109.
次の日の昼頃に集落を出て大蔵村を目指す、そこにサネルも一緒の移動だ。
夜遅くまで話し合っていたアンは朝から元気だった。そして俺達に燻製肉を別けてくれる、あれから俺が教えた方法以外の燻製の作り方を研究してるらしく、この集落の栄養源としてかなり充実していると言っていた。
だからその為も有るのだろう、俺達が初めてカメルンとアン達と出会った頃と比べると、皆んな体格ががっしりとして来てのは確かだ。
そうなるとこの場所が他の野生動物達に取っても、一つの縄張りとなって近付かなくなる理由の一つにもなって来る。
だが、いい事ばかりでは無く問題も出てくる。年長の子供達もカメルンに追い付くんじゃないか、そう思える程に身長も伸び始めて来ているし、女の子達もだいぶ女らしい体付きになって来た。
こうなって来ると、服やら寝床をどう分けるか、等々新しい問題が出てくる。何時までも一緒に寝床じゃ不味いだろうし。
かと言ってこれ以上に寝床を増やすのもどうだろう。まぁ、今直ぐに解決出来る事じゃないだろうから、追々解決しないと行けない問題だ。
集落を出る時、じいさまから愛に手紙を預かる。
「将、これを愛様に渡してくれ」
「わかった。じいさま、ここの事は頼むな。次来る時はたぶん美雪と鷹も連れて来ると思う」
「そうか、そう言う時期に来てしまったか」
「ずっと、こんな平和な時が続いてくれると思ったんだけどな。上手くはいかないものだな」
「仕方ないさ。実田の奴らはわしらが嫌いだ、わしらは実田の兵士よりも背もデカければ力も強い。
戦わせたらわしらが何時も勝ってしまう、実田はそれが許せんのだろう」
「じいさま。カメルンやアン、コハルの事も見てやってくれ」
「任せとけ」
「ああ、将」
じいさまに呼び止められじいさまを見る。
「お前さん、無理し過ぎて無いか?」
「うん。じいさま有難う」
「ん、なら良い」
集落を後にしてサネルを伴って大蔵村を目指す。その際、廃村になった場所に新しく移り住んだ者達といさかいが起きてしまった。
廃村近くの川に寝床を作り、一夜を明かした時の事だ。
この川を自分達の縄張りだと言って文句を言って来る奴等に出会う。だが、ここらへんは狼の群れにやられみんな逃げ出し、ここ何ヶ月とひと1人いない廃村だった。
俺達がそう主張すると彼らはそんな事は関係無く、今は自分達の縄張りであって勝手に泊まったのは問題だと言い出す始末だ。
この時代は宿なんかは無く、大概野宿が主だ。それも畑等の無い生活に関係無い場所で野宿を行う。
俺達もそんなルールに則って野宿をしている、言いがかりを付けられる事はない、そう返す。
だが、ここにいる奴らの目的はハルナ、夢、サネルと言った女だ。特にハルナと夢は渡来人特有の髪と肌の色だ、それを特に好奇の目で見ている。そうなると流石に俺としては許す事が当然出来ない。
ましてや夢もハルナも本当に美人だ。2人ともスラッと背が高く、しなやかな筋肉に減り張りある体を持った美しい女性だ。
そんな2人を褒められたら俺としては嬉しい限りだが、それ以上の感覚で見られるのは看過できない。
やって来てのは村人達は7人だ、そいつらを全員刀の鬼がしらで、鞘を付けたままで叩いて気を失わせてからその辺に放置する。唸り声が聞こえたが気にすることも無く大蔵村に向う。
俺にやられた者達は女を求めて数を頼りに襲ったにも関わらず、返り討ちに合った事が恥ずかしかったのか、鬼にやられたと言い出した。
鬼がこの村を襲ったと言って、負けた者達が騒ぎ始めた。だが、まだ狼達の被害が甚大でてんやわんやしている実田とその配下の国々は、その村人達の申告を無視したのだ。
狼達だけでも大変なのに、そこに鬼の島の鬼達かも知れない者達とのいさかいが起きたら、より面倒になる。そう判断したらしい。
所がその村人達はそれが気に入らなかったのか、何とか自分達の話しを正当化しようと複数の村々の要職にいる者達を集め、月読みの神職を訪ねて来たのだ。
その時、すでに愛に弟子入りしたサネルがその人達の対応に当たる。
「ゲェ゙ッ!!」
愛に会いに来た俺達を襲った男達が、サネルを見て最初に放った言葉がこれだ。
それを見た愛と他の村の要職を兼ねる人達がその男達を見る。
「サネル、貴女はこの男達を知っているの?」
「ハイ、愛様。
私は愛様に弟子入りする為にこの村の夫婦に頼み、一緒に村に向かっておりました。その時、どうしても野宿しないと行けない日がありその野宿した日に、この男とその配下の男達に襲われました。
ですがこの村の夫婦が私を助けてくださり、守ってくださったのです」
「いや、待ってくれ。貴女が神職になる人だとは知らなかったんだ」
「「「「知らなかった!!」」」」
男に頼まれてやって来た各村の要職を兼ねる者達が一斉に怒りを露わに男達を見る。
「我らはお前達と一切の繋がりを断つ」
「「「「そうだそうだ」」」」
そんな事があり、俺達を襲った男達はそそくさと村に帰っていった。
所がその村は男達がついた日の夜、またも狼の群に襲われてしまい、新たに住み着いた者達全てが亡くなってしまったのだ。
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