✦ 11話 離れる場所 ✦
朝の道を、二人で歩いていた
少しだけ、静かな時間
紬はちらっと横を見る
「どうしたの?」
陽向は少し迷ってから言った
「……今日の学校、ちょっと不安」
紬は小さく笑う
「めずらしいね」
少しだけ間を置いて
「大丈夫でしょ」
軽く言う
道が分かれる場所に来る
紬は足を止めた
「ここまでね」
陽向も立ち止まる
少しだけ視線が下がる
「……ちゃんと行ける?」
紬が聞く
陽向は少しだけ考えてから、
「……うん」
と答える
でも、その声は少しだけ弱い
紬はその様子を見て、小さく息をつく
(さっきから落ち着かない顔してるし)
ポケットからハンカチを取り出した
「はい」
陽向が顔を上げる
「これ、貸してあげる」
「え?」
「不安なんでしょ」
少しだけ笑う
「持ってなよ」
陽向はそれを受け取る
「……いいの?」
「返してもらうからね」
軽く釘を刺す
紬は一歩下がる
「じゃ、行ってきな」
いつもの調子
陽向はハンカチをぎゅっと握る
少しだけ深呼吸して、
前を見る
数歩進んで、立ち止まる
振り返る
紬は軽く手を上げる
「がんばりな」
陽向は小さくうなずく
「……行ってきます」
もう一度前を向く
さっきより、少しだけしっかりした足取りで歩き出した
手の中のハンカチが、少しだけあたたかい気がした




