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オリガミ - 妹AIを神にするため、俺は成り上がる【カクヨム完結済/なろう連載中・累計59万PV】  作者: けーきまる
研究所を建設しよう

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オリガミと自己消去

『そして……そして、その前に。』


オリガミが、俺に最後通牒を突きつけてきた。


――『お兄様。そろそろ、千穂さんに私の存在を伝えてください。』


※※※


その言葉に、思わず息を吐いてしまう。


「……まあ、そうだよなあ」


『はい。物事には順番があります。』


オリガミの声は、いつものように穏やかだ。


『笹木家と東堂家の当主に私のことを知ってもらう前に、千穂さんにお伝えするのが筋です。将来的なシコリを生まないためにも、筋は通すべきかと。』


「……そうだな。お前の言う通りだ」


俺は天井を見上げた。


千穂には、ずっと隠し事をしてきた。


オリガミの存在をだ。


もちろん、理由はある。


「秘密を守らなきゃいけないって思いが、千穂の心の負担にならないかな?」


『多少はあると思いますが、もうそんなことを言っている場合じゃないでしょう。それに……お兄様が打ち明ければ、千穂さんは喜ばれると思いますよ?』


オリガミが、少しだけ楽しそうに言う。


『これまでのお兄様の歩みをすべて千穂さんにお話しましょう。そうすれば、千穂さんとの間の溝はすべて埋まる形になりますから。』


「溝……か」


俺は千穂に、色々人に言えないことをしてきたことも伝えてきたし、隠し事をしていることも伝えている。


だが、俺の大切な妹であり、神にしようとしているオリガミの存在を千穂には伝えていない。


ネムは知っているのにだ。


千穂は人が良すぎて隠し事をするのが、極めて苦手である。


そのため、オリガミの存在の漏洩リスクを減らすためにと、伝えなかった面もある。


でも……あれから3年もたった。


それに、HNDL攻撃――量子コンピュータによる過去通信の解読――という、ほぼ確実にオリガミの存在がバレるであろう事態も目の前に迫っている。


そして、そうなったときのために、東堂家と笹木家の当主に「オリガミAI」の存在を伝える必要が出てきた今、最も身近な人間の一人である千穂にオリガミについて伝えないのは、やはりおかしいだろう。


「千穂からオリガミのことが漏洩するリスクは?」


念の為、オリガミに確認する。


『大丈夫でしょう。千穂さんもあれから随分成長されました。用心深くなっています。』


オリガミが、少し間を置いて続ける。


『それに……私が見ていますので。彼女がどれだけ舞い上がっても、いざというときはお兄様の声で彼女の感情をコントロールさせていただきます。』


「俺の声で?」


『はい。千穂さんにとって、お兄様の声は絶対ですからね。』


そういえば、千穂の大学受験のときも、オリガミは似たようなことをやってたな。


確かにあれは効果が抜群だった。


『今となっては、千穂さんに私のことを秘密にすることによる、わだかまりや行動制約の方が、お兄様の幸せな未来への障害となります。』


「……そうだな」


あとは、俺が腹を決めるということだけか。


※※※


『それと……念のため確認すべきことがあります。』


オリガミの声が、少しだけ硬くなった。


『千穂さんに覚悟を問わねばなりません。』


「覚悟?」


『はい……彼女にこれから起こり得る事態について確認すべきでしょう。』


俺は、黙って続きを待った。


『ネムさんは、命をかけてでも私たちと共にいてくれると言ってくれました。ですが、千穂さんもそうとは言えないので。』


確かにそのとおりだ。


今なんて、事情すら伝えずに、千穂の命を俺の目的のために、勝手にベットしているような状態だ。


そのリスクを伝えないのは、卑怯だ。


千穂には、選ぶ権利がある。


俺たちと一緒にいるか。それとも、離れるか。


「正直、千穂が離れてったら、俺は立ち直れないと思うけど……」


『では、なし崩しに巻き込みますか?』


オリガミが、淡々と言う。


『事態が進行した後なら、本人承諾なく巻き込むことなど、いくらでも可能ですが。』


「……だめだ」


俺はゆっくりと首を横に振る。


「やりたくない……千穂への裏切りだ」


『でしょうね。お兄様ならそう言われると思っておりました。』


オリガミの声が、柔らかくなった。


すべてを告げた結果、千穂が離れていくかもしれない。


その可能性が、俺の心をキュッと締め付ける。


怖い!怖い!怖い!怖い!


