天穿(あま・うがち)
九時間の折り紙バトルを終えて、東堂邸を出たのは深夜だった。
帰宅して、シャワーを浴びて、自室のベッドに倒れ込む。
疲労がすごい。全身の筋肉がバキバキだ。特に指。九時間ぶっ通しで紙を折り続けた代償が、じわじわと押し寄せてくる。
だが、心地いい疲れだ。俺はやりきったぞ!
天井スピーカーから、オリガミの声が降ってくる。
『お兄様、お疲れ様でした。配信、大成功でしたね。』
「ああ。本当に楽しかった。やっぱり競い合える相手がいるっていうのは違うな」
折り紙って基本、一人の作業だ。設計して、折って、完成。その繰り返しだ。
それが、目の前に同じ熱量で折る人間がいるだけで、こんなに違うものなのか。
『折り紙をされていたときは、いつもお独りでしたもんね。ボッチでしたもんね。』
「ボッチ言うな」
孤高と言ってくれ。
「それに、たまに父さんが一緒にやってくれてたぞ。気付いたら隣にいなくなってたけど」
『あれは、お兄様が集中しすぎて、何時間もお父様のことを無視するからですよ。』
「……え、マジで?」
『何度もお兄様に話しかけてましたよ?無視され続けて、なんだかお父様、しょぼくれた顔をなさってました。』
……そうだったのか。
思い出してみれば、確かに。折り紙を始めると周りが見えなくなってた気がする。父さんが隣で何か言ってたこととか、耳にも入ってなかった。
「申し訳ないことしたなあ……」
謝れるうちに、言っておけばよかったな。
『でも、お兄様も成長されましたよ。弟子を取り、折り紙をしながら配信をするなんて器用なことを……あの頃のお兄様では考えられない快挙です!』
「ま、まあ、それはいいじゃない。これでオリ子の炎上は鎮火したろうし、俺や綾の折り紙への矜持も守られた。すべてうまくいった!」
※※※
『ええ、素晴らしい成果です。』
オリガミの声のトーンが、少し変わる。
『東堂議員は、愛娘である綾さんの炎上を目の当たりにしておられました。それを、お兄様がご自身の身体を張って解決に導かれたのです。』
「……まあ、そうだな」
『のみならず、九時間にも及ぶ配信の中で、綾さんの才能を正当に評価し、師匠として全力で向き合うお姿をお見せになりました。』
『結果として、名門である東堂家から本気の結婚を打診されるほどに、「この男になら娘を任せられる」と深く確信させることに成功しております。』
『さらには、綾さんの心も掴んでおります。お兄様との結婚は、愛娘の希望でもあるのです。』
『おまけですが、過去に東堂勇気さんも助けておりますよね。息子も娘も、お兄様に恩がある。』
『これは、政治家としての東堂議員ではなく――父親としての東堂正人の絶対的な信頼を得ることができたと言えるでしょう。七月八日のお披露目会に向けて、計り知れない価値があります。』
……やっぱりか。
「全部、オリガミの思惑通りだったわけ?」
『それは違いますよ?』
オリガミの声が、少しだけ柔らかくなる。
『決断し、行動を起こすのはお兄様です。私は、それがお兄様の未来につながるように、調整するだけですから。』
俺が感情や思いつきで動いた結果を、オリガミが戦略的な成果として回収してくれる。いつものパターンってわけか。
「……なんだか急に申し訳なくなってきたぞ。いつもすまないなあ」
『それは言わない約束でしょ……ではなくてですね。これでお兄様は東堂家の協力を得られる確率が格段に高まりました。これはお兄様が掴み取った結果です。そして、千穂さんやネムさんとの未来を勝ち取るための、大きな一歩なのです。』
「……その未来にオリガミも入れといてな。お前もいなきゃ意味がないんだから」
『……ありがとうございます。私に身体があれば、顔を赤らめて「お兄様……」などというタイミングですね。』
「やめてくれよ。そういうのは、本の中だけで十分だ」
『お兄様、モテモテですもんね。』
「確かに……モテすぎて怖いんだが。なんか、いつかしっぺ返しが来そうでさ」
『まあ、お兄様にそれだけ魅力があるということですよ。』
※※※
「それで……綾に結婚を考えてくれって言われちゃったんだが」
『そうでしたね。』
「俺には千穂とネムがいるからなあ。正直、綾にはもっと堂々と胸を張れるような結婚をしてほしいんだよ」
『詩織さんはどうなのですか?毎日プロポーズを受けてますよね。』
「し、詩織さんもだ。彼女にも、まともな相手……まともな相手……?」
いや、待て。詩織さんだぞ?
