを楽しいそうに国王アパレル ナトリュウと娘のユウメルと一緒にどっちが勝つかを賭けていた。
「パパはどっちが勝つと思うの?」
「うん、それはタクテだろう」
「ちょっとぉ、それじゃあ賭けにならないでしょう」
「うん、そうか。ガハハハハ」
そんな2人をダリアと子供達が見て呆れていた。子供達の一人がダリアの袖を引いて聞いて来る、子供達は少し不安を感じているようだ。
「ねぇ、タクテって強いよな。あんな奴等に負けたりはしないよな」
「大丈夫だよ。ただタクテが我慢出来るかだよね」
「「「「「我慢?」」」」」
子供達と国王アパレル、娘のユウメルの声が揃う。
「ええ、タクテ弱い部下に指導する時って意外に鬼だからね。白狐族の人達の心が折れないか少し心配だわ」
「なんだ、ダリア。タクテはそんな鬼教官のような感じなのか?」
「陛下、今さら後悔しないで下さいね」
「う、うん」
さしもののアパレル国王も少し引いてしまっている。
すると、対戦が始まる。騎士団の小隊長が立会人を努めると宣言してタクテと白狐族の戦士達の間に入る。