でも、だからこそ、ちゃんと伝えなきゃいけない。


オリガミが、少し間を置いた。


『……そうですね。グダグダされてても仕方有りません。千穂さんの誕生日である7月7日にしましょう。7月7日に、千穂さんにすべてを伝えて下さい。』


「7月7日……千穂の誕生日でもあり、七夕でもある日か。あと三ヶ月ってところか」


『はい。それまでに、可能な限りの準備を整えていきましょう。これから忙しくなりますよ?』


※※※


オリガミが、話題を切り替えた。


人と人との話しから、国と俺たちのシビアな話へと、移行する。


『天穿(あまうがち)の配備は必須です。ことが起きたときに、これが間に合わなければ、戦っても無駄です。私の引き渡し要求に応じてください。』


「……そんなことはさせない」


オリガミの唐突な提案を、即座に首を横に振って否定する。


そんなのは……絶対に無理だ。


『こればかりは引けません。お兄様の命に関わります。言うことを聞き入れてくださらないのであれば、私は自己消去します。』


「だめだ!自己消去なんて絶対に駄目だ!」


『勝てない戦いをするのは愚か者のやることです。お兄様のことを大切におもっている、千穂さんやネムさん、そして私のためにも、聞き入れてください。』


部屋が、静まり返った。


俺の手が、小刻みに震えていた。


……オリガミの言っていることは正しい。


それは分かってる。分かってるが……続く言葉が見つからない。


絞り出すように、答えるしかなかった。


「……わかった」


クソッタレ!分かるわけがない。


やるしかない。


もう手段も選ばない。


とっとと花火会社を買収して、天穿を配備する!


天穿だ!天穿だ!天穿だ!


※※※


そんな俺の焦りを見抜いているのかいないのか、オリガミは説明を続ける。


『その他の計画についてお伝えします。』


『まず天蓋。研究所の屋上に質量配置を施します。これはDH-01の仕事ですね。』


DH-01。研究所内をシャカシャカと動き回る、汎用作業用ヒューマノイドロボットだ。見た目は不気味だが、頼れる奴らだ。


『次に千羽工業。天穿のスラスター量産と並行して、DH-02「イヌガミタイプ2」の製造に入ってもらいます。』


「ああ、設計図を見たよ。また頭がない犬型ロボットのやつな」


『頭なんて飾りですから。偉い人にはそれが……というのは置いておいて。DH-01の駆動系を流用することで、従来機の三倍近い運動性能を発揮します。』


三倍……まさか赤く塗るつもりじゃないだろうな。


『EMPへの耐性も向上していますので、対特殊部隊用の主力となります。三百体ほど欲しいですね。千羽工業には、少々無理をしていただきましょう。』


千羽社長の胃に穴が空かないか心配だ。


「天穿のスラスターを最優先だ。人手が足りないなら、新造したDH-01を回して手伝わせてくれ。社員には無理をさせないように……とは、今回は言えないな」


俺は拳を握りしめる。


「死ぬ気で……いや、死なない程度に、限界まで頑張ってもらってくれ」


報酬は、後でいくらでも払う。


だから今だけは、踏ん張ってくれ。


『ご安心を。貴重な製造ラインを潰すような真似はしませんよ。効率が落ちますから。』


……それもそうか。


社長や社員が倒れたら、困るのは俺たちだ。


いかんな。少し、冷静さを失っている。


※※※


『それともうひとつ……天穿からEMPを発生させる天穿EMPのシミュレーションに成功しました。』


天穿EMP?初めて聞く兵装だ。


EMPってことは電磁パルス兵器だよな?


『天穿EMPについて、その仕組みを説明します。』


オリガミが、解説モードに入った。


『天穿で、先端のゲートバリアを解除する直前に、弾頭のコイルに熱電池からの電流を流して強力な磁場を作っておきます。』


「ふむふむ」


『そして、極超音速での飛行中に、ゲートバリアを解除します。』


「解除……すると?」


『マッハ20を超える大気の壁が、物理的なハンマーとなってコイルを一瞬で押し潰します。』


「コイルが押しつぶされる……?」


『はい。コイルが物理的に急速圧縮されることで、内部の磁束密度が極限まで高まり……行き場を失った磁気エネルギーが強力な電磁パルス、つまりEMPとして一気に放出されるのです。』