手のソムリエだぞ?
九時間ぶっ通しで人の手だけを見続けて、指の関節の角度を実況レポートする女だぞ?
「……いや、超美人だし、相手はいくらでもいそうだけど、詩織さんだもんな……?」
『はい。もともと彼女にまともな結婚ができるとは思えませんね。』
「やっぱりそう?……俺が引き取るしかないのか?」
『詩織さんなら、千穂さんもネムさんも受け入れてくれると思いますよ。ただ、二人以上許されるとわかれば、すぐに東堂綾も動くと思いますが。』
そうだよなあ……四人のお嫁さんとか、家庭が成立するのだろうか?
『私としては、詩織さんも綾さんも、お兄様のお側にいてほしいですけどね。笹木家と東堂家、ともに名家ですし、つながりが強くなればなるほど「人類わからせ計画」の成功率が上がります。』
「なるほどな。政略結婚ってやつか」
『はい。幸い、現在進行形の「特待パートナー計画」におきましても、パートナーの人数に制限はありませんしね。』
「生存のための結婚ってわけだな……」
正直に言えば。
詩織さんも綾も、女性として魅力的だと思う。
詩織さんのあのスーツ美女の美脚はたまらんし、綾の折り紙に向き合う真剣な目は九時間ずっと隣にあった。どっちも、俺が弱ってるときに来られたら……正直、自信がない。
だけど。
「……千穂とネムの反応次第だな。あの二人がいいって言うなら、考える。でも嫌がったら、それまでだ」
千穂やネムのためになると言われても、彼女たちに嫌な思いをさせてまで、っていうのは違う。
『承知しております。なんにせよ、先の話です。今は、七月七日の千穂さんの誕生日と、七月八日のお披露目会を乗り切ることだけを考えましょう。』
千穂の誕生日に、オリガミを紹介する。
そして、その翌日に、叔父さんや東堂議員や笹木家当主に、オリガミの力を示す。
どちらも、もう後には引けない。
だめだ。しんどくなってきた。
……考えるのは明日にしよう。今日はもう寝よう。
すべてを明日の自分に丸投げして、俺は泥のような眠りへと落ちていったのだった。
※※※
翌日。起きたのは昼前だった。
昨日の長時間配信の疲労が残っているみたいだ。身体中がだるい。だがまあ、動けないほどではない。
九時間はちょっと長かったろうか?五時間ぐらいで収めとくべきだったのかもしれない。
綾も、疲れてるかな?後でちょっと電話してみるか。
天井スピーカーから声が降ってくる。
『お兄様、おはようございます。お疲れですか?』
「ああ、おはよう。オリガミ。正直、疲れはまだ残ってるよ。昨日、はしゃぎすぎたな。今日はなにかあるか?」
『ご報告が一つ。玄武キャピタルの船舶と、よいこ軍団の一部が乗船した観測船が、天穿テスト実施ポイントに到着いたしました。』
天穿。超低高度軌道周回兵器。
シミュレーション上は完璧だ。あとは実地テストで裏付けるだけだ。
『南緯60度、東経160度付近。ニュージーランド南方の公海上です。』
「……そんなところまでいったのか。南極近くじゃん」
『陸上を通らないで軌道周回させるとなると、どうしてもこの辺りになってしまうんですよ。』
『なお、現地との時差は約2時間です。南半球は冬ですので、日照時間は5時間程度しかありません。テスト実施は現地時間13時、こちらの時間で11時を予定しております。』
「今日の昼か」
『はい。テスト自体は短時間で終わります。お昼過ぎには結果をご報告できるかと。』
「そうか……成功してくれるといいな」
『シミュレーション上は問題ないはずです。安心してお待ちください。テストが終了次第、全力で、天穿の量産体制に入ります。』
