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鬼ケ島伝説 鬼がしらと呼ばれた男  作者: 武田 健太郎


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112/134

112.

桃太郎Side


相模の国の近くに陣取り狼達と対戦を続けていた桃太郎の所に犬飼 小五郎 綱為と雉子藤 四郎 籠一が顔を出す。

「桃太郎様、猿山 胸吉 六郎が何とか一命を取り留めました。


恐らくですがあの狼達は何かしらの病気を持っております。襲われた村々がやけに人達が亡くなるのはその為と考えて良いかと思われます」


「ふぅ。これがあの狼共の元々持つ病か、かなり厄介だな」

「ハイ、連れてきた兵士の内すでに40名が同じ病にかかり亡くなっております」


そこに兵士が駆け込んでくる。

「ご報告、ご報告にございます」


「「何事だ!!」」

犬飼と雉子藤が兵士の前に飛び出す。


「京の大殿、時東 丸柄 経久様よりご伝言あり。


京の都にて狼共の襲来あり、都人が複数噛み付かれ謎の病を発症。噛まれた者、次々と亡くなった模様。


早急に実田に陣取る狼共を倒せとのお言葉でございます」

「「なにぃ!!」」


犬飼と雉子藤が怒りを露わに兵士を睨むが、それを桃太郎が抑ええる。

「落ち着け、兵士は伝言を正しく伝えただけに過ぎぬ。

おまけに手紙では無く伝言だ、起きたのはここ数日の事と考えて間違いたいだろう」


「しかしっ」「桃太郎様」

それでも何かを言おうとした犬飼と雉子藤を桃太郎が抑える。


「大儀であった。夜どうし駆けて来たのだろう、今日は休み戻るが良い」

「は、有難うございます」


桃太郎が犬飼と雉子藤を近くに呼び寄せる。

「この都の騒動はあえてだと私は考えている」

「と、申されますと?」


「良く、考えても見ろ。

京の都の近くでは毎年数名が狼に噛まれその病で亡くなるも達が出る、それをあえてこっちの狼共のせいにしたのだ。


帝が鬼の島の退治を了承するしか無いようにな」

「と言われますと、狼共はあの鬼共に扇動された。そのように話していると」


「そうだ雉子藤、あの鬼がしらは奇っ怪な妖術を使う。あの鬼がしらが狼達を扇動したと言っても誰も疑うまい。

鬼がしらの妖術は京の都でも恐れられている」

「しかし桃太郎様、今回の狼退治には鬼の島の三羽烏が参加しています。

それはどうなりますか?」


「犬飼、お前は相変わらず頭が硬い」

「は、申し訳ございません」


「京のお上達からしたらそのような事は些細な事だ。この狼達の騒動を持って帝に正式に鬼の島討伐を申し出るつもりだろう。三羽烏はこちらを偵察する為に参加した、そう言っているはずだ」

「であれば、正式に京の都より派兵する可能性があると言う事ですか?」


「そうだ。この実田の中の国々も虎視眈々と我らの地位を狙っておる、だがお上達が我らに加勢したとなれば配下の国々は何も言えまい。


我らに逆らうのは帝に逆らうと同義。この気を逃す事無く行くぞ」

「「は」」


その夜、桃太郎が父の時東 鎌田薫 只信の屋敷に来ていた。

「父上、叔父上から狼共を始末しろと催促が来ました」


「ふっ、京の都にまで影響等無いのにな。まぁ兄者にしたらこの機を逃すのは勿体無いと思っているだろうさ」

「ハイ、私も同様にとらえております」


「して猿山の倅の様態は?」

「ハイ、峠を越えたと伺いました。後一週間もあれば起きる事も出来るかと」


「うむ、猿山の倅がいなければあの狼共の病気に気が付か無かった所だ」


桃太郎が頭を下げる。

「父上、各々の国を治める棟梁達の中に何名かその病気により倒れた者がおります。


中には跡取りがいない者もおります」


時東 鎌田薫 只信が桃太郎の話しを遮ると桃太郎に近付き小声になる。

「その先は言うな、この所の騒ぎに合わせ間者が出回っておる」

「その噂は本当でございますか?」


時東 鎌田薫 只信がただ黙って頷く。

「鬼共の退治の前に、ネズミ狩りをせんとな、せっかく収穫した米を食われたらかなわん」


「確かにそうでございます。

あやつらは何処からとも無く出て来ては米の所に辿り着きますからね、私も注意して見ておきます」

「うむ、どうせなら狼共はネズミを狙ってくれると我らとしては共闘出来ると言うのにな」


「仕方ありません、狼共に人の言葉は伝わりません」


時東 鎌田薫 只信と桃太郎が何の意味もない会話を続けながら刀を手に持ち、何時でも抜けるよに構えていた。


2人が余り関係無い話しをしていたのが良かったのか、部屋を覗き込む視線も気配も完全に無くなっていた。


その後、時東 鎌田薫 只信と桃太郎が互いに顔を見合わせて頷く。


ここ実田の中には、時東 鎌田薫 只信が京の都のお上の一族。その血筋の良さに仕方なく従ってる者達も一定数いるのだ、そして隠れ反時東派はこの狼の襲来を好機と捉え時東家の衰退を狙っていた。


時東 鎌田薫 只信がいかに戦上手と呼び声が高くても、実際に兵士達を率いて戦ったのは実田の中に組み込まれた多くの国の棟梁達だ。


自分達が動かなければ実田は裸になる、実田が裸になればいかに血筋の良い時東家と言えど多くの国の棟梁達には逆らう事が出来ない。


反時東派はそう考えていた。



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