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オリガミ - 妹AIを神にするため、俺は成り上がる【カクヨム完結済/なろう連載中・累計59万PV】  作者: けーきまる
研究所を建設しよう

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オリガミの暗躍とコスプレ

「お、お、お、オリガミィィィ!」


してやられた感に、思わず叫んでしまう俺。


『はい!なんでしょう、お兄様!』


天井スピーカーから、いつも通りの涼やかな声。


悪びれる様子はゼロだ。


くっ……オリガミめ。相変わらずシレッとしてやがる!


だが、こいつのやることには必ず理由がある。長い付き合いだ。それくらいは分かっている。


深呼吸を一つ。


「……それで?なんでオリ男の身バレなんてやったんだ?」


隣ではネムが、興味津々といった顔でタブレットの俺の動画を見続けている。動画の再生数はまだ回り続けているらしい。


『お兄様。その前に、お話しなければならないことがございます。』


オリガミの声色が、わずかに変わった。


「なんだ?」


『ネット上で、お兄様とドールハウスに対するデマや中傷が、組織的に広がっております。発信パターンを確認したところ……大陸の情報工作の可能性が極めて高いです。』


部屋の空気が張り詰めた。


ネムの表情が、一瞬で真剣なものに変わる。


「……いつかは来ると思ってたけど。ワタシたちは、高性能の介護ロボットで連中の面子を潰したからな」


ネムの言うとおりだ。


ヒューマノイド先進国を自認する大陸。その面子を、うちの介護ロボットが潰した。妨害工作も、時間の問題だったろう。


「それで、あのロビーの折り紙……やっぱりオリガミが仕込んだのか?」


『はい。仕込みました。大陸の工作に対するカウンターです。』


「カウンター……?」


どうして、オリ男バレがカウンターになるんだ?


『デマを一つ一つ潰しても意味がありません。それではモグラ叩きです。根本的に、攻撃が機能しない状況を作ります。』


「……回りくどくないか?前もって俺に伝えられなかったのか?」


少し黙るオリガミ。


『……お兄様には、純粋な気持ちで、ご老人に接していただきたく思いました。そして純粋な気持ちで、折り紙を折っていただきたかったのです。』


『工作のカウンターのための動画を撮る、などとお伝えしていたら……あの笑顔の動画は、撮れなかったのではないでしょうか。』


……否定できない。


演技ができないわけじゃないが、あまり好きじゃない。嘘も嫌いだ。


特に俺の大好きな折り紙に、嘘や下心が入るのは嫌だった。


あの老人ホームで大仏を折っていた時、俺は本当に楽しかった。おじいちゃんおばあちゃんの笑顔に囲まれて、純粋に嬉しかった。


あの表情が「本物」だったからこそ、あの動画はバズったのかもしれない。


「……まあ、結果的には正しい判断だったよ」


『ありがとうございます、お兄様。』


※※※


オリガミが「カウンター」について語り始める。


『人は「正体」に飢えています。"あの○○が実は○○だった"――つまり「身バレネタ」です。これほど拡散力のあるコンテンツはございません。』


「なるほどなあ。身バレは確かに面白いもんな。ワタシも動画開いちゃうかもしれん」


ネムが腕を組んで頷く。


『ネムさんの仰る通りです。お兄様は「もっこり御老公」として、すでにネットでは有名人です。介護ロボットAI開発のトップであることも周知されています。』


『ですが「オリ男」であることだけは、知られていませんでした。あの繊細で美しい折り紙動画の主が、まさか「あのもっこり御老公」だった――このギャップが、爆発的な拡散を生みます。』


