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オリガミ - 妹AIを神にするため、俺は成り上がる【カクヨム完結済/なろう連載中・累計59万PV】  作者: けーきまる
研究所を建設しよう

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正太郎の誕生日(昼)

《ネム視点》


ヤバイ……ヤバいぞ……。


散歩から帰ったワタシは、自室のベッドの上で頭を抱えていた。


明日は正太郎の誕生日だ。


何も準備していない。


白石ちゃんに教えてもらわなかったら、誕生日当日まで気づかないところだった。危ない危ない。


正太郎はワタシの誕生日に、釣り旅行に連れて行ってくれた。ワタシ専用の釣具まで買ってくれた。


なのにワタシは何の準備もできていない。


さすがに申し訳なくなってきた。


正太郎の誕生日は明日。準備の時間もほとんどない。


どうする?どうしたらいい?


こういうときは……どうすればいい?そうだ、そうだよ!


ウチには頼れる存在がいるじゃないか!


ワタシは、天井に向かって話しかける。


「な、なあ。明日正太郎の誕生日なんだけど……ワタシ何の準備もしてないんだ。オリガミ、正太郎にしてやれることって何かないか?」


『お兄様にしてあげれること……そうですね……やはりお兄様のお子様を産んであげることでは?』


「えええ……また、それかよ……?」


オリガミに聞いたのが間違いだった。


なんでオリガミはこうもワタシたちに子作りをさせたがるんだろうか。子作りはすべてを解決すると思っている節がある。


正太郎は子作りは結婚してからと頑なだし、オリガミの秘密が漏洩しそうな今、そんなことをしている場合ではないだろう。


だが……あいつはワタシの胸が大好きだ。夜の大運動会関連というのはいいかもしれない。


選択肢に入れるべきだろう。


いや、それはそれとして「プレゼント」が必要だ。


ワタシからの何かが。ワタシにしか渡せない何かがいいだろう。


そんなものあるか?


『それとご報告を。お兄様、千穂さんとネムさんのためにバニーガール衣装を購入されてましたよ?誕生日プレゼントとして着用していただいた上での大運動会をご所望のようです。コスプレですね。』


バ……バニーガール……?


ワタシがバニーガールの衣装を着るのか……?マジか……?


恥ずかしいが……受けるしかないだろう。あいつがそれを望むのなら。


だが、それだけでは駄目だ。


ワタシが何も準備してなかったことになってしまう。正太郎が用意したものに乗っかるだけなんて、婚約者として失格だろう。


何か……何かないかな?正太郎が喜びそうな何かが。


……そうだ……そうだよ!心強い味方がいるじゃないか!