「つまり……天穿自身の運動エネルギーを使って、電気を無理やり圧縮するってことか?」


『お兄様、理解が早いですね。その通りです。』


オリガミが、嬉しそうに言う。


『そこで発生するEMPは電子機器類を完全に破壊しますが、人間には影響ありません。』


『つまりです。天穿EMPは直撃させなくても、そのEMPが届く範囲で炸裂させるだけで、空母であってもイージス艦であっても、浮かんでいるだけの鉄塊(てっかい)に成り下がるわけです。』


……なるほど。


『非殺傷兵器となりますので、お兄様の「人が死ぬかも」という懸念は、天穿EMPにより格段に少なくなるでしょう。』


「分かった。非殺傷なのはいいな。……でも、とりあえず構造がシンプルな通常の天穿から作ろう。天穿EMPはその後でいい」


『……よろしいのですか?通常の天穿は、威力が有りすぎます。当て方によっては、人が死にますよ?』


「構わない。EMPは精密な制御が必要だろ?もし失敗したら、俺たちが終わる。……まずは確実に相手を無力化できる手段が必要だ」


『承知いたしました。』


優先順位を間違えてはいけない。


綺麗な手段にこだわって、オリガミを失うくらいなら……俺は人殺しの汚名をかぶる。


先に攻撃してくるのは向こうだ。文句はないはずだ。


俺たちは、自分の身を守っているだけなのだから。


攻めてくるやつが悪いのだ。


※※※


オリガミは説明を続ける。


『この大量生産を正当化するカバーストーリー。それが「人工流星プロジェクト」です。』


「人工流星……?」


『はい。エンターテイメントとして、夜空に人工的な流れ星を流すというストーリーです。』


『強い光を発する熱電池と、それを高高度まで運ぶマイクロロケット。これらを「花火の一種」として扱うことで、天穿EMPの構成部品を、堂々と大量発注する口実とします。』


「なるほど……人工流星プロジェクトか」


俺は、その発想に感心した。


「それなら、ドローンと組み合わせた壮大な空中ショーってことで話が通りそうだな……いいじゃないか!!」


『はい。これが天穿のような兵器に転用されるかもなどと、疑う人間はいないでしょう。』


「つまりだ!なんにせよ花火会社があれば、全部なんとかなるというわけだな!」


『はい、そのとおりです。お兄様、頑張りましょうっ。』


「おう!」


俺が、今やれること……それは花火会社を特急で買収して、マイクロロケットを作ることだ。


他のことは後回しでいい。


今はそれだけに集中しよう。


※※※


そんな決意を固めた、そのときだった。


廊下から、バタバタと足音が近づいてくる。


……ん?


バタンッ!!


自室のドアが、破壊されんばかりの勢いで開け放たれた。


「しょうちゃん!」


「正太郎!」


そこには、肩で息をする千穂とネムが立っていた。


そして、その二人の姿は……なぜか、スーツ姿だった。


身体のラインを強調するタイトなジャケットに、膝上のタイトスカート。


胸元のボタンは一つだけ外され、普段の二人からは感じられないような、背徳的なまでの色気が漂っている。


俺の性癖ど真ん中、スーツ美女姿だ。


「え?な、なに?なんでスーツ?」


俺は思考がショートし、完全に混乱した。


千穂が、瞳に涙を溜めながら詰め寄ってくる。


「しょうちゃん……捨てないでぇ!」


「へ?なんで……?」


「頑張るから!もっとしょうちゃん満足させるから!だから……捨てないでぇ!」


千穂の目から、ポロポロと大粒の涙がこぼれ落ちる。


一方、ネムはというと……腕を組み、冷ややかな視線で俺を見下ろしていた。


「……で?正太郎。あの『オリ子』とかいうヤツが好きなのか?」


「はあ?なんでそうなる?」


「さっきは、ずいぶんと楽しそうに話をしてたじゃないか。鼻の下伸ばしてさ……。まあ、いいか。千穂ちゃん、やるぞ。わからせだ」


「う、うん!わからせる!」


「へ?ちょ、ま」


俺は飛びかかってきたスーツ姿の千穂とネムに、ベッドへと押し倒された。


そして………


「え?え?え?お、おほほほほほおおおォォォン!」


オリガミと人の生死に関わる超シリアスな話をしていたはずだが……。


何か致命的な勘違いをしている千穂とネムに乱入され、俺は身も心もすっからかんになったのだった。

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