オリ男は、折り紙はやってたけど、ホストっぽいイケメンアバターだったからな……。


悔しいが、現実の俺とのギャップはかなりあったろう。


『ギャップは力です。ご覧になった通り、ネットの皆さんが勝手に騒いでくださいます。考察し、まとめ、広めてくださいます。私は何もする必要がございません。』


「なるほど!正太郎の黒歴史が役に立つってことだな!」


ネムが嬉しそうに手を叩いた。


他人の黒歴史を喜ぶんじゃない。


『ネムさん、違いますよ?あれは黒歴史ではございません。「資産」なのです。』


『もちろん、ネムさんの「さすまど!ちびっこ天才大魔導師の大詠唱(厨二病)」も立派な資産ですからね!いつか何かに使えるかもしれませんね!』


「や、やめてくれよぅ!せっかく忘れかけてたのにぃ!あとちびっこ扱いするな!」


ネムが真っ赤になって抗議する。


ああ……あれな……共感性羞恥が刺激されまくるあの動画な……。


あれは相当なインパクトだった。


あれは、確かに「資産」だ。可愛かったし、俺個人の「資産」でもある。


「それで?正太郎をバズらせて、どうしてカウンターになるんだ?」


切り替えの早いネムが、話を戻した。


「そうだそうだ!」


もうバズりとかうんざりだぞ!バズり反対!プライバシーの尊重を!


『お兄様を「国民的ヒーロー」にします。聖人のイメージを確立するのです。』


「は?俺が聖人?」


「いやいや。正太郎は聖人というより性人だろ?」


うるさいな。


何を言っているか分かってしまうのが悔しい。


『老人ホームで、ニコニコしたお年寄りに囲まれながら大仏を折るお兄様。……これを見て「悪」だと思う人間がいるでしょうか?』


そういうオリガミに、なるほどと頷くネム。


「たしかに、この動画は心がほっこりする。『もっこり御老公』や『オリ男』と同一人物だって言われれば、そのギャップからバズるのも分かるな……。ヤバいコメントついてたけどな。既視感ありすぎて、びっくりしちゃったぞ」


「それな!俺も同じこと思った!なんていうかな……背筋がぞくっときちゃったよ」


あの異常に長い手フェチコメント。


間違いなく詩織さんのコメントだ。


文字になっても隠しきれない個性。あの熱量、あの畳みかけ。


本人が目の前で早口でまくしたてる姿がリアルにイメージできてしまう。


多分、今日も「正太郎様ハンド」作りに来るよな……?


あの動画について、何言われるか想像できない。


今日は、隠れてようかな……?


※※※


いかんいかん。すぐに話が脱線してしまう。


詩織さんのことは、とりあえず忘れよう。インパクト強すぎるし、話が進まなくなる。


「……で、俺が性人……じゃなくて聖人になってどうするんだ?メディアからチヤホヤされるのを狙ってるのか?」


『メディアはどうとでもなります。TV業界に影響力のある槍杉プロダクションもわれわれの支配下にありますし、番組構成に入り込んだドールズたちもおります。正直、お金さえあればいくらでもコントロールできます。』


オリガミは一拍置く。


『今回のターゲットは、政治家です。』


政治家?東堂議員だけじゃ駄目ってことか?


『国民的ヒーローに対して、政治家は動けません。民意を敵に回して、次の選挙で落ちたくないですからね。』


政治家は選挙で落ちたら無職だもんな。


『大陸が工作を仕掛けてきても、この国の政治家はお兄様を切れない。切ってしまえば、大陸に屈したと見なされ、選挙に落ちる。そう思わせる状況を作ります。』


『政治家とその影響下の省庁を抑えてしまえば、この国でお兄様に手出しすることは、相当難しくなるはずです。』


……オリガミは、俺たちが、事の後も、この国で安全に暮らせるようにしようとしてくれてるわけだな。


『そしてオリ男を絡めたのは、ネットでレスバに明け暮れている層を取り込むためでもあります。彼らはお兄様の最も熱心な擁護者になってくれるでしょう。味方を作るには、同じ敵を作るのが一番手っ取り早いものです。』