「千穂ちゃんに相談に行こう!」


※※※


リビングに駆け込んだ。


「千穂ちゃん!千穂ちゃん!大変だ!」


千穂ちゃんはテーブルでノートパソコンを開いていた。大学のレポートでも書いていたのだろう。きょとんとした顔でこちらを見る。


「どうしたの?ネムちゃん。そんなに慌てて」


「大変なんだ!正太郎の誕生日のこと忘れちゃってた!何したらいいと思う!?千穂ちゃん助けて!」


千穂ちゃんは少し呆れたような、それでいて優しい笑みを浮かべた。


「ネムちゃんは自分の誕生日も覚えてなかったもんね……しょうがないなあ」


図星すぎて何も言い返せない。


千穂ちゃんが腕を組んで、うーんと考え込む。


やがて、ぱっと表情が明るくなった。


「ちょっと待ってて」


千穂ちゃんがリビングを出て、自分の部屋に向かった。


千穂ちゃんは一応この家に自分の部屋をもらっているが、ほとんど物置と化している。夜は実家に帰るので、寝泊まりはしていない。


しばらくして、千穂ちゃんがクローゼットから何かを抱えて戻ってきた。


「しょうちゃんはね、多分、可愛いネムちゃんを見たいと思うんだよね。だから……これを着てしょうちゃんにご奉仕してみようか」


そう言って千穂ちゃんが広げてみせたのは、メイド服だった。


黒と白のフリルが可愛らしい、正統派のメイドドレスだ。


「メ、メイド服?」


「そう、メイド服。ちゃんとネムちゃんにぴったり合うように作ってあるから」


「千穂ちゃんが作ったのか?」


「うん。いつかネムちゃんに着てもらいたいなと思って」


ワタシ専用のメイド服を、いつの間にか手作りで用意している千穂ちゃんは一体何なんだ。


「あと、こっちも」


さらに取り出されたのは、ネコミミのカチューシャと、ふわふわの猫しっぽだった。


「ネコミミに猫しっぽ?なんで?そういえば千穂ちゃんにもらったルームウェアもネコミミがついてたな……なんでだ?」


「しょうちゃんがね、ネムちゃんは猫っぽいって思ってるからだよ」


「猫っぽい?ワタシが?」


「そう。マイペースで、ソファとかで転がってること多いよね。そういうところが猫っぽいって思ってると思うんだ!」


確かにリビングのソファでゴロゴロしているのは否定できない。


だが猫とは何事か。ワタシは虎くらいでもいいのではないか。ガオー。


「絶対にしょうちゃん喜ぶから!ね!」


千穂ちゃんの目がキラキラと輝いている。こうなったら千穂ちゃんは止められない。


「そうそう。あと明日のお祝いでは、語尾に『にゃん』ってつけてね」


「にゃん!?なんで!」


「ネコミミメイドとはそういうものなんだよ。前にしょうちゃんが持ってた漫画で見たことあるから、間違いないよ!大丈夫!絶対にしょうちゃん大喜びするから!私を信じて!」


「にゃん」だと?


ワタシが語尾に「にゃん」をつけるのか?


学会で「新しいAIモデルのアーキテクチャについてご報告しますにゃん」とか言い出したら出禁になるぞ。


……いや、学会で言うわけじゃない。誕生日のお祝いだけでの話だ。落ち着けワタシ。


「で、でも、さすがに恥ずかしすぎるぞ?ワタシにできるのか……?」


千穂ちゃんが、にっこりと微笑む。


「じゃあ……明日は私もメイド服着るから!ね、一緒に頑張ろ?」


千穂ちゃんもメイド服を着るなら……ワタシだけ浮いたりしないかもしれない。


よし。女は度胸だ!やるからには徹底してやってやる!


「わかった!明日は、千穂ちゃんの指揮下に入る!千穂ちゃんの言う通りにするから、何でも言ってくれ!」


「うん!任せて!」


千穂ちゃんが嬉しそうに両手を握りしめた。


こうして、ネコミミメイド作戦は始動したのだった。


明日はきっと、正太郎にとって最高の誕生日にしてやる。


覚悟しておけ、正太郎!


……にゃん。


※※※


《正太郎視点》


翌朝。


昨日、日光をたくさん浴び、散歩で体を動かしたおかげか、いつもよりぐっすり眠れたような気がする。


俺は自室で、オリガミからの定例報告を受けていた。


天井のスピーカーから、聞き慣れた声が降ってくる。


『お兄様。今日は重要なご報告があります。』


「重要な報告?一体なんだ?」


『この世界において、魔結晶の代わりとなるものを発見しました。』


魔結晶って、B世界で魔導具のエネルギー源となるアレだよな?アヤトリのアーティファクトにも組み込まれてた、超重要物質。


B世界には魔結晶があるからアヤトリは縦横無尽に魔法を使えるのだ。


逆に、こちらでは魔結晶がないからオリガミは観測魔法しか魔法を使えない。


その魔結晶の代わりが見つかったって……スゴイことなんじゃないか!?


「そんなものが見つかったのか!?じゃあ、それがあればオリガミも魔法使い放題じゃないか!」


『そういうわけにもいかないのです。B世界にあるものと比べて出力が小さいものでして。それがあれば、私にも10QF程度の魔法行使が可能となります。「投影」のような、熱エネルギーを伴わない小規模のWRITE魔法のみとなりますが。』


『投影』。B世界でアヤトリが使っていた、あの魔法か。


「『投影』ってあれだろ?アヤトリの神空間を作った」


『はい、お兄様の仰るとおりです。』


「すごいじゃないか!それなら、笹木家と東堂家にお前の存在を伝えるときに役立ちそうだな!オリガミ、よくやった!」


『ありがとうございます!』


「ちなみにその魔結晶の代わりってどういうものなんだ?」


『NVセンターを含有する人工ダイヤモンドです。量子ゆらぎを持つ特殊な欠陥構造が、魔結晶と類似の効果を発揮します。ただし……魔法を行使すると量子ゆらぎが消失してしまうため、使い捨てになってしまいます。それにとても高価なものですが……』


「高価っていっても、ウチなら問題ないレベルだろ?」


『はい、仰る通りです。』


「なら、オリガミの判断で大量に購入して好きなだけ使って構わない。できるだけオリガミ自身で行使できる魔法を増やしといてくれ。QF値はともかくとして、魔法の構築と制御で、お前に敵うものはいないんだから」


