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オリガミ - 妹AIを神にするため、俺は成り上がる【カクヨム完結済/なろう連載中・累計59万PV】  作者: けーきまる
研究所を建設しよう

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正太郎専用魔法「折(せつ)」

「足りなかったのは、座標指定だけだろ?次は、絶対に成功させるからな?正太郎、見てろ?」


ネムが拳を握りしめて、再びフロア中央に移動する。


さっきは目を瞑ったのがまずかったんだよな。


今度こそ、成功するといいんだけど。


「むむむ……、イメージイメージ……縦幅……横幅……厚さ……傾き……あと座標……」


ネムがしっかりと目を見開き、前かがみになりながら、頭を両拳でグリグリして眼の前を凝視する。


またあの、頭ぐりぐりポーズだ。


なんなんだ、あれ。なんで頭をグリグリしてるんだ?


脳内メモリを整理してるのだろうか?なんか可愛い。


そんなことを思っているうちにイメージが固まったようだ、ネムが声たかだかに魔法のトリガーワードを言い放つ。


「よし――『けんばん』!」


キィンッ……!


高い金属音が響き、ネムの目の前の空気が揺れ、光が弾ける。


そして、現れる白い板。サイズは1メートル四方ぐらいか。


ネムの胸のあたりの高さにピタリと静止している。


「オリガミ……ど、どうだ……?」


ネムが恐る恐る、オリガミに尋ねる。


『ネムさん、成功です。おめでとうございます!』


「よし!よし!見たか、正太郎!ワタシが一番に『顕板』を成功させたぞ!」


「おお!ネム、すごいじゃないか!」


俺は、ネムが生成した板に近寄る。


なんで浮いてるんだ、これ?まじまじとそれを見る。


「……これ、重力とかはどうなってるの?」


『座標固定です。本来、地球は公転や自転をしているので、こんなことはできないはずなのですが……やはり、実に都合のいいシステムです。』


オリガミは、なんだか納得のいかない様子だ。


そんなオリガミを尻目に、俺は恐る恐る板の表面に手を伸ばす。


……おお、ちゃんと触れるな。


なんだかツルツルしてる。


押しても……ビクともしないな。


『座標固定ですからね。』


オリガミは、やっぱり納得のいかない様子だった。


「これ……強度はどれくらいなんだ?」


『魔導師のQF値と気合次第ですね。高QF値の魔導師が固くなれ固くなれ!と念じながら、発動させれば、ほぼ壊れないんじゃないでしょうか。』


術者の魔素の量で強度も変わるのか。


シンプルでわかりやすいな。


「な、なあ!正太郎、ワタシ、上に登ってみたいんだが、手伝ってくれないか?」


ネムが俺の袖を引っ張って、期待に満ちた目で見つめてくる。


「いいけど……オリガミ、これ急に消えたりしないよな?」


『発動者が消えろと念じなければ、消えません。あと、発動者からの距離が離れたら、時間経過により強度が下がっていくみたいですね。』


じゃあ、大丈夫か。


「ほら押してやるよ。気をつけろよ?」


「わかった!すごいぞ、人類初だ!魔法で空を飛ぶ人間だ!」


ネムは目をキラキラ輝かせながら、自分の作り出した板に、手をかける。


「んしょ、んしょ……ほら正太郎!もっと、ワタシのお尻を上に押してくれよ!気をつかわなくて、いいからさ!」


「わ、わかったよ。いくぞ?おいしょっと!ふうぅ!」


ネムの尻を両手で支えて、ぐいっと持ち上げる。


や、柔らかい……。手のひらに伝わる弾力。


「んしょ……んしょ……よ、よし、乗れた!正太郎、もう大丈夫だから、お尻から手を離せ!も、揉むな!」


しまった。自動的に手が動いてしまった。


「おお……すごいぞ!高い!正太郎が目線の下にいるぞ!」


ネムが嬉しそうに、板の上で仁王立ちして、こちらを見下ろしている。


「おおー!すごいな、ネム!な、なあ!俺も乗ってもいいか?」


「おう、こい!ワタシの作った板に乗る許可をやろう!」


やったぜ!でも一応確認しておこう。


壊れてネムが怪我したら大変だ。


「……オリガミ、二人くらい大丈夫だよな?」


『……どうでしょうか?大した高さでもないですし、気を付けてチャレンジされては?』


「わかった。ほいやっ!」


俺も板の端を掴んで、よじ登る。


壊れそうには……ない。大丈夫そうだ。


「おお、高い!すごいなこれ……本当に上に乗っても大丈夫なんだな……」


「ビクともしないぞ!ほらっ!」


ネムが板の上でジャンプする。


俺も軽くジャンプする。おお、本当だ!すごい!