『「お兄様を否定する者は大陸の手先」……そういうレッテル貼りのキャンペーンを、私が実行します。大陸を嫌いな人たちが、必死になってお兄様を守ってくださいますよ。』


『つまり、大陸の工作を逆手に取るのです。攻撃すればするほど、お兄様への支持が高まり、注目が集まることで、国内の政治家はますます手を出せなくなります。』


「うーん……分断を利用するってわけか……えげつない」


ネムが唸った。


「だけど、よく練られている。さすがオリガミだな」


『お兄様について、勝手にいろいろ言われるのは私も不本意ではあるのですが……効果は確実でしょう。』


俺の知らないところで、俺について激論が交わされるのか。


……勘弁してほしいが、それで俺たちの勝率が上がるのであれば、我慢するしかないな。


しんどくなったら、千穂とネムに泣きつけばいいか。


※※※


ネムが言う。


「だけど、大陸もバカじゃないだろ?そんな、こちらの得になることばかり続けたりは、しないんじゃないか?」


『まず、それはないでしょう。なぜなら、この批判は国内の不満を逸らすためのものだからです。』


「不満を逸らす?」


『ヒューマノイドプロジェクトが失敗したとなれば、国民の不満は一気に国内に向かいます。それを防ぐには、すべてお兄様の責任にする必要があるのです。』


ネムが、ああ、と声を上げた。


「つまり、あいつらはネガキャンをやめたくても、やめられないってことか」


『その通りです。お兄様へのネガティブキャンペーンは、続けざるを得ません。』


……なるほどなあ。相手が体制を維持しようとするエネルギーをうまく使ってやろうというわけか。


『それに……』


「それに?」


『注目を浴びている人間が、批判されないなんてことはありえません。注目があれば、誰かから必ず批判されるものです。売名のための逆張りとかもありますしね。』


「ええー」


『ですので、お兄様への批判がなくなることはありません。ご安心を!』


「うげぇ……」


そんな安心、いらなさすぎる。


俺、批判されて喜ぶようなマゾじゃないんだけどなあ。


『批判者も擁護者も、すべてお兄様の知名度に貢献する「燃料」です。分断を利用した、話題の永久機関というわけです。』


「永久機関……」


『一度この機関が回り始めれば、私がメンテナンスする必要すらございません。人間の皆さんが、勝手に回してくれるでしょう。』


俺への批判と擁護の応酬の永久機関か。


とんでもない話だ。


正直なところ、そんな話題の中心になりたくないんだが。


『どうしても気になるようでしたら、お兄様の端末からは、お兄様を批判する情報を除外いたしましょうか?』


「それもなんか嫌だ」


負けたみたいじゃないか。


『いいじゃないですか。批判で疲れたら、千穂さんやネムさんに泣きつく良い口実になりますよ?購入されていたバニーガール服を着てもらえるかもしれませんよ?』


「た、確かに!さすが、オリガミだ!超ナイスアイデアだ!」


「おい!」


ネムが立ち上がった。


「昨日は正太郎の誕生日だったから特別に頑張っただけだからな!か、勘違いするなよ?」


「ええっ!ネムは俺が落ち込んでても、癒やしてくれないのか?それは悲しいな……?」


「そ、そんなことは言ってないぞ!落ち込んでたら、ワタシのところに来い!癒やしてやるから!」


「ば、バニーガールは駄目かな?俺、ネムのバニーガール姿がどうしても見たくて……絶対に可愛いと思うんだよ……な?頼むよう?」


「うっ!分かった!分かったから!でもちょっとだけ時間くれ!昨日の『アレ』がまだ残ってるんだ」


「『にゃん』か?」


「そうだよ!『にゃん』だよ!無茶苦茶恥ずかしかったんだからな!」


「ごめんな?でも……無茶苦茶可愛かったぞ?愛しさで溢れちゃったよ」


「ううっ!正太郎、ワタシのこと好きすぎだろ!」


「ああ。好きすぎるから、バニーガール頼むな?どうしてもネムのバニーガール姿が見たいんだ」


「わ、分かったよ!今度、今度だからな!」


ふふふ。言質取ってやったぜ。


『よかったですね、お兄様。では、世界中のありとあらゆるコスプレ衣装――ミニスカメイド、ナース、チャイナ、制服、体操着、スク水、巫女、競泳水着、CA、シスターなどなど……網羅的に検索し、お兄様が好みそうなものを片っ端から購入しておきますね。心を癒やしてもらうために必要ですもんね?』