「わかった。頼んだぞ」
『お任せください。それより……』
「それより?」
『千穂さんとネムさんがリビングで待ってるみたいですよ。行ってあげてはいかがですか?』
「ん?待ってる?なんでだ?」
『朝帰りしたからでは?』
あ。
※※※
そうだ。俺、昨日の早朝に帰ってきてそのまま寝たんだ。東堂邸からの朝帰り。女の子の家からの朝帰り。マズイ。
……これは、アレだ。
久しぶりに、あの技を出すときが来たようだ。
できるだけ使いたくなかった。この技は強力だが、失うものが多すぎる。できれば使いたくない。使いたくないが――男にはやらねばならないときがある。
いいか、俺。
リビングに入ったら先手を取るぞ。ドアを開けて入る。そのまま流れるように行う。
――ローリング土下座を。
そして相手が呆気に取られているうちに、事情を全部話すのだ。何の問題もないはずだ。やましいことなど何もないのだから。
ただ、綾との結婚の打診があっただけだ。
……俺は、悪くないよな?
覚悟を決めて、廊下を歩く。
リビングへの引き戸に手をかけ――一気に開いた。
今だ!
俺は部屋の中へ、頭からダイブする。くるりと一回転。そのまま流れるような土下座を行った。
我ながら惚れ惚れするようなローリング土下座だ。さぞかし呆気に取られていることだろう。
「すまん!昨日はオリ子のところで配信してて、帰るのが朝になっちゃったんだ!決してやましいことはなかった!信じてくれ!頼む!」
沈黙。
……どうだ?
恐る恐る顔を上げる。
千穂とネムがソファに座っていた。テレビスクリーンには、昨日の俺の配信のアーカイブが流れている。
二人は呆気に取られた顔で、俺を見ていた。
「なにやってんだ?正太郎。急に入ってきたかと思ったら、一回転土下座なんてしてさ。ライブ配信なんてやって、エンターテイナー精神に目覚めたか?」
「び、びっくりしたよ!どうしちゃったの、しょうちゃん?」
え。なんか普通。いつもの優しい二人だ。
もしかして、ローリング土下座、必要なかった?
「いや……あの、怒ってないの?」
「ん?なんでだ?東堂綾が炎上したから、助けてあげたんだろ?ワタシは自分の旦那が男気あふれるやつで、誇らしいぞ!」
「そうだよ!綾ちゃんだっけ?しょうちゃんをここまで本気にさせる子、なかなかいないよ!」
俺のローリング土下座……プライドと引き換えに繰り出した大技は無意味だった。
ネムが画面を指差す。
「正太郎!熱いな、これ!なんか漫画みたいな熱い対決だったぞ!」
「うん、しょうちゃんすっごい楽しそうに折り紙してるね!」
千穂が嬉しそうに画面を見ている。アーカイブでは、ちょうど第三ラウンドの建物対決が流れていた。俺が城を折っている場面だ。
「しかし……この東堂綾ってやつ……すごい折り紙スキルだな。まさか正太郎と対等に渡り合えるなんて……信じられんぞ」
「でも、うらやましいな。しょうちゃんと一緒に同じ趣味に没頭できるんだもん。私も折り紙できるようになりたかったなあ」
千穂がちょっとだけ寂しそうに笑った。
「千穂は料理があるだろ。俺、千穂の料理にはいつも没頭してるよ。千穂がいなくなったら、俺、餓死するから」
「えへへへ……そ、そうかな」
そこへ、ネムが身を乗り出す。
「なあ!今度、東堂綾に会わせてくれよ!いろいろ話してみたいしさ!」
「かまわないけど……」
いや、ちょっと待て。
ネムに綾を会わせたら変なことにならないか? だって、ネムが妹扱いして入れ込んでるアヤトリは、綾がモデルなんだぞ。髪の色以外はそっくりなんだぞ。
