105.
「所で、この2人は鬼頭の妻と聞いた。もしかしてその月読みの神職も鬼頭の妻か?」
サネルが何か俺を汚い物でも見るかのような目をする。
その問にハルナと夢がくすっと笑い即座に否定する。
「違う違う。将は私達以外には興味を示さないの」
「そうそう」
ハルナと夢が凄く自慢げに話す。
「そうなのか、実田の男達は複数の妻を娶りその数を競うと聞いた事が有る。すまない思わず鬼頭もそう言う奴かとおもってしまった」
「それは京の都のお上達の話だ。帝の子供を絶やす事が出来ないから複数の妻を娶り複数の子供を産む。
そして生き残った子供の中から次の帝を出す。その為だ。
俺達はこれでも月読みの祝福を受けた夫婦だ。それに俺はハルナと夢が大好きだ、他に目移りすることも無いよ」
月読みの祝福と聞いた時にサネルの顔がパッと明るく変わる、そして興奮しながら話をしだす。
「月読みの祝福を受けたをうけたのは凄い事だぞ。祝福を受けたのは本当か、本当に祝福されたのであれば物凄く凄い事だぞ。
それが本当ならなんて、ハルナも夢もなんて羨ましいんだ。我らの一族にこのような言い伝えが有る。
“世の中には全ての人に赤い糸が結ばれいる。その糸をたぐり解して行くと必ず運命の出会いが待ってる。
その運命の人と結ばれよ。永遠の愛が芽生えるだろう”
私はそのように聞いた。それを示すのが月読みの祝福だとババ様から聞いた事が有る」
ババ様? 愛や菅生の棟梁達が言うババ様じゃないよな。
俺がそんな事を思っているとハルナと夢もババ様と言って呟いていた。
でも菅生の棟梁って日本各地に子供がいたはずだよな、蝦夷と呼ばれた地域に子供がいてもおかしくは無いのかも。
でも、こんなにあちこちに子供を残すような人には見えなかったけど、菅生の棟梁ってある意味凄い人だったんだな。
俺が同じ事をしたら間違い無くハルナと夢に殺さるな、まぁする気も無いけど。たぶんしないと思うけど…たぶんね。
そんな事を考えいるとサネルがジトッとした目で俺を見ている、何か見透かされたのかも知れない。
いやいや、けして無いと信じたいと思う。
うん。
「サネル、少し気になるんだがババ様と言う人はサネル達と同じ一族の人か?」
「いや、違う。ハルナや夢と同じだ。コガネ色の髪で色白の綺麗な人だった。まぁ私が子供の頃に亡くなったがね。
大蔵村の愛と言う人の叔母にあたるとか、一番上の姉に当てるとか聞いた事が有る。私は月読様から呼ばれて大蔵村を目指していた」
「愛様「愛姉の一番上の姉に当たる人で、サネルも月読様に呼ばれたの」」
ハルナと夢がハモった。
これは相当に驚きが有る、もしかと思うがサネルが言うババ様は菅生の棟梁の子供だったのかも知れないな。
菅生の棟梁もかなり長生きしたと聞いた事が有るが、実際に何歳だったんだろうな、でもそれだけ長生きしたなら沢山の子宝に恵まれたのは確かだろうし、もしかすると月読みの神職は菅生の棟梁の血筋だけがなれるのだろうか。
サネルが俺達の反応を見て物凄く驚いている。
「何だ、皆んな揃って。
大蔵村の愛と言う人を知っているのか? 私は菅生 法明と言う人を訪ね神職になる為の修行をしないと行けない。それが月読様からの命令だ」
何か面倒くさくなって来たぞ。つまり、愛はこの事を知ってて俺達に神託を途中までしか伝えなかったと言う事だな。
何が “狼の皮を被る者が現れる。
赤い線を持つ者が鬼を従えた男と出会う、いづれは刀を交える者同士だが
仲良くなれ。女が目覚める時・・・” だ。
全部知ってて俺達には何も言わずにいたんだろう。
お陰でハルナと夢の2人が物凄く機嫌が悪くて大変だったんだぞ。また、俺の回りに女が増えるって。
‘’また増える‘’の意味も良く分からないがアンの事とか、コハルの事を言ってるのだとは思う。
でも俺は種馬じゃないのっての。2人に俺はそんな事はないって説明したが納得してなかった。
俺がハルナと夢の理屈で行くと愛や愛の屋敷の女中さん達とも関係が無いとおかしいだろ、そんな節操無しな事が出来るか。
でも、そうなると愛はどうなる? 愛もハルナと夢にくっついて蝦夷の陸奥と呼ばれる地域に行きたいって言ってたよな、でも愛に代わる神職が出来るなら愛が一緒に行く意味がない。そう考えるのは違うのだろうか?
その意味も合って愛は言葉を濁したのだろうか? それとも神職が同じ時期に複数いる事もおかしい事じゃないのかも知れないな。
けして一つの時代に一人だけと決まった訳じゃないだろう。
そう勝手に思い、勝手に納得してしまった。