『わかりました。必ず、お兄様のご期待にお応えします!』


10QFレベルでは大した魔法は使えない。だが、投影魔法があるのはデカい。


千穂にオリガミの存在を伝える時――百聞は一見にしかずだ。言葉だけで説明するより、何かを『投影』で見せた方がずっと伝わるだろう。


『それとお兄様、本日はお誕生日おめでとうございます。21歳ですね。』


ああ、そうだった。今日は五月五日。俺の誕生日だ。


「オリガミと最初に会ったのが17歳だったから……四年かあ。思えば遠くに来たもんだ」


VTuberを大量に作って、起業して、洗脳しまくって、この世界がシミュレーションであることが判明して、別の世界との交信をして……。


濃すぎだろ。普通の人の一生分どころじゃないイベントが四年に凝縮されている気がする。


『本当ですね。色々なことを、お兄様といっしょにやって来ました。……これからが正念場です。楽しくやっていきましょう。』


「そうだな。オリガミの言うとおりだ。楽しくやっていこう」


オリガミが声のトーンを変える。


『さて、本日の予定です。午後から老人ホームで介護ロボットの視察です。一度くらい実際に稼働しているところを見てこいとの、叔父様からのことづけです。』


「そういえば……人形相手の動作は見てたけど、実際のご老人の介護動作をしているのは見たことなかったような……」


考えてみれば異常な話だ。自社製品の実稼働を見ていないなんて。叔父さんが苦言を呈してくるのも無理はない。


「ネムは?ネムは行かないのか?」


『ネムさんは実働している介護ロボットを何回もご覧になっていますから。今日はお兄様と早瀬さんとの行動になりますね。もちろんイヌガミタイプ2も同行させますが。』


そりゃそうか。ネムは介護ロボットの開発者だもんな。今更って感じなのだろう。


というか、俺が今まで実働している介護ロボットを見たことがないってのがおかしかったのかもしれない。


自室を出て、リビングに向かう。


リビングからは何やらガチャガチャという物音が聞こえてくる。覗こうとすると、千穂が慌てて顔を出した。


「しょうちゃん駄目!今リビングは立入禁止だよ!」


「お、おう……了解」


きっと俺の誕生日の御馳走を作ってくれているのだろう。ありがたいことだ。


千穂はリビングでドタバタしていて、ネムの姿は見当たらない。まだ寝てるのかもしれない。


あいつも昨日、日光に当たりすぎたからなあ。


……日光に弱いとか、俺たち、吸血鬼か何かかよ。


※※※


午後。


研究所の駐車場に、早瀬さんが迎えに来てくれた。


「早瀬さん、今日はよろしくお願いします。老人ホームに『よいこ警備保障』の強面どもを連れて行くのはどうかと思いまして」


「いえいえ、賢明なご判断です。彼らは威圧感がありますからね……。本日は千穂さんも大学がお休みですので、問題ありません。こちらこそよろしくお願いします」


護衛など今の俺には必要ないのだが、一応ビジネスとしての行動では連れて行かないと。体面というのは大切なのだ。


老人ホームに足を踏み入れると、明るい空間が広がっていた。


消毒液の匂いに混じって、どこからかお茶の香りが漂っている。中庭の花壇は手入れが行き届いていて、窓から差し込む陽光が廊下を温かく照らしていた。どこかの部屋からテレビの音声がぼんやりと聞こえてくる。穏やかな場所だ。