……オリガミめ。ネムが綾と会ったときに、ネムの好感度が自然に上がるように、綾をアヤトリのモデルにしたな。相変わらず暗躍しやがって。
うーん。会わせるのは、もう少し様子見した方がいいかもしれない。
「綾はさ、こっちに住んでないんだよ。西の方の大学に通っててさ、昨日配信のために戻ってきただけみたいなんだ」
「そ、そうなんだ。私も会ってみたかったなあ。どんな子なの?」
千穂が首を傾げる。
俺はネムをちらっと見た。ネムは綾に会えなさそうと知って、少しだけ不満そうだ。
仕方ない。千穂もいるし、ネムにしかわからない言葉で少しだけ伝えるか。
「えっと、ゲームキャラのアヤトリって子にすごい似てるかな」
「え?アヤトリにか?」
ネムの目の色が変わった。
「ああ。もう本当に瓜二つでな。会ったらネムは気に入ると思うよ」
「アヤトリに似てるのか!そっかそっか、会えるの楽しみだな!」
ネムがぱあっと笑顔になる。やっぱりアヤトリは効く。
「えっと……ゲームキャラに似てるの?」
「ん、ああ。千穂も多分仲良くできると思うよ。なんか武士みたいな子で面白いから」
「そうなんだ!楽しみだなあ!」
千穂が両手を合わせて嬉しそうにしている。千穂は誰とでも仲良くなれるタイプだから、綾とも簡単に仲良くなれそうだ。二人とも根が真面目だし。
※※※
「あ、そうそう。七月七日の千穂の誕生日は、俺と一緒にこの家で過ごしてくれないか?」
「え?」
千穂が目をぱちくりさせた。
「う、うん。もちろん、いいよ」
「ああ、千穂ちゃんの誕生日か。七月七日かあ」
ネムが大袈裟に手を叩いた。
「でも、残念だな。ワタシ、ちょうどその日出張なんだよ!」
もちろん嘘である。ネムにはその日ホテルに泊まってもらうことになっている。
七月七日。千穂の誕生日。その日に、俺は、俺の口から千穂にオリガミを紹介する。大切な妹だって。ずっと千穂に紹介したかったって。
「そ、そうなの?残念だな……」
「何言ってるんだよ千穂ちゃん!正太郎と二人きりだぞ!二人きりで最高にラブラブベタベタすればいいじゃないか!」
「ら、ラブラブベタベタ?え、えへへへへ……で、でも、いいのかな?ネムちゃんいないのに」
「大丈夫だって!むしろ千穂ちゃんの正太郎への愛が深くなればなるほど、千穂ちゃんのご飯が美味しくなる気がするしな!しっかりと愛を深めてくれ!そしてワタシに美味しいご飯を食べさせてくれ!」
「えへへへへ……そ、そうかな!わかった!がんばるよ!がんばって、しょうちゃんと、あ、愛を育んで、ネムちゃんに美味しいご飯食べてもらうね!」
「ああ、楽しみだ!」
ネム……なんていいヤツだ。
「千穂、ほんっとに申し訳ないんだけど、料理はケータリングでいいかな?超美味しいやつを探してくるからさ」
この激ウマ料理人の千穂に、どんな料理を作れというのだ。無理無理無理。
「いいよ!むしろ知らない味があって学びがあるから、そういうの大好きかな!」
千穂の目がキラキラしている。
「あと、ケーキは俺が作る。洋梨タルト。ちょっと誕生日っぽくないかもだけど、それでいいかな?」
一点ぐらいは、自分が作ったものを食べてもらいたいし。
「もちろんだよ!しょうちゃんの手作りタルト、楽しみだなあ!」
「おい正太郎!ワタシの分も残しとけよ!出張から帰ってきたら、ちゃんと食べるからな!」
「わかったよ。食いしん坊だなあ」
「食いしん坊言うな!」
ネムがむすっとした顔をする。
……しかし。
綾と詩織さんも、いつかこの中に入ってくるかもしれないのか。
そんなこと本当にありえるのか?
