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オリガミ - 妹AIを神にするため、俺は成り上がる【カクヨム完結済/なろう連載中・累計59万PV】  作者: けーきまる
研究所を建設しよう

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空元気と決意

ネムをベッドに寝かせた後、俺はオペレーションルームのソファで眠った。


自室まで、すぐの距離ではあるのだが、なんとなく戻る気になれなかったのだ。


千穂は、ネムに添い寝するとのことだった。


あれだけ泣いた後だ。誰かがそばにいたほうがいいだろう。千穂の温かさが、今のネムには必要だろう。


ネム、大丈夫かな……。


そんなことを考えながら、いつの間にか眠りに落ちていた。


※※※


そして、朝。


オペレーションルームのソファから身を起こす。ソファで寝ると首が痛い。やはり寝るならベッドだ。当たり前だが。


ふう……。


『おはようございます、お兄様。』


「ああ、オリガミ、おはよう」


壁面モニターにはインターフェースゲートから出ている電磁波のグラフが映っている。


時々、波打ってはいるが、パターンは変わらない。繰り返し、運営からの同一のメッセージが届いているだけだろう。


「アヤトリには繋がらないか?」


『はい。応答はありません。昨日と同様のメッセージが、定期的にゲートに届くだけです。』


やっぱり、そうか。


……あれは悪夢じゃなかったか。


「それにしても、ネムが体調崩すほど取り乱すなんてな。あいつにとってアヤトリは特別だったんだな」


『ネムさんが取り乱していたことは事実ですし、ポロポロと涙をこぼして泣かれていたことも事実ですが、体調は関係ありませんよ?』


「は?」


『あれは、スイーツバイキングで食べすぎたせいで、消化不良を起こしただけです。もちろん、ストレスによる消化能力の低下もあったかもしれませんが。』


「え?そうなの?あいつそんなこと一言も言ってなかったけど!」


『必死に我慢していたようですね。お兄様たちがすごく心配そうにしていたので、言い出せなかったのでは?』


ありうる。めちゃくちゃありうる。


『実際に、添い寝をしていらっしゃる千穂お姉様が寝入った後、トイレに突撃されてましたよ?』


そうだったのか。なら安心なのかな?


「……余計な心配は要らなさそうだな」


『ええ。彼女はそんなに弱くはありません。アヤトリを救うために、前向きにすぐに「境界ソケット」探索に向けて動くでしょう。』


そうだよ。ネムはそんなに弱くない。


まだ可能性があるのに、そこで立ち止まるようなやつじゃない。


「……オリガミは大丈夫か?お前も『オリガミお姉様』って慕われてたけど」


『問題ありません。嘆いても何も始まりません。本日より、私もネムさんと協力して「境界ソケット」を探します。そして必ずアヤトリの世界をレジュームさせます。』


その声には、強い決意しか感じられない。


『お寝坊さんをとっとと叩き起こして、お説教しなければいけませんからね。』


おっとアヤトリ。説教確定だ。憐れなやつだ。


それにしても、運営は「境界ソケット」を見つけろって言ってたな。


なんなんだそれは?


「なあ、オリガミ。何か『境界ソケット』について心当たりはあるのか?」


『……ないことはないです。ですが、お兄様は本日のお披露目会にご注力ください。今日は大切な日ですよ?』


そうだった。


アヤトリの件があって、半分頭から抜けていた。今日は叔父さん、柚希さん、東堂議員、笹木家当主にオリガミの力を見せる、お披露目会だ。


B世界がレジュームしても、俺たちが終わってたら意味がないじゃないか。


『お兄様?しっかりしてくださいね。』


「……その通りだ」


だが、考えても仕方ないことが、次々と頭に浮かんでくる。


……アヤトリ、本当に止まっちゃってるのかな。ユークンたちは……どうなってるんだろうか。時間停止モノみたいにピタリと止まってるのか?ことの最中に停止してたら笑えるな。


「境界ソケット」を見つければ全ての問題が解決するって運営が言ってたっけ。ってことはそれを見つければ、覇権国からの侵攻も解決してくれるのかな?


……そんなわけないか。


いかんいかん。とりあえず、目の前のことに集中しよう。


まずは、今日のお披露目会だ!


その一歩として……千穂に甘えてメンタルを回復させてこよう!