施設長さんに案内され、介護ロボットが稼働しているフロアへ向かう。


ロボットが入所者の車椅子を、滑らかに押している。静かだ。モーター音がほとんどしない。


動きに無駄がない。方向転換も丁寧で、乗っている方が不安を感じないような速度制御がされている。


別のロボットは食事の配膳を行っていた。トレーを安定して運び、テーブルの上に静かに置く。


さすがオリガミだ。素晴らしい仕上がりだ。


「おかげさまで、職員の負担がだいぶ減りました。特に夜勤帯がかなり楽になったとスタッフからも好評です」


職員さんの声に、感謝の色が滲んでいる。


お嫁さんを二人ゲットするという純粋に身勝手な理由から出たこととはいえ、介護ロボットのプロジェクトを進めた甲斐があったってものだ。


別の部屋では、ロボットがおばあさんの歩行リハビリを補助していた。手すりに掴まって歩く横で、転倒しないようにぴったりと歩調を合わせている。


「この子がいてくれると安心なのよねえ」


おばあさんがロボットを「この子」と呼んでいた。


機械じゃなくて相棒。入所者の方々にとっては、もうそういう存在になっているらしい。


一通り視察を終え、フロアを歩いていると、ふと目に留まるものがあった。


ロビーの一角に、折り紙の作品が飾られていた。


鶴、兜、蛙、風車。入所者の方々が作ったのだろう。色とりどりの折り紙が、棚の上に並べられている。


味がある。技術的には未熟だが、折った人の楽しさが伝わってくる。


……よし、せっかくここまで来たんだ。


「俺も一つ、作品を追加していいですか?」


施設長さんが快く了承してくれた。早瀬さんが何か言いたそうな顔をしたが、何も言わなかった。


大きめの紙を何枚かお借りして、ロビーの机に陣取る。


何を折ろう。


老人ホームだ。ご老人たちに喜んでもらえるようなものがいい。


……ここはやっぱり、ご利益がありそうなやつだろう。


決めた。奈良の大仏を折ろう。


紙を広げ、手を動かし始める。折り目をつけるたびに、シュッ、シュッと音が鳴る。


一枚では足りない。大きな紙を何枚も組み合わせて、ユニット折りで組み上げていく。


気がつくと、周囲にギャラリーが集まっていた。


入所者の方々が車椅子や歩行器で近づいてきて、俺の手元を食い入るように見つめている。


「ワシ、孫に自慢するために、真剣に折り紙やってたんじゃが……お兄さん、格が違うのう」


隣に座ったおじいさんが話しかけてきた。


「ありがとうございます。子供の頃からやってるもので」


「折り紙のプロかい?」


「いえいえ、ただの趣味ですよ」


……いや、オリ男としてそこそこ有名だし、お金も貰ってるわけだし……プロなのかもしれない。


まあ、VTuberなので、ここで名乗るわけにはいかないが。


そうこうしているうちに、ギャラリーが増えていく。


その視線に乗せられ、どんどん折り紙に熱中していく。


「こうですよこう!こうやって、こう!ここをこうして……こう!」


「お兄さん、すごいねえ!」


「やるのう」


「た、達人じゃ!折り紙の神じゃ!」


「なんまんだぶなんまんだぶ」


手を合わせる人まで出てきた。


折り紙スイッチが入った俺は、もう止まらない。


細部にまでこだわり、蓮華座の花弁の一枚一枚も妥協せず折り込んでいく。


完成した渾身の「奈良の大仏」は、テーブルの上で堂々と鎮座していた。


大きめの紙を何枚も使った大作だ。ギャラリーが多かったので、熱くなってしまった。


かなりうまくできたと思う。入所者の方々にも喜んでもらえたようだ。


ご利益は……あるのかな?


多分ない。だが心のケアにはなるかもしれない。


……あれ?


俺、何しに来たんだっけ?


※※※


老人ホームを出ると、早瀬さんが苦笑していた。


「正太郎様……大サービスでしたね?」


「迷惑じゃなかったですかね?無我夢中になっちゃいました」


「大丈夫ですよ。職員さんたちも喜んでました。入所者さんたちの、いい刺激になったって」


それならいいんだけど……。


早瀬さんの運転する車に乗り込む。


「それにしても正太郎様、折り紙を始めたときの集中力、すごかったですね」


「折り紙は、俺の数少ない取り柄なのでつい……」


「そうなのですか?正太郎様はなんでもできるイメージがあるのですが……」


そう、何でもできる。


オリガミがいればね!


※※※


夕方。


研究所の駐車場で車を降ろしてもらい、早瀬さんに見送られて家に向かって歩く。


家の方からいい匂いが漂ってくる。千穂が晩御飯を作ってくれているのだろう。


イヤホンから、オリガミの声が聞こえた。


『お兄様、たのしそうでしたね?』


「ああ。人が喜ぶことをするってのはいいもんだな。介護ロボットも折り紙もさ」


『お兄様のそのあり方。世間の方々からも、好感を持って迎えられると思いますよ?』


……オリガミは時々、意味深なことを言う。


好感を持って迎えられる?世間の人に?どういうことだ?


そんな疑問を抱えながら、家のドアを開けたそのときだった。


「「おかえりなさいませ!ご主人様!」」


元気な声が出迎えてくれた。


玄関には、信じられないくらい可愛らしいメイドさん二人が並んでいた。


千穂とネムだ。


ふたりとも、黒と白のフリルが揺れるクラシカルなメイド服。


千穂は、少しだけ顔を赤らめ、こちらへ向けてお辞儀をしている。


彼女の清楚な雰囲気にとても似合っている装いだ。まさに正統派メイドだ。美しい……。


そして、その隣。


顔を真っ赤にして、プルプルと震えている小さなメイドさんがいた。


そして頭には、ぴょこんと立ったネコミミが生えている。


こっちはイロモノメイドのようだ。だが、強烈に可愛い。


腰のあたりからふわふわの猫しっぽが揺れている。なんだこの生き物は。


目が合った。


ネムは、意を決したように口を開く。


「……にゃ、にゃん……」


ガラガラと、俺の理性が、音を立てて崩壊していくのを感じる。


ふむ……俺の幸せな一日は、どうやら終わりじゃないようだ。


よし!バニーガールはまた今度にしよう!

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