正直、今の俺には全然想像できない。
まあいい。今はこのままの関係を楽しもう。
七月七日は、もう近い。
※※※
千穂が作ってくれた昼食を味わった後のことだった。
ネムは「ごちそうさま」と言って食器を片付けると、何も言わずに開発フロアへかけていってしまった。いつものことだ。食べ終わったら即研究だ。変わらない。
そして俺は今、ソファに座った千穂に膝枕をしてもらっていた。
ふわぁあああ。癒やされるぅ〜。
なんて幸せな時間だろう。やっぱり千穂の膝の上が俺の居場所だ。ここに住んでもいい。
千穂のいい匂いがする。
俺がスカートに顔を擦り付けていると、千穂が俺の頭を優しく撫でながら言った。
「もう、しょうちゃんは甘えん坊さんだなあ。そんなに膝枕好き?」
「ああ、大好き。ずっとここにいたい」
「ふふふっ、ずっとこのままでもいいよ!」
天使……ママぁ……。
もうこのまま溶けてなくなってもいい。そんな気分でまどろんでいたときだった。
耳の裏の骨伝導イヤホンから、オリガミの声が聞こえた。
『お兄様、おくつろぎ中、申し訳ございません。天穿の実地テスト、終了いたしました。』
心臓が跳ねた。
「……結果は?」
千穂に聞こえないように、唇だけで問いかける。
『全項目、合格です。詳細をご報告いたします。』
『まず飛行性能。超低高度軌道を周回し、所定のコースを完走しました。巡航速度は第一宇宙速度――秒速7.9キロメートル。安定飛行を確認。加速・減速・軌道変更、すべて設計値通りです。』
第一宇宙速度。秒速7.9キロメートル。
秒速だぞ。時速に換算すると約28,000キロメートル。地球を一時間半で一周する速度だ。
『次にステルス性能。ゲートバリアによる空気抵抗ゼロ化、レーダー波吸収、赤外線遮蔽――すべて正常に機能。ソニックブームの発生もありません。観測船に搭載したレーダーおよび赤外線センサーでは、天穿を捕捉できませんでした。』
レーダーでも捕捉不可。シミュレーション通りだ。
『最後に、海底に沈めたセンサーにより、運動エネルギー兵器およびEMP兵器としての機能も確認できました。すべてシミュレーション通りです。』
『完璧です。第一宇宙速度で超低高度軌道を飛翔する天穿を防ぐ手段は、現在の人類にはありません。』
……心臓の鼓動が早くなる。
インターフェースゲートの発見。ゲートバリアへの応用。花火会社の買収。マイクロ固体燃料ロケットや熱電池の調達。何カ月もかけて、一つずつ積み上げてきたパーツが、ようやく一つの形になった。
これで、守れる。
千穂を。ネムを。叔父さんの家族を。オリガミを。
「……そうか。よくやった、オリガミ」
『はい――超低高度軌道周回兵器「天穿」、完成いたしました。』
天穿が、完成した。
千穂が俺の頭を撫で続けている。温かい。穏やかで、優しい手だ。
天穿は、この手を守るための力だ。
「しょうちゃん?なんか考え事?」
「いや、なんでもない。千穂の膝枕が気持ちよすぎて、溶けそうだなって思ってただけ」
「もう、大げさだなあ」
千穂が笑った。
俺は、千穂のお腹に顔をうずめ、もう少しだけ、この膝の上にいることにしたのだった。
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