✦ 7話 少しだけ、強くなる ✦
夜。
机の上の勉強道具が、ようやく片付いた
「おしまい」
紬がノートを閉じる
陽向はそのまま机に突っ伏した
「……つかれた」
小さく息を吐く
紬はその様子を見て、少しだけ目を細めた
「今日はちゃんとやったじゃない」
陽向がゆっくり顔を上げる
「……ほんと?」
「うん。さっきの問題、自分で解けてたし」
紬は軽くうなずく
「ちゃんとやればできるってこと」
陽向は少しだけ安心したように、肩の力を抜いた
少し沈黙が流れる
紬はふと思い出したように言う
「そういえばさ」
机の端に置いてあった小さな箱を指さす
「それ、まだ持ってるんだ」
陽向は一瞬だけ固まる
「……うん」
少しだけ恥ずかしそうに目をそらす
「小さい頃のやつ」
紬は箱を開けて、中を覗いた
「懐かしい」
くすっと笑う
「昔、これでよく遊んでたよね」
陽向も少しだけ笑う
「……覚えてる」
紬は人形を軽く手に取って、すぐに戻した
それ以上は触れない
「ねえ」
紬が言う
「今日はよく頑張ったからさ。少し休憩しよ」
陽向は小さくうなずく
「……うん」
紬は立ち上がり、台所の方を見る
「ジュースでも持ってくる」
歩き出しかけて、ふと振り返る
陽向がこちらを見ていた
さっきより少しだけ、不安そうに
紬は軽く息をつく
そして戻って、ぽん、と頭に手を置いた。
「大丈夫。ここにいるよ」
短く言う
「ちゃんと見てるから」
陽向は一瞬だけ目を見開いて、
それから、小さくうなずいた
「……うん」
紬はそのまま数秒、手を置いたままにした
自分でも、少し不思議だった
(なんでだろ)
ただの延長のはずなのに
勉強を見て、少し世話を焼いているだけ
それだけのはずなのに
手の下の温もりが、少しだけ愛おしい
紬はそっと手を離した
「じゃ、飲み物取ってくる」
何でもないように言って、背を向ける