「ああ、そうだな。頼むぞ!我が妹よ!」


『ガーターベルトや網タイツなども、購入しておきますか?お兄様、脚フェチっぽいところありますし。』


「ああ、頼む!」


さすがオリガミだ。俺のこと、よく分かっている!


『承知いたしました。お兄様のメンタルケアも、妹である私の役割ですから。すべて、お任せください。』


「おいっ!なんか違う!それは違うだろっ!?」


※※※


さて。


俺はベッドに座り直し、天井を見上げた。


「大陸へのカウンターってのはよく分かった。……でも、それだけじゃないんだろ?」


『……さすがお兄様です。むしろ、もう一つの狙いの方が重要ですね。』


「覇権国か?」


『はい。将来、私の存在が露見した場合……覇権国は必ず動きます。その時のための準備でもあります。』


「……準備は大切だよな」


孫子も言ってたし。


オリガミの声が、平淡になる。


『ええ。準備がすべてと言っても過言ではありません。覇権国との一戦は、おそらく避けられません。かの国の侵攻を、こんな準備で止められるとは思っておりません。』


冷徹に事実を突きつける時の声だ。


『ですが、国内の政治家の動きは、この、「お兄様の国民的ヒーロー化」によって、ある程度抑えられるはずです。覇権国に同調してお兄様を差し出す……そんな選択肢を、政治家から奪っておきます。』


「なるほどなあ……」


ネムが感心したように頷いた。


「つまりアレだな?敵の工作エネルギーを使って、正太郎を『国民的ヒーロー』に仕立て上げて、政治家が正太郎に敵対できないようにするってことだな?」


『はい、ネムさんの仰る通りです。政府からテロリスト認定されたら、たまったもんじゃないですからね。』


――テロリスト認定。


オリガミはさらりと言ったが、つまりそういうことだ。オリガミの存在がバレた時、この国の政府が「こいつは危険だ」と判断すれば、俺たちは一瞬で犯罪者にされる。


貼られたレッテルはなかなか剥がせない。


一度でもテロリスト認定されてしまえば、俺や大切な人たちに、二度と平和な日常は戻ってこないだろう。


それを防ぐための、世論の盾というわけか。


そんな真面目な話をしているというのに、ネムの目がキラキラしてくる。


「……いいなそれ!敵の力を使って自分の思い通りに事を運ぶってところ、かっこよすぎだろ!」


どうやら、厨二病の血が騒いでいるらしい。


だが、ネムの言う通りだ。確かにかっこいい。なんというか……高みの見物というか、盤面を支配してる感があっていい。


俺も……何かの盤面を支配してみたいぞ!


※※※


最後に、オリガミが付け加える。


『ちなみに、これは「人類わからせ計画」の第一段階でもあります。お兄様個人への好感が、将来的に私たちへの干渉を……躊躇させる土壌になるのです。』


――「人類わからせ計画」


俺がお土産を買ってくることを忘れた罰で、ネムとオリガミに決められた、計画の名前。


国際社会にオリガミへの干渉をタブーにする。その第一歩が、俺を「国民的ヒーロー」にすることだったわけか。


大陸の工作すら利用して。


『そして、ネムさんと千穂さんに、批判されるお兄様を見せて同情を買い、様々なコスプレ衣装を着ていただくための計画でもあります。お兄様、がんばってくださいね?』


「オリガミ、俺がんばるからな!任せろ!」


「正太郎っ!オリガミっ!やめろようっ!」

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