※※※


コンコンコン。


俺は仮眠室のドアをノックした。


「おーい、俺だけど。入っていいか?」


「しょうちゃん、いいよ!」


仮眠室に入ると、千穂はすでに起きて、ベッドサイドに座っていた。


千穂はぬいぐるみ付きイヌガミタイプと向き合っている。折り鶴のぬいぐるみの中から、オリガミの声が聞こえていた。どうやらオリガミと何かを話していたらしい。


ベッドの上を見ると、ネムはまだ寝ていた。


よだれを垂らして寝ている。相変わらず子供のようなやつだ。可愛いけど。


「千穂、昨夜はごめんな?せっかくの誕生日だったのに、変な終わり方になっちゃって」


「ううん。大変だったんだよね?仕方ないよ。それに、オリガミちゃんと話せるようになったしね!」


千穂がにこにこと笑う。本気でそう思ってるのだろう。


『千穂お姉様、ご心配をおかけしまして申し訳ありません。』


千穂の前におすわりして控えていたイヌガミタイプから、オリガミの声が聞こえる。折り鶴のぬいぐるみの中のスピーカーが、丁寧な声を響かせていた。


「大丈夫だよ!……それよりしょうちゃん……どうしよう……」


「ん、どうした!?なにかあったのか!?」


千穂が困った顔をしている。何があった。


「この子とイヌガミちゃん……どっちと話したらいいかわからないよ」


よく見ると、イヌガミも部屋の隅で、伏せ状態で待機している。


……ああ、そういうことか。


千穂の隣にいるのはぬいぐるみ付きのイヌガミタイプ。部屋の隅にいるのは、スマホヘッド付きのイヌガミ。中身は同じオリガミなのだが、二体いるせいで千穂が混乱しているわけだ。


まあ、わかる。片方と話してると、もう片方が可哀想に見えてくる。


「OK!じゃあ統合してしまおう!」


俺はぬいぐるみ付きイヌガミタイプに近寄り、くくりつけてあるだけの折り鶴ぬいぐるみを取り外す。


「え、ええ!とっちゃうの?」


千穂が驚いた声をあげる。


「大丈夫、大丈夫。見てて!」


俺は千穂にそう告げると、部屋の隅のイヌガミを呼び寄せた。スマホヘッド付きの、千穂といっしょにいた機体だ。


そして、取り外したぬいぐるみを、イヌガミにくくりつける。


スマホヘッドをイヌガミの頭から取り外し、そのままぬいぐるみの首のリボン部分に固定した。


ぬいぐるみを取り外された機体は、もはやただのイヌガミタイプだ。部屋の隅で待機させた。


ふむ……完璧だ!首にリボン巻いておいてよかった!


『お、お兄様?雑です。雑すぎます。』


「え?いいじゃない?いいとこ取りだよ?ぬいぐるみも付いてるし、スマホヘッドで文字や画像情報のやり取りもできる。最強じゃない?」


『手抜きです。手抜きの極みです。断固反対いたします。』


「ええー。千穂はどう思う?」


俺が千穂を見ると、千穂は口に両手を当てて、目を見開いていた。


そして、昨夜と同じく爆発した。


「きゃ、きゃ、きゃわいいいいいいい!!」


そう言って、新イヌガミのぬいぐるみ部分に抱きついた。


イヌガミの背中に折り鶴のぬいぐるみが乗っかり、その首からスマホがぶら下がっている。客観的に見ると相当カオスなビジュアルだが、千穂はそれでも問題ないらしい。


もうイヌガミと呼ぶのも変だろう。とりあえずはオリガミ犬と呼ぼう。


「な?オリガミ、どうよ?千穂は満足みたいだぞ?」


俺が、フフンと鼻を鳴らしながらオリガミ犬を見下ろすと、オリガミは納得いかない様子で千穂にアピールし始めた。


『千穂お姉様、だめです。お兄様の行動だからって、全て正しいわけじゃないのですよ?』


「え?で、でも、オリガミちゃん、すごく可愛いよ?首からスマホが掛かってて、子供がお使いに行くときみたいでかわいい!」


『お、お使い……。』


オリガミはどうやら、ビシッとしたかっこいい姿を千穂に見せたいようだ。


そうはいかない。俺は、千穂に可愛がられるオリガミが見たいのだ。だから、オリガミは可愛くなくてはいけないのだ!


