100.
俺達のやり取りをニヤニヤとしながら愛が眺めている。そんなに楽しいものかね。
倒れた人に薬草粥を食べさせていた女中さんが来る。
「愛様、全て食べました」
「わかった、今は?」
「ハイ、お腹が満たされたのか寝てしまいました」
「わかった、悪いが私達の分の飯もお願い出来るか」
「ハイ」
この日は愛の屋敷で朝飯を頂く。
まぁ、女中さん達からしたら普段から朝飯を家まで持って来てくれているからやる事は変わらないとは思うけど。
我々も朝飯を食べ、今日の予定を話し合っていると女中さんに連れられて助けた人が来る。
部屋に入ると直ぐに土下座して愛に頭を下げる。
「俺の言葉は分かるかい?」
「ハイ、助けて頂き感謝しています」
「あそこで何をしてたの?」
ビクッ。助けた人が震えてしまう、そんなに不味い事を聞いたかいな。
言葉を変えて蝦夷のカンバラと話した言葉使う、スキル言語理解さん上手く働いてちょうだいね。
「これなら、話せるか?」
助けた人が驚いて俺を見る。どうやら蝦夷のカンバラと話した時の言葉がちゃんと出たみたいだ。スキル言語理解さんに感謝だ。こう言う使い方した事無かったから、使えるかどうか不安だったんだよね。
「我々は詮索するつもりは無い。たが村の入口で人が倒れているとどうにもな、面倒な事にはなっていないが何をやってか位は聞いても問題無いだろう」
「俺はムミューマの出だ。カンバラに付いて女達を追ってきた」
「俺もカンバラに会った。盗賊達を調べたんじゃないのか?」
「ああ、仲間はだいぶ見つかってムミューマに帰った。だが後1人が見つからない、だからその1人を探していた」
「ひょっとして、仲間とはぐれたのか?」
「違う」
悔しそうに顔を歪ませそのまま何も言わなくなってしまう。
「俺は鬼頭 将だ。後ろの2人は俺の妻だ」
「俺はカンバラの弟、ユンバル。妻達は大事にしろ、奴ら女子供をさらい何処かの国に売り捌いていやがる」
そう言うと立ち上がろうするがそれを抑える。
「ゆっくりしていけ、後でルルイの合った場所まで連れて行ってやる。あそこまで行けば自力で帰れるだろ」
「有り難いが断る」
「そんなふらふらな奴が援軍に来ても来られた方が迷惑だろ。
それに何処に行けば助けられるのかも分からない状態で何処に行くつもりだ?」
俺の言葉がずぼしだったようで立ち上がるのを止めてしまう、それからユンバルに聞いた内容を愛達にも伝える。
ハルナと夢は話の内容よりもユンバルが男だとわかった事の方が大事だったようだ、かなりホッとしたのか急に優しい顔になる。
「それで、ユンバルは何処に行くの? 私達はルルイの合った場所付近に用事が有る、良ければ一緒に行かない?」
「そうだよ、1人で出来る事は限られている。こう言う時は一度戻って出直すのも一つの手だよ」
ハルナと夢達はカメルン達の所に行きたいだけだと思うが、ユンバルを強く説得していた。
「俺はその前に月読みの神職に会わないと行けない。会って奪われた女が何処にいるか聞かないと行けない、悪いがここからは俺一人で行動する」
ユンバルが頑なに俺達との行動を拒否し続ける。余程大切な人が拐われたらしい、勝手にそう解釈した。
おまけに月読みの神職が目の前にいるのに、その月読みの神職を探すと言う。何処で聞いたか知らないが月読みの神職は蝦夷と呼ばれる地域の人達にも浸透しているようだ。
「で、ユンバルは月読みの神職が何処にいて誰なのかは知ってるのか?」
俺の問に悔しそうに黙ってしまう。
「なぁ、ユンバル。悪い事は言わない。少し俺達を信用して話してもらえないか? 何かしら手伝える事があると思うぞ」
「はぁ、俺は何時もこうだ。何をやっても上手く行く事が無いな。盗賊達に捕まり捕らえられた女は俺の義姉に当たる。そしてカンバラの妻だ」
ユンバルがそう言うと事の流れを話し始める。
ユンバル達が暮らす地域に行商を装った盗賊達がやって来た。最初は普通の行商で、売り買いが終ると村の人達に酒を与え仲良くなり始めた。
その内、村の人達が消える事件が起きる。その一報を聞いたカンバラ達は村人を探し出す、すると行商でやって来ていた奴らが何処かの国の奴らに捕らえた者達を売り飛ばしているのが分かる。そしてその中にカンバラの妻も混じっていた事がわかった。
捕まった村人を見つけては買い取った奴らを捕らえ、村人を解放すると言うことを繰り返していると、ルルイの近くにいる盗賊達が身売りで生計を立てていることがわかった。
そこでカンバラを中心とした兵士達で盗賊を攻め立てると、捕まった者達ほぼ全てを助ける事が出来た。
所が唯一、カンバラの妻だけが何処にもいないのだ。
盗賊達の話では、何処かの偉い奴が買い取ったらしくそこに送った。そう言う話だった。
「だから、俺は月読みの神職に会わないと行けない。会って姉さんのい場所をつきとめ姉さんを助けないと行けない」
ユンバルが立ち上がりそう宣言すると、今度は土下座して俺達に頭を下げる。
「だから頼む、月読みの神職を知っているなら紹介して欲しい。
俺の命で良ければいくらでもくれてやる、それでも姉さん助けてカンバラを救ってやりたいんだ」
「良いよ。そこまで言うなら」
「本当か?」
愛の言葉にユンバルが頭を上げて愛の手を握り真剣な眼差しを向ける。




