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妹が、お母さんになる日 ―ここにいれば、大丈夫―  作者: つむぎ日和


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✦ 13話  はぐれても ✦

放課後


帰り道の途中、駅前はいつもより人が多かった


「ちょっと寄ってく?」


紬が振り返って言う


「うん」


陽向は頷いて、あとをついていく


夕方の人混み


行き交う人の流れに、少しだけ足が遅れる


紬の背中が、少しずつ遠くなる


(……あ)


気づいたときには、もう見失っていた


一瞬、胸の奥がざわつく


周りは知らない人ばかり


声も、足音も、全部が遠く感じる


なのに、周りの声だけがやけに近い気がした


(どうしよう)


立ち止まりそうになる


前なら、きっとそのまま動けなかった


でも——


陽向は一度、ぎゅっと拳を握った


深く、息を吸う


(落ち着いて)


さっき歩いてきた道を思い出す


駅の入り口

右に曲がって、紬は確か……あの角を——


視線を上げる


人の流れの向こう


(……あっちだ)


歩き出す


少し早足


でも、走らない


心臓の音がうるさい


それでも、止まらない


角を曲がる


視界がひらける


その先に——


見慣れた後ろ姿


紬が、立ち止まっていた


少しだけ周りを見渡している


陽向は、足を止める


少しだけ息を整える


そして——


「紬」


呼びかける


紬が振り返った


一瞬、驚いた顔


「……あれ?」


陽向は少しだけ近づく


「はぐれた」


短く、それだけ言う


紬はじっと陽向を見つめる


そして、小さく息をついた


「……そっか」


少し間


「ちゃんと来れたんだ」


その声は、いつもより少しだけやわらかい


陽向は、こくんと頷く


紬は一歩近づく


でも、手は伸ばさない


「探した?」


「うん」


「迷わなかった?」


少しだけ考えて、


「……ちょっとだけ」


紬はふっと笑う


「上出来」


その一言に、胸の奥がじんわりと温かくなる


紬は軽く肩をすくめる


(でも、ちゃんと来れたのはすごい)


「次は、はぐれないでよ」


少しだけ、いつもの調子


陽向は小さく笑った


「……うん」


二人は並んで歩き出す


さっきより、少しだけ距離が近い


でも——


手は、つながない


人混みの中。


陽向は前を見て歩く


(……ちゃんと、大丈夫だった)


心の中で、そっと確かめる


隣には、紬がいる


でも——


ひとりでも、動けた


紬がいなくても、ちゃんと前を向けた


その小さな実感が、胸の奥に残っていた


夕焼けの光が、二人の影を並べて伸ばしていた


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