✦ 10話 並んで立つ朝 ✦
陽向が部屋から出てくると、
洗面所の前で紬が顔を上げた
「起きた?」
「……うん」
まだ少し眠そうな声
紬は歯ブラシを指さす
「そこ。ちゃんとあるでしょ」
「あ、ほんとだ……」
陽向は少し安心したように笑った
鏡の前に並ぶ
陽向が歯を磨き始めると、紬は後ろからちらっと様子を見る
「ちゃんと奥までやりなよ」
「やってるよ」
「ほんとに?」
「……たぶん」
紬は小さく笑う
「ほら、左」
「はいはい」
台所では母・沙織が朝食を並べていた
三人で席につく
「いただきます」
食事が始まる
紬の視線が、ふと陽向の手元に落ちる
「牛乳、残してる」
「あとで飲む」
「今飲んだほうがいいでしょ」
少しだけ間
陽向はしぶしぶコップを手に取る
「……はい」
紬はそれを見て、小さくうなずく
沙織が楽しそうに笑う
「紬、ほんとによく見てるわね」
「まあね」
紬は軽く肩をすくめる
「ちゃんと食べて、ちゃんとやる」
紬がぽつりと言う
「それだけでいいから」
陽向は少し驚いたように顔を上げて、
「……うん」
と小さく答えた
食事を終えて、玄関へ向かう
沙織が呼び止める
「陽向、ちょっと待って」
襟元を整えてあげる
「はい、これでよし」
陽向は少し照れくさそうにする
紬はその様子を横で見ていた
少しだけ、何か言いかけてやめる
(言わなくても、伝わってる気がした)
「行くよ」
短く声をかける
陽向はうなずく
「……うん」
二人で並んで、外へ出る