「な、なあ!次、俺がやってみたいんだけどいいか?」


俺も自分で作ってみたくなった。


「ムフフフ……ワタシはこの上から高みの見物させてもらうからな」


なんだそれ!自分の作った浮いた板に乗って高みの見物とか……羨ましい!


※※※


「じゃあ、いくぞ!」


俺もネムのマネをして、頭を拳でグリグリしてみる。


イメージだ……イメージ……板のイメージ……?


なんかしっくりこないな……じゃあ、紙なら?


折り紙の紙か……しっくりイメージできる……。


紙も薄い板みたいなもんだろ。


要は板の高さの値を小さくすればいいんだ。


……折り紙のための紙と考えると、途端にイメージがはっきりしてきた。


まるで解像度が一気に4Kになったみたいだ。


やっぱり俺の脳は折り紙特化型なんだな。


大きさ……1m四方の正方形……厚さ……傾きは水平……あと座標……ふむ……三枚くらいまとめて行けそうだな。


色も変えられるんじゃないか?それぞれ、赤と青と緑。


うん、明確なイメージができた。


……いける!


後は、気合を込めて、トリガーワードを発するだけだ。


いくぞ……。


――『顕板!』


キィンッ、キィンッ、キィンッ!


三度の光と音が和音のように重なり合って響く。


「な!なんだってー!」


ネムが板の上から、驚きの声を上げる。


オリガミの声も狼狽気味だ。


『お、お兄様?なんですかこれは?私が行っていた、設定が上書きされました……。それに、三枚同時に発動なんて……!』


「ふっふっふ……どうよ?折り紙のための紙だと思ったらこんなもんよ!」


三枚同時とか、マルチタスクじゃん。並列処理余裕でした。


ああ……自分の才能が恐ろしい。


目の前に浮かんでいるのは、赤、青、緑のカラフルな三枚の紙だ。


『なるほど、折り紙ですか。確かに厚さは薄いし……色もカラフルですね。そういう発想はなかったです。さすが……さすが、お兄様です!』


「そうだろう、そうだろう」


お前のお兄様は、なかなかやる男なんだよ。


『「顕板」は板を作るための魔法ですが……お兄様用の新しい魔法を構築させていただきます。少々お待ちを……』


そう言い終わると、オリガミは黙り込んでしまう。魔法の構築に入ったのだろう。


え?俺専用魔法だって?なんだそのロマンなワード。専用なんたらって、燃えるよね。赤いやつみたいな。


「くうぅ!ただの板で喜んでたワタシが馬鹿みたいじゃないか!」


ネムが板の上で悔しそうにしている。


ごめんな……ネム……俺……天才でごめんな!


※※※


自分で作った浮遊する紙に手を伸ばす。


選んだのは赤い紙だ。


紙をイメージしたから、紙みたいに柔らかいかとも思ったが、そうでもないな。


ガチガチじゃないか。


よいしょっと!


ふむ……上に乗ってもなんともないな。


板の厚さと強度は関係ないのかな?


