107.
(アンと将の会話録)
その日の夜、住居でハルナと夢と3人で寝ていると人の移動する気配を感じて目を覚ます。
集落を出る動きを不審に感じて後を負うと、アンが集落を抜けた所で座って星空を眺めていた。
アンの所に行って声をかける。
「アン、寝れないのか?」
「棟梁!?」
アンが驚いたように振り向いて俺を見る。
「子供達さ、これが最初じゃないんだ。私とカメルンは何人も見てきた」
「うん」
「慣れないんだよね。やっぱり辛い」
「そうだな」
アンの落ち込んだ表情が月明かりに照らされて、より悲しそうに見える。
「棟梁は沢山見てきたみたいね」
「なにをだ?」
「仲間の死」
「そうだな、毎日夢でうなされる程見てきた。仲良くなった奴とか、何時も喧嘩してた奴とか、良く馬鹿にして来た奴とか。
俺は人の屍の上に生きている」
「そんなに!!」
アンの驚いた顔がに俺が驚いてしまった、そんなに驚く事か? 兵士をしているとそんな経験もするさ。
「ねぇ、棟梁の事を教えてちょうだい。どんな経験をすると棟梁みたいになるの?」
「え? 俺みたいになる」
「そう、カメルンやコハルとたまに話すのね。なんで棟梁の回りって辛い事があっても皆んな笑い合えるのかなって。今でも大変な状況なのに、何故か日々が楽しいんだよね」
「う~ん、そう言ってもらえるのは嬉しいけど、それじゃまるで何も考えていないみたいじゃない俺?」
「やっぱり、何も考えて無いの?」
「ちゃうわ!!」
ほっとうにコイツラって人を頭領とか言って持ち上げる癖に、何かあると高速アタックみたいに叩き落しやがる。
人を何だと思っているのやら。
「いずれな、そう遠く無い日だ、みんなにはハルナと夢を伴ってムミューマのカンバラの所に行ってもらう。
カンバラには話は付けてある、又兵衛や湯吉、美雪や鷹も一緒だ」
「うん、それは最初に聞いた。でもなんで棟梁は一緒に行かないの?
棟梁、奥さん達をあんなに大事にしてるのになんで自分だけ行かないの?」
だよな、当然そうなると思った。でも、本当の事は言えない。
「詳しい事は言えないけど、俺は実田の国全部と喧嘩している。
元は実田がハルナや夢達を殺そうとした事が始まりだ。だから、やり返した。何度も実田が攻めてきたけどそれを押し返した」
「え? 勝ったの。なら何をそんなに恐れる事が有るの?」
アンの当然の反応に余計に言葉が詰まる、俺はちゃんと説明出来る位の言葉を知らない。
「実田に勝ったのは、実田が俺を甘く見ていたからだ。今度は本腰を入れてやって来るだろう、数だって2千から3千は来るだろう。
俺にも流石にその数は無理だろう、そうなったら亡くなるかも知れない。
だから、俺の希望を残すんだ」
「棟梁の希望って何?」
アンが不安気な顔で聞いてくる。
「ハルナと夢との間に産まれる子供達だ。まだ子供はいないけど、いずれ出来るだろう。その子供達が俺の希望だ」
「なんだ、二人とも妊娠してるのかと思ったじゃない。でも、2人に子供が出来るなら私らの出番だね。皆んなで可愛いがるよ」
「その時はお願いしたい。みんなが覚えた事を次の子供達につないでやって欲しい、それが俺の望みだ」
「フフ」
アンが変な笑いを漏らす、俺何か変な事でも言ったかいな。
「ねぇ、棟梁って年はいくつ? じいさま達も将は本当は何歳なんだろうな? なんて事を何時もそう言ってたけど本当にじいさま達みたいだよ」
うん、たぶん俺はピチピチの17才だ、グランバルトに召喚されてから年はとって無いよ。何年もグランバルトで戦いに明け暮れていたから、他の17才よりも歳上みたいな感じはすると思うけど。
なんせグランバルトに行ってから肉体年齢は何故か変わらないしな。でも、面倒なので話題を変える。
「アンはなんでカメルンと一緒にこんな暮らしをしていたんだ? カメルンはルルイに元々住んでいたんだろ。アンは?」
「私? う~ん。またまたかな」
アンは娼婦達の集団と共に旅をしながら色んな村々を回り生活をしていた。
子供のアンにできる仕事等対して無い、だから小さい子供達の世話や、飯や洗濯等が主な仕事だった。
そんなアン達がルルイに来た時だ、アンはそこでカメルンと再会した。
まぁ、アンからしたらカメルンの第一印象は最悪だったらしい。カメルンはルルイの街のガキ大将で、アンからしたら迷惑この上ない悪ガキだったらしい。
そんなある日、ルルイが実田を中心とした者達によって滅ぼされた。アン達と一緒に旅をしていた娼婦達は一番最初に殺されたらしい、そんなアンを助けたのがカメルンだ。
カメルン達が逃げる時に使っていた秘密の場所にアンを匿った。2人は単に運が良かった、その場所が運良く見つからなかったのだ。
アンはそれからカメルン達と一緒に暮らしている。1人で旅を続けるのも無理だし生きる可能性を考えた結果だと言う。
「そうだったのか。何か悪いな、俺はてっきりカメルンとアンは夫婦になる約束していたのかと思っていた」
「ぶっ!! 棟梁、冗談でもやめてよ。
私とカメルンは兄妹なの、カメルンはルルイにいる親戚に預けられて私は母親と一緒に旅をしていたのよ」
「えっ? 兄妹だったの?」
「そうだよ、だから似てるでしょ。考える事や判断の仕方なんかも」
「いやいや、兄妹でルルイで久し振りに会って感動の再会なんて事は無かったの?」
「無いよ、年に1回位は会ってたしね。それにお母さんは京の都の時東 太助 小三郎って偉い人の娘何だって。
私達のおばあちゃんが女中だったらしくてさ、手籠めにされて出来たのが私達のお母さん。
そのお母さんと実田のある国の王様との間に産まれたのがカメルンと私なの。私も名前がアンだけじゃないらしいよ、でも私はみんなからアンって呼ばれていたからそれが名前だと思ってたの」
なんか衝撃、物凄く衝撃を受けた、ちょっと聞いた事を後悔しちゃった。




