113.
異世界Side
獣人族の国、白猿族の王女 ユウメル王女と共に、南方を守護する南方騎士団の詰所で足止めを余儀なくされているエルフ族のタクテと精霊族のダリアは、さらなる難題に取りかかっていた。
ただでさえユウメル王女がいるお陰で2週間近く足止めさせられているのに、そのユウメル王女を迎えに来たのがまた最悪だった。
やって来たのが獣人族の国、国王 獣人獅子族 アパレル ナトリュウその人だった。
その時のタクテとダリアの驚きと衝撃は半端なものでは無かった。だが、そんな2人をよそに当のユウメル王女は会いに来た国王 アパレル ナトリュウに抱き着いてタクテ達と一緒に行きたいと甘えている始末。それにみんな迷惑していた。
そう、その国王の訪問は突然やって来た。詰所の生活スペースを借りて生活していたタクテとダリアと子供達の元に、獣人族の国王が単騎で乗り込んで来たのだ。
「たのもー!! 誰かいるか? 盗賊が来たぞ」
その日、夜が明ける前にその男が突然来たのだ。それものんきなかけ声で元気に入って来た。
タクテとダリアが寝起きながらもその男の前に飛び出して構える。
いかに寝起きと言えど勇者キトーと共に旅をした強者達だ、直ぐに戦闘態勢に入りやって来た男と対峙する。
所がその男はゆっくりとした感じで近付いてくる、その風格のある男にキトーと似た面影を覚え、懐かしさを覚えたのは確かだ。それがよりタクテとダリアの恐怖をそそる。
「私はエルフの国の王宮騎士、タテク バルト アンデルセン」
「私は精霊の国のダリア マルセン。理由合ってここ獣人の国で旅をしている」
するとその男が立ち止まり笑い出す。
「ガッハハハハハハ。
噂に違わぬ者達だな、我らが南方騎士団よりも先に動くとは流石と言わざるを得ない。流石は勇者キトーと行動を共にした奴らだ」
タクテが慎重に言葉を探る。
「貴方はキトーを知ってらっしゃるようだ、おまけに我らが南方騎士団と言われた。我々が名乗ったのだ、貴方も名乗られてはどうか?」
タクテが男に声をかける。それは慎重に相手を見て、少しの動きも見逃さず、気配や魔力の変化についても細心の注意を払う。
全てに神経を注ぎ油断無く問いかける。この男は誰だ? 魔人王に匹敵する強さを醸し出している。
そして最悪の事態を想像させる。キトーが倒した魔人王の側近の中に獣人族の戦士がいた、万が一その男だとするとタクテとダリアでは相手にならない。
強さだけなら魔人族の国王を超えると言われた存在、タクテ達にとっては絶対に会いたく無い相手だ。
「私か? 私は…」
「陛下!! タクテ殿、ダリア殿。おやめ下さい」
そこに走って来たのは南方騎士団の小隊長と2人の騎士だ。
その小隊長が言った陛下の言葉にタクテとダリアは顔を見合わせ構えを解いて平伏する。
「タクテ、ダリア。そう堅苦しくする必要は無いぞ。今日はお忍びだ、我が娘の顔を見に来たのだ。
ガッハハハハハハ」
「「娘!」」
タクテがフルフルと震えつつ確認をする。
「アパレル ナトリュウ陛下、それはユウメル王女を迎えに来たと言う事ですか?」
「うん? いや、本当に顔を見に来たのだ」
「「「陛下!?」」」
騎士団の小隊長を含め国王も驚いた顔で見ている、国王が言ったのは娘が勝手に動いている事を容認している。そう言っているのと同義だ。
「アパレル ナトリュウ陛下は今回のユウメル王女のお忍びの移動を容認なさっていらしゃっている。そう言う事でよろしいのですか?」
ダリアの問いかけに国王が怖い顔をする。
そして少し国王が前に出ると急に何かが飛び出し国王にぶつかる。
ドシッ!
「パパァ、嬉しい会いに来てくれたの?」
「ガッハハハ。ユウメル、突然旅に出ると置き手紙残して消えるんだも、パパ寂しかったぞぉ。
だから、パパも置き手紙残して来ちゃった」
「嬉しい」
盛り上がる2人を他所にその場に残された騎士団の3人とタクテ、ダリアの5人が口をあんぐりとさせながら国王と王女を見ていた。
2人とも置き手紙を残して出て来た? これが世界最強の一角を担う獣人族の国王か?
タクテとダリアが驚いて眺めている横で騎士団の3人が頭を抱えている。
国王には5人の妻がおり、その妻がほぼ国の運営を行っている。だから、国王が居なくても国としては何一つ問題は無い。
ましてや獣人族は強さが全てを決める。この獣人族の国王はキトー、魔人族の国王と並び最強に数えられる強者で、獣人族の歴史を見ても最強格の一人でも有る。
つまり、獣人族の中では誰も逆らえ無いのだ。
国王と王女がキャッキャッといちゃつく中、騎士団の小隊長が小言を言う。
「陛下、そのような姿を国民の前でなさるものではありません。貴方はこの国の英雄であられるのですぞ」
「良いでは無いか、2ヶ月ぶりの親子の感動の再会なのだぞ」
「良くはありません。間もなく一般の騎士達も駆け付けて参ります、その時そのような御姿を見せるのであれば私くしにも考えがございます」
国王が小隊長を睨むが、小隊長は負けること無く国王を見返す。
「ふん、餓鬼の頃から頭の硬い奴だ」
「当然です。これでも陛下のお守りを任されていたのですから、陛下の嫌いな物も良く存じております」
「おま、それは駄目だろう!!」
「いえ、そのようなお姿を他の騎士達に見せる訳には行きません」
「ヌグググ!!」