「よし、私も正太郎のつくった紙の上に乗ってみようじゃないか。お前に追いつくためのリサーチだ」


ネムは自分の作った板から降り、タタタッと俺の作った青い紙に近寄り、その上によじ登る。


「お、おい!一人で大丈夫か?」


「大丈夫だ。ワタシのより低い位置だったからな。おお、紙に色がついてるとなんかイメージが違うな!材質は……ワタシの板よりザラザラしてるな?」


ネムが座り込み、俺の板の表面をなでる。


確かに……少しザラザラしてるような。指先に伝わる、和紙のような繊維の感触。紙をイメージしたからなのかな。


「折り紙か……小さい頃から十年以上打ち込んできた、思い入れのある対象だもんな。そういう思い入れでも、発生する事象の規模が変わるのかもしれんな。興味深い」


確かに。俺は折り紙への思い入れだけは、誰にもまけないからな。


……じゃあ、ネムなら魔法でAI作る感じかな?アヤトリじゃん。


ネムは俺の作った紙をなで続けている。


「しょ、正太郎のコレ……ガチガチじゃないか……。す、すごいな?」


ネムが俺の紙の表面を撫でる。


ガチガチだって?なんだか変な気分になってきた。


「だろ……?ほら、もっと撫でてみて。もっとガチガチになるかも」


「そ、そうか……?」


ネムが真剣な表情で、紙の表面を撫で続ける。


ああ……なんかいい……。


ネムが俺のを、触ってくれてるんだ……。


興奮する……。


「おわっ!なんだか端の方が反り上がったぞ!なんだこれ!?すごいな!どうやってやるんだ!?」


……どうやら、出来上がった板は、イメージで多少操作できるようだ。


煩悩からのイメージはすごいからな。


「な、なあ!教えてくれよ正太郎!どうやったんだ?」


さ、さすがに言えない。


言いづらい。


俺、脳みそピンクすぎるだろ。


※※※


『お待たせしました。魔法構築を完了しました。』


オリガミの声が響く。


『折りたたむ機能を追加してみました。お兄様の大好きな、折り紙が作れる魔法となりました。』


「それそれ!それが欲しかった!」


さすがオリガミだ!


『折り進む様子を明確にイメージしてみて下さい。できるだけ詳細にイメージすることで、思った通りの形になると思われます。イメージ項目が膨大で、発現条件がシビアなので……おそらくお兄様しか使えません。』


発現条件がシビアなのか。


それだけ明確なイメージが必要になるということだろう。


だが、20年近く没頭してきた折り紙だ。イメージなら誰にも負けない。


『名前は私が付けさせていただきました、お兄様専用魔法「折(せつ)」です。』


シンプルでかっこいい……オリガミ……超わかってるじゃないか。


「専用魔法『折(せつ)』だと……なんだよそれ……かっこよすぎだろ……正太郎!うらやましい!うらやましい!うらやましい!」


ネムが俺の作った紙の上で、悔しそうに叫んでいる。


かっこいいということには、ネムも同意見のようだ。


ふっふっふ。


とうとう俺の才能が花開いてしまったか。


「まあまあ、まだ使えるかどうかわからないしさ。ちょっとためしてみるわ」


「グスッ!そ、それもそうだな……正太郎、頑張れよ?」


な、涙ぐんでやがる。そんなに悔しいのか。


※※※


作るのは折り鶴でいいだろう。


今まで何万羽と折ってきた。


折り鶴と聞くと、折る様子の映像が、勝手に頭の中で始まるレベルだ。


じゃあいくぞ。イメージイメージ……。


まず、あるのは眼の前の空間に浮かぶ正方形の黒い紙。


それが勝手に折り畳まれ、菱形に開かれる。


折り目を意識して、イメージを続ける。


角を内側へ折り込み、中割り折りで首と尾が引き出される。


そして――翼を広げると、掌の上に小さな鶴が立ち上がる。


完成だ。


よし、イメージは完璧だ。


俺は眼の前の空間を睨みつけ。折り鶴が目の前の空間に浮いていることをイメージし、気合を入れてトリガーワードを放つ。


――『折(せつ)!』


シュンッ……


まるで和紙が風を切るような、繊細で鋭い音が響く。わずかな光が空間に滲む。


目の前に現れたのは、先程よりも大きな黒い正方形の紙。


そして……それが、見えない力に導かれるように自らパタパタと折りたたまれていく。


カサッ、カサッ……。


まるで本物の紙を折るような、乾いた小気味良い音。


角が内側へ畳まれ、菱形が立体的に開き、細い首と尾がスルスルと引き出される。


最後に、翼が左右に広がり……。


――空中に浮かぶ黒い「折り鶴」が完成したのだった。


フロアの中で、その黒い折り鶴は、強烈な存在感を放っていた。


「おお!やったぞ!できた!」


俺は思わずガッツポーズを決めてしまう。


「しょ、正太郎!すごい!すごすぎだろ!やるじゃないか!かっこいい!正太郎、かっこいいじゃないか!」


ネムが目を輝かせて、俺の作った折り鶴を見つめている。


空中で静止する黒い鶴。


『折り鶴なんて複雑なものを……信じられません。数多の頂点座標と面情報を、たった一度のイメージで定義しきるなんて……さすがお兄様ですっ。』


オリガミも一発成功は想定外だったみたいだ。


それにしても……なんだこれ……なんて……なんていい魔法なんだ……!


「オリガミ本当にありがとうな。俺……お前が妹でよかったよ」


俺は思わず涙ぐんでしまう。


これは今まで頑張ってