111.
翌日、伝次郎と幸太郎と共に海に出ていた。朝、伝次郎と幸太郎に漁に誘われたのだ。
「将、どうせやる事無いだろう。漁に行くぞ」
「お。デン、将も仲間に入れてやってね」そう言ったのは夢だ。相変わらず俺は畑仕事をさせてもらえない、荷物を持つ位しかやる事が無いのだ。
「将、まだ畑仕事させてもらえないのか?」
「う、うん」
幸太郎が俺を肩をポンポンと軽く叩く、その顔が凄く勝ち誇っていた。
その姿が余計に腹立たしい。伝次郎も幸太郎も漁以外にも農業をこなすし、造船や家等も作る何でも屋だ。俺には絶対に真似出来ない。
だからだ、幸太郎の勝ち誇った顔が無性に腹立たしいのだ。
「まぁ、人には得意不得意が有る。農作業が出来ないのは残念だが、将が俺達と同じ人間だって分かるのは少し嬉しいもんだ」
「伝次郎、それってフォローになって無いぞ」
「フォローってなんだ? ユキ分かるか?」
「いや、始めて聞いた。将どう言う意味だ?」
クソ、俺のスキル言語理解も翻訳するのを拒否しやがったぞ! まさか自分の取得スキルにまで見放されるとは思わかった。
それから海に行き伝次郎や幸太郎達と漁を行う。今回は底びき網漁だ、袋状の網を海に沈めていき、両端を船に付けて海岸まで漕ぐ。
その後はひたすら網を引く、ここが砂地の遠浅の海だから出来る漁だ。
今回はその網を引く為の人足として借り出されたらしい、そう言えばハルナと何か魚で取引きをしていた。
「平目でどうだ?」
「タイも欲しいかな」
「う~ん、アジのでかいのはダメか?」
「なら、3.4匹見繕ってよ」
「分かった」
「うん、じゃ将の事よろしくね。因みに将は泳げないから落とさないでね」
「しょうがねえ」
確かそんなやり取りをハルナと幸太郎がしていた、ハルナの奴お魚の為に俺の事を売りやがった。シクシク(泣)。
ぶっちゃけてこの網がとても重い。
船が砂浜に付いた後は人力で網を引く。片側を伝次郎と幸太郎が引き、もう片側を俺一人で引く。ようは綱引きの要領でどんどん引き上げて行くんだが足元は砂浜だ、踏ん張りも効かずに苦労しながら網を引き上げて行く。
この網は伝次郎達が手作りした網で長さ的には2-30m有るか無いか位の長さにロープ付けて全体で50m位の長さになる。その取れる魚の量はかなりの量で村で食べるには十分な量が取れ、余った魚は干して保存食として加工されるのだ。
とった魚を腹開きにしてワタを取り出し海水に漬け込み1日置く、それから新しい海水と真水を混ぜて薄めた水で煮込んで味を付けると網に乗せ天日干ししていく。
タコが取れた時は兎に角大変で、タコのぬめりを取って内臓を取り出し、足を叩いて柔らかくしてから薄めた海水で煮込む、その後で網に乗せ天日干しだ。
タコの天日干しはここ大蔵村の特産品でもある、このタコの天日干しを欲しがる地域の人達は以外に多く行商の人達がごぞって買い求めに来るのだ。
魚の天日干しもかなり日持ちがするらしく、この辺の村では良く行われる物らしい。これから寒くなり、漁が難しくなる時期には重宝されるたんぱく源なのだか。
漁が終わり、大漁に取った魚を捌いていき其々の家々に分けた後で、ハルナが交渉した平目と鯛、鯵を分けてもらい家に帰る。
家に付くと鯛を捌き半身を愛の屋敷に届ける、すると代わりに木の実を分けてもらう。木の実に付いてはサネルがかなり詳しいらしく、今まで食べなかった木の実の調理方法を教えてもらい食べたりするようになった。
そしてこの頃からだろう、実田の監視の目がうるさくなって来た。
漁に出ると、近くの海岸沿いから観察したり、村の前の街道を実田の兵士達が5.6人で通ると言う事が増えてきた。
そんな中で愛に突然の呼び出しを受ける、その日はハルナも夢も朝から出かけていない日だった。
「将、来たか。まぁ座ってお茶でも飲め」
「頂く。所で何のようだ?」
「なんだ、用が無いと呼んだら駄目か?」
「いや、駄目じゃないけどさ。呼び出されるとやっぱり気になるじゃない」
「ふむ、相変わらずその小心者な気質は治らんな」
「あの、ほっといてもらえますか。
俺もやっと慣れてきてみんなと普通に接する事が出来てるけど、元々は小心者なの」
そんな俺と愛の会話を聞いているサネルが驚いた顔で俺達を見ている。
この大蔵村を始め、多くの人達は愛を尊敬し軽口を叩くような会話をする事が無い。
にも関わらず俺だけが愛と軽口を聞いて話しをする、それがサネルにとっては非常に不思議な事なのだと言う。
「将、悪いが来週にでも鷹と美雪を連れて移動してもらえるか?」
「うん? もう始まるのか?」
愛の申し出に緊張感が走る。
「いや、この村も流行り病で熱をあげる者が増えてきている、鷹と美雪が病にかかる前に移動させたいだけだ。
デンとユキのご両親にも説明はして有る」
「構わないがハルナと夢は連れて行っても良いのか?」
「悪いが駄目だ。今、遠出をする事は2人の体にこたえる」
「うん? 何か合ったのか?」
「まだ将には内緒だ」
愛の含みを持たせた言い方が凄く気になってしまった、そしてそんな俺を見てサネルがからかい始める。
「なんだ? 将、寂しいなら私も行こうか。お姉さんもたまには良いものだぞ」
「サネル、冗談は辞めてくれ。これでも結構落ち込んでいるんだ、2人と一緒に行けないのはこたえる」
サネルの奴、大蔵村に馴染んできた事もあってか色々と言う様になった。すると愛がその話に乗っかってくる。
「なんだ、将。言ってくれたら私は何時でも良いぞ、淋しい夜等は温めてあげるぞ」
「愛も、勘弁してくれ」
この2人は俺をからかう事が余っ程楽しいのか終始ニヤニヤとしていやがる。




