✦ 8話 守られる側から ✦
夜も更け、家の中は静まり返っていた
勉強道具もすっかり片付いて、
陽向は眠そうに目をこすっている
「もう寝る?」
紬が聞くと、陽向は小さくうなずいた
「……うん」
二人で電気を消し、布団を並べる
陽向は先に布団へ潜り込んだ
「つかれた……」
紬はその様子を見て、少しだけ笑う
「今日はちゃんとやったもんね」
陽向は布団の中から、ちらりと紬を見た
「……紬」
「なに?」
「おやすみ」
少しだけ安心した声
紬は枕元に腰を下ろす
「うん。おやすみ」
そっと前髪を整える
「ちゃんと寝なよ」
陽向は目を閉じかけながら、もう一度だけ口を開いた
「……明日も」
「ん?」
「教えてくれる?」
紬は小さく笑う
「もちろん」
少しだけ間を置く
「ちゃんとやるならね。見るから」
陽向は小さく息を吐いて、そのまま眠りに落ちていく
規則正しい寝息が聞こえ始めた
紬はしばらく、その寝顔を見つめていた
(ほんと、手がかかるな……)
でも、不思議と嫌じゃない
むしろ、少しだけ胸があたたかくなる
紬は立ち上がり、足音を立てないように部屋を出る
扉を閉める前、もう一度だけ振り返った
「おやすみ」
小さくつぶやく
その声は、どこかやわらかくなっていた
(こんな気持ち、初めてかもしれない)