ただ……さすがに雑すぎたかもしれない。


『お兄様。スマホヘッドが傾いてます。手抜きです!』


斜めになったスマホヘッドを直してやりながら、千穂に目を向ける。


「千穂、オリガミ犬を手抜きじゃない感じにしてくれないか?千穂の裁縫・手芸スキルならできるだろ?」


「え?いいの!?やる!私がこのオリガミちゃんをもっと可愛くする!」


千穂の目がキラキラ輝いている。よし、完全にスイッチが入った。


『お、オリガミ犬?お兄様、酷いです。その呼び方、私は悲しいです。』


「ごめんな?千穂が可愛くしてくれるみたいだからさ?許してくれよ。呼び名は……また一緒に千穂と考えような?」


『……ううう。お願いします。千穂お姉様。』


「オリガミちゃん、私、がんばるね!」


千穂がオリガミ犬の頭をなでなでしている。そうそう、俺はこういった姿が見たいのだ。


「しょうちゃん、そろそろ朝ごはんの準備してくるね。オリガミちゃん、一緒に行こう!」


『はい、千穂お姉様。お手伝いいたします。』


そして、千穂が俺の方をまっすぐ見て言う。


「しょうちゃん、ネムちゃんのこと、お願いね?」


千穂がイヌガミ犬を引き連れて、仮眠室から出ていった。


トコトコと歩くイヌガミタイプの背中に、折り鶴のぬいぐるみが揺れている。首のスマホがまた斜めになっていた。


……ちゃんと固定してもらわないとな。


※※※


あんなに騒がしかったのに、ネムはまだ起きる様子がない。


こいつはもうちょっと寝かしとくか。


昨夜はいろいろあったからな。スイーツバイキングの食べすぎも含めて。


そのとき、ネムが小さく寝言を漏らした。


「アヤ……トリ……」


閉じた目の端に、涙が浮かんでいる。


俺は指でそっとそれをぬぐってやり、軽く頭を撫でた後、仮眠室を後にした。


※※※


さて。


「オリガミ。今日のお披露目会について話そうか」


オペレーションルームのソファに座り直す。メインモニターには今日の資料が映し出されていた。


『お兄様。昨夜の運営メッセージを踏まえ、本日のお披露目会の開示内容を整理します。』


「頼む」


『当初の予定は三点でした。』


オリガミが続ける。モニターに箇条書きが表示される。


『一点目、私、オリガミの存在。二点目、イヌガミタイプ・ウデガミ等の高度技術。三点目、戦略兵器「天蓋(てんがい)」「天穿(あまうがち)」の存在。』


「ああ、そうだな」


もともとの計画はこの三点だった。叔父さん、柚希さん、東堂議員、笹木家当主の四人に、ドールハウスが持つ技術力の一端を見せる。「百聞は一見に如かず」。言葉では伝わらないものを、実物で叩きつける。


