108.
(アンと将の会話録)
「アンとカメルンはムミューマのカンバラ達はあった事は無いのか?」
「あるよ、盗賊達が問題が起きてから私らを助けてくれたのはカンバラだよ。
カンバラ達の国とルルイの間には大きな国やら豪族がいないの、だから定期的にカンバラ達が見回りに来る。
それにカンバラ達は私とカメルンが親戚関係だって知ってるよ」
知ってる? それってどう言う事だ。定期的にカンバラとカメルン達は交易があるのか、それに親戚に当たるってなんだ? どう言う事だ?
「棟梁、難しく考え過ぎ。
おばあちゃん達が京の都から追われて逃げた時に助けてくれたのがムミューマの人達なの、その内、ムミューマの人達とおばあちゃん達が仲良くなって一緒に暮らし初めて今にいたるのよ」
「難しいな、俺なんかよりもカメルンやアンの方が大変な状況だったんじゃないのか?」
「う~ん、どうだろう。私達はそれなりだよ、自分達が戦うわけじゃないしさ。それにあの燻製肉もカンバラが買い取ってくれたの。
評判は良かったよ」
ひとしきり自分の事を話したアンが俺を真剣に見る。
「ねぇ、今度は棟梁の。ううん、鬼頭 将の本当を教えて」
本当ね。
「俺な、畑を耕した事も無ければ虫を捕まえた事も無かったし、人と争う事も無い時代の人間だ」
「はっ?」
「なんだよ、本当を言えと言ったのアンだぞ」
「いやいや、あり得ないでしょ。誰よナタ一つで熊を倒して解体してみんなに配ったの。棟梁だよ、何を嘘付いてるの」
「本当だよ。難しい話は省略するけど、俺はある国に呼ばれて戦士になれと言われて戦いを強要された」
そう異世界に召喚された日からだ、常に戦いの日々だった。最初は弱った獣人族や魔人族と強制的に戦わされた、戦争の中で捕虜となった魔人族と獣人族の兵士達だ、当然刀なんて持った事の無い俺が勝てるはずがない。
「最初なんて酷かったぞ。怪我をして、逃げ出して、追い込まれてどうしょうも無くなると俺を呼んだ奴らが来て俺を治療してまだ放り出される。
そんな事の繰り返しだ」
「な、何それ? 良くそんな環境で生き延びたね」
「だろ。
色々あって必死に覚えたぞ、それから死にそうな目に何度もあって、それ
でも必死になって戦ったよ。それで気が付いたら誰にも負けない位に強くなってた。
でもさ、強くなると自分の大切な事を失って行くんだ。だから、毎晩俺は夢でうなさられるんだよ」
「将はそれで良いの? 変わらなくて良いの?」
「変わる努力は人一倍してるさ。それでも変わらないのが運命だ、どう頑張っても運命には逆らえない。
でも、ハルナと夢に出会えた。俺にとってはかけがえの無い存在だ」
「おーおー。言ってくれるね。
でも、ハルナも夢も羨ましいね。私もそんなふうに言ってくれる人がいないかな」
「カメルンじゃ駄目か?」
「将、いい加減にして」
アンに真剣に怒られてしまった。冗談で言ったつもりが、冗談に聞こえなかったようです。
「ハイ、ごめんなさい」
「本当です。次言ったらいくら棟梁だからって言っでも、この集落から追い出すからね」
「うん、本当にごめんね」
「わかればいい。許してあげる」
ふざけた感じで話をしていると重たい雰囲気も無くなり、話し安くなって来たと思う。
すると、アンが真剣な顔になる。
「ねぇ、棟梁達と実田の国との戦いはいつ始まるの?」
「今年だよ、今は丁度収穫の時期に入って来ている。収穫作業がおおよそ終る頃に始めるじゃないか、だからその前には鷹と美雪は先にこっちに越させる予定だ。あの2人は足も遅いから先に移動させる」
「そうなの?」
「ああ、ハルナと夢はある程度後だ。あの2人は又兵衛や湯吉と一緒に移動してもらう。
最期はムミューマのサネル達だ、ここにサネル達が到着したら皆んなでムミューマまで行ってもらう」
「それで、棟梁はどうするの?」
「俺は最後まで戦いに残る」
「え? 何故?」
「俺が最初に居なくなると実田はムミューマにまで攻め入るだろう。
だから、俺が最後まで残って戦う。
実田を壊滅させる位に叩き潰す、何日持つかも誰が俺に付き合うかも分からないが、実田の桃太郎と猿、犬、雉の4人が最後まで俺を追い詰めるだろう」
「桃太郎と猿、犬、雉って何?」
「実田の将軍とその側近の3人だ。
桃太郎が将軍だ、名前が時東 桃条 小太郎。
犬が犬飼 小五郎 綱為。
猿が猿山 胸吉 六郎。
雉は雉子藤 四郎 籠一 と言う」
「その桃太郎と猿、犬、雉の4人の将軍って棟梁を追い詰める位に強いの?」
「強い、それに彼奴等は俺達の村を鬼が住む島と呼んで差別してるし、俺を鬼達の頭だと呼んでいる。
京の都では鬼退治を行うと大々的に言って盛り上げているらしいぞ」
「そうなんだ、コハルは優しい良い子だよ。ハルナも夢も綺麗だし実田に協力している盗賊達の方が余っ程鬼だよ」
「そうだな、彼奴等の方が余っ程鬼だよな。見た目も怖いしな、やってる事は殆ど酷いしな。アンもいい事言うな」
「はは、でしょ」
そんな話で最期は笑い合った。
「アン、そろそろ帰ろう。寝不足だと明日大変だぞ」
「うん、棟梁は先に帰ってて。私はもう少しここで星を見てから帰る」




