101.
ユンバルが余りに真剣に愛を見つめるもんだから、愛が少し照れてしまっていた。すると夢が冷静にユンバルをなだめる。
「ユンバル、少し落ち着け。それにそんなに強く女の手を握るもんじゃないぞ」
「えっ、ああ。す、すまない」
ユンバルが慌てて愛の手を離すと愛が何故か残念そうな顔をした、それを見たハルナが愛をからかう。
「愛様、良かったね。若い男の熱い視線なんて久し振りでしょ」
ゴン!! 「いったぁ(泣)」
「ハルナ、変な事を言うもんじゃ無い、余計な事ばかり言っていると分かってるだろうね」
「ハイ、ごめんなさい」
そんなハルナと愛の寸劇を呆けた顔で夢と俺、ユンバルが見ていた。
「ユンバルと言ったな。付いて来い。私がこれから神事を執り行なう」
「えっ、何を言っている?
俺が聞いた月読みの神職はかなり歳上のヨボヨボのおばさんだと聞いたぞ。
それが貴女のような若い、しかも綺麗な女性が神職なわけが無いだろ。いくら俺が田舎者でもそんな事に騙されたりはしないぞ」
ユンバルが真剣に愛。見つめて言うと立ち上がり辺りを回りをを探し始める。
「月読みの神職様は何処だ?」
「ユンバル。この愛が正真正銘、月読みの神職だ」
「はっ、鬼頭だったな。お前まで俺をからかって、って。そん・な・・・。
う、うっそ!?」
俺達の余りに真剣な顔にユンバルが驚き完全に固まる、そのユンバルの顔を見て思わず吹き出しそうになる。
さらに俺とハルナ、夢を見て顔を真っ青にして、愛の足元めがけユンバルがジャンピング土下座を決め込んだ。
驚く程に土下座が早い、このユンバルと言う男は相当やらかす奴なのだろうな、だって余りにも謝りなれている。それは愛も同じように思ったのだろう、少し顔を引きつらせていた。
「す、すみませんでしたぁ―」
さらに余りに慣れたユンバルの謝罪の言葉に少し愛が苛つきを覚えたようだ。だよな、愛は見た目こそうら若き乙女だけど、孫がいてもおかしく無い年だしな。
そんな事を思っていると愛に睨まれてしまい、そっぽを向く。
「ユンバル、ヨボヨボなおばさんじゃなくて悪かったな」
うん、やっぱり愛は苛ついたみたいだ、棘がある言い方をする。
「と、とんでもございません。わたくしのような田舎者の言葉など気にならさらずにお願いします。
貴女のような若い、それも美しい女性だとは本当に思っておりませんでした」
ユンバルは土下座を崩さずに愛に謝る。
「う、美しい。そんな…、コホン」
少し愛が照れたように顔を赤らめる。
「まぁ良い。始めて月読みの神職を見た者は皆同じ反応をする。
それに、美しいだなんて。いっ、言った奴はめ、珍しいぞ」
途中からゴニョゴニョと言葉を濁してしまったが、俺のスキル言語理解は見逃さなかった。愛の奴、完全にデレたぞ。それもだいぶ年下になるだろうユンバルにだ。
だが、俺以外には聞き取れなかったようで、他の奴らは皆んな頭から?を出して愛を見ている。
「ほ、ほれ行くぞ。ユンバル、お主が来ないと神事が出来ない」
愛がユンバルの肩に手を乗せてユンバルを促す。
「は、ハイ!!」
ユンバルが、ここぞとばかりに尻尾をブンブンと振って愛に付いて行く。その姿は本当に小さな仔犬に見えて来た。今、絶対に自分の可愛いを前面にだして、受入られようとしている仔犬を演じていると思っているはずだ。
ユンバルめ尻尾をブンブンと振り回して愛に付いて行ってるぞ、俺はそれを見逃さない。
でも声に出して馬鹿にしたりとか、愛をからかったりするのは怖いので、俺の心の中でしっかりとユンバルに “お前犬か” そう突っ込んでおいた。
そう、だって愛は怖い。
少しでもからかったりすると、物凄く良い笑顔で股間を蹴り上げて来るのだ。その時の愛は完全に容赦無い、こう言う時の愛は全ての男の敵だと俺は思う。
うん、あくまでも俺調べだ。あくまでもだ。怖くてそんな事を本人に聞くわけにもいかないし、他の男衆に聞いても皆顔を青ざめるだけだし、当然ハルナや夢に聞く事も出来ないし。
だってちょっと聞くのが怖いんだもの。
俺がふざけた事を考えていると、俺を無視して皆んな祭壇に入る。祭壇に付くと先ほどまでのふざけ雰囲気が無く、急にピンッと張った緊張感に包まれる。
それは尻尾を振りながら付いて行ったユンバルも、その変化に動けなくなっていた。
愛は部屋の松明の明かりに照らされ、より神秘的にその姿をうつし、その愛の姿を見た者は皆んな心を奪われる程に神々しく神秘的で美しい姿をしていた。
「こ、これが月読みの神職」
ユンバルが愛の変化に驚きの声を上げていた。