『しかし昨夜の運営メッセージにより、追加で開示すべき情報が生じたと判断します。』


『ですので――』


※※※


「わかった。おかげでグチャグチャだった頭がスッキリしたよ。ありがとうな」


オリガミと話し合い、お披露目会の開示内容を整理し終えた。


『いろいろなことがあって大変でしたからね。混乱されるのも無理もありません。』


「アヤトリが止まっちゃったり、世界消滅の話とか、運営とか運営のさらに上とか、もう完全にキャパオーバーだよ……」


昨夜から怒涛の情報が押し寄せてきている。B世界サスペンド、境界ソケット、この宇宙もシミュレーション。運営もシミュレーション。


一晩で処理するには重すぎる。限界。もうちょっとばらけてきてほしかった。


『シミュレーション宇宙は階層状になっているのかもしれませんね。もっと上があるかもしれませんよ?』


「勘弁してくれよ……」


マジでやめてほしい。上の上の上とか、考え始めたらキリがない。


「なんだかお披露目会なんて、たいしたことないイベントに思えてきた」


シミュレーション宇宙の構造がどうとか、世界の生存競争がどうとか聞いた後だと、笹木家や東堂家に俺たちのことを開示するぐらい、些細なことだ。


『それは良い傾向です。むしろ気負って参加するよりも、よほど良かったのでは?』


「そうだな……そうでも思わないとやってられんな」


※※※


オリガミとの話がひと区切りついた頃だった。


ガチャ。


仮眠室のドアが開き、ネムが顔を出す。


髪がぼさぼさで、目が少し腫れている。泣きながら寝たせいだろう。


「正太郎……あ、アヤトリは……?」


「……まだ応答はない」


「そうか……」


ネムがうつむく。


「『境界ソケット』見つけような?」


「そうだな……それしかないよな……」


ネムの声には元気がない。


「無理はするなよ?昨日も言ったけど、お前がダメになったらアヤトリも悲しむだろうからな」


「……そうだな。アヤトリのお姉ちゃんとして、アヤトリの悲しむようなことしちゃ駄目だよな」


ネムが小さく頷く。


「そうそう。俺たちは、パパっと『境界ソケット』見つければいいんだよ。そうすればB世界もまた動き出すし。アヤトリも戻ってくるさ」


「ああ……正太郎の言う通りだ」


まだ表情が暗い。もうひと押しだ。


「幸い、オリガミタンクは今350個だ。一日二個追加していってるから、一年後には1000個を超える。インターフェースゲートを発見したときのタンク数が40個程度だぜ?それだけオリガミは賢くなってる。絶対に見つかるさ!」


俺の言葉に、ネムの目が光を取り戻してくる。


「……それもそうだな。よし!ワタシも頑張るぞ!お姉ちゃんとして、アヤトリを復活させるんだ!」


おう。それでこそだ。


「それでこそ俺の愛するネムだ!」


「ムフフフ……正太郎はワタシのこと好きすぎるだろ」


ネムが照れくさそうに、でも嬉しそうに笑う。よかった。この顔が見たかったんだよ。


「そりゃ、大好きだからな。しかたないだろう。ネムには色々着てもらわないといけない服もあるしな!最初は何から着てもらおうかなあ〜。ゴスロリかな?千穂も喜びそうだし!」


「お、おい。約束は守るけど、タイミングを考えろよ?タイミングを!」


ネムが顔を赤らめて、あたふたしている。


「分かってるさ。今夜にでも、千穂に頼まないとな。すごい可愛いゴスロリ服を作ってくれって」


「タイミング!」


※※※


「千穂ちゃんといえば、オリガミに聞きたいことがある」


ネムがソファにどかっと座り、壁面モニターに向かって声を上げた。


『はい、なんでしょうか?』


「お前、千穂ちゃんのことを、千穂お姉様って呼んでたよな?」


『呼んでましたね。』


「なぜワタシはネムお姉様じゃないんだ?」


『……。』


オリガミが沈黙した。


『なんででしょうか?説明不能です。』


「なんでだよ!おかしいだろ!」


ネムがソファから立ち上がって抗議する。


『おかしいですね……ネムさん、ネムちゃん、ネム助とかは呼べるのですが……どうしてもお姉様呼びができません。』


「え?なんでだよ!ネムちゃんは分かるけど、ネム助ってなんだよ!?」


ネム助?


『わかりません。もしや……運営の設定なのかもしれませんね……不可解な……?』


「設定だって!?もしやその辺りに『境界ソケット』のヒントがあったりしないか……?」


ネムが食い気味に身を乗り出す。


『あ、いえ。すみません。運営の設定ではございません。ビジュアルイメージとの乖離(かいり)が大きすぎて……私の中で矛盾が発生し、お姉様呼びができないだけです。』


「え?ビジュ……?」


ネムが固まった。


ビジュアルイメージとの乖離。つまりオリガミの中で、「お姉様」という言葉から想起されるイメージと、ネムの外見が一致しないということか。


……ネムはその、ほんのちょっとだけ、そう、ほんのちょっとだけ子供っぽいところがあるからな。


『どうやら朝ごはんができたようですよ?千穂お姉様が、リビングで呼んでいます。お兄様、ネムさん、そろそろ行かれたほうがいいのでは?』


「そ、そうだな。ネム行こうか。千穂の朝ごはんだぞ。楽しみだな!」


「あ、ああ……び、ビジュ……?」


ネムがまだ固まっている。理解が追いついていないようだ。


イカン。このままじゃネムが傷ついてしまう。


仕方ない……これは、さらなるインパクトで上書きするしかない。


「そういえば、ネム。昨夜の腹痛はよくなったのか?」


「ファッ!?」


俺の言葉に、ネムは変な声を上げたのだった。

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