110.
そんな事が合ってから数日経った頃、狼狩りに借り出されていた伝次郎と幸太郎が村に帰ってくる。
帰ると直ぐに愛に報告の為にやって来た。
「デン、ユキ。ご苦労さまでした」
「「はっ」」
「それで狼の群はどうですか?」
「ハイ、その所在は一向につかめておりません。狼達の縄張りはかなり広いようで、実田の複数の国を跨いでいるようです」
「そうですか。実田の兵士達はどうです?」
「ハイ、時東 桃条 小太郎様を筆頭に犬飼 小五郎 綱為様、雉子藤 四郎 籠一様が其々に別れ指揮を取っております。
やはりこのお方達の連携は凄く、狼達の影響を最小限に抑えております」
「そうですか」
「ハイ、実田の其々の国を治める棟梁達ですら、時東様、犬飼様、雉子藤様に従い動いた方が効率が良いと言って従っていた程です」
「そうですか、なら狼達の事が落ち着いたら次は我らと言う事でしょうか。
デン、ユキ、疲れている所とは思いますが私達の準備も怠らないようにお願いします」
「「ハイ」」
そして、その時始めて実田との戦を控えた状態である事をサネルが知る。
「愛様、愛様も戦争に関わるのでしょうか?」
「サネル、心配は入りません。将が来てから私の運命は変わりました。
私は貴女を一人前にするまで死ぬ事はありません、恐らく貴方と共にムミューマまで行く事になると思います」
その言葉を聞いてサネルが少しホッとした顔になる。
「しかし、何故に実田は月読みの神職を亡き者にしようとするのでしょうか? 政治利用したければ囲ってしまえば良いだけだと思いますが」
「難しく考え無い事です。
詳しい事は言えないが、我らは龍神様から選ばれた存在です、それもあり我らは実田や京の都に従う事はありません。まぁ、それが理由と言えば理由ですかね」
「龍神様から選ばれた?」
サネルが大蔵村に来てから最も驚いた顔をしていた。
その頃、愛に挨拶が終わった後の伝次郎と幸太郎が俺の家に来ていた。
今後の事を話し合う為もあってだ。
「将、今日はすまないな」
「気にするな、伝次郎と幸太郎と一緒に飲めて嬉しいよ。
それよりも忠勝のおっちゃんの容態はどうだ?」
「今の所は問題無い。ただお年だからな、もう漁に出るのは控えた方がいいかも知れない」
それはここ最近、忠勝のおっちゃんが直ぐに疲れてしまい良く休む事が増えた事を指していた。
ちょっと前までは人一倍元気で漁師達を引っ張っていた忠勝のおっちゃんだが、漁師達から見てもあからさまに疲れてしまって動けずに座っている時間が増えたと伝次郎と幸太郎に相談が来ていたのだ。
当の忠勝のおっちゃんは「よる年には勝てんさ」そう言って笑うだけだが、大蔵村の中では愛以上に重要な村の要なのだ。
村人にとって忠勝のおっちゃんは実田との対戦も含めた要なのだ。
愛の父親である菅生 法明と対等に付き合い、悪ガキだった三羽烏を大人しく従えた村の英雄だ。
愛ですら、何かあると忠勝のおっちゃんを頼る位の人だ。その要に何かあると糸が解れるようにこの村は壊滅してしまう。そう言う存在なのだ。
少ししんみりとした雰囲気をハルナがぶち壊す。
「デン、ユキ。じいちゃんなら何も心配は要らない、それよりも他の村の事を教えてもらえるか?
狼退治で結構あっちこっちあったんだろ」
その言葉に伝次郎と幸太郎が顔を見合わせて笑う。
それから伝次郎と幸太郎の武勇伝をたっぷりと聞いてしまった。やはり、話の中心は桃太郎と犬、雉達の話しだ。
こいつらは相当にやると思ってはいたが、俺の想像以上の働きをしたみたいだ。
狼は獲物を捕らえる為に集団で取り囲み、獲物の動きを止めて仕留める。自分達が、獲物に集中しだすと自分達を囲む集団がいても気が付かないらしく、そこを上手く使い狼の討伐をしているらしい。
だが、この狼のボスは本当に頭が良いらしく、1回使った手にはかからないのだ言う。
罠にかかる事もなく、毒を入れた餌は食べる事無く集めた上に糞をして嘲笑うのだか。そして、人に対する誘導までも行っている。
そう伝次郎が評価した。
獲物を捕らえる為に数頭の狼が狩りを始める、それを見た実田の兵士達が狼の群れを取り囲む。
するとその上から狼達の巨大な群が兵士達を取り囲むのだ、後ろを取ったと思い油断しきった兵士達がそれにより沢山亡くなっていると聞く。
そこにやって来たのが桃太郎達の軍勢だ。桃太郎達は油断すること無く、狼と対峙して囲まれる事無く狼達を追い詰めるのだと言う。
攻めあぐねた狼達が引くと、桃太郎達はそれ以上追い詰める事が無いらしい。
桃太郎曰く「これ以上は狼共の縄張りだ、我らが行くと兵士達が分断され大きな痛手になる」
そう言って兵士達を次に現れると目させる場所に移動させるのだと言う。
桃太郎の判断に従わない各国の棟梁達が、自分達だけで攻めて返り討ちに会うと言う事が何度も起きた。それからだ、桃太郎の指揮の高さを知った各国の棟梁達が、一斉に桃太郎の指示に従い出したのだと言う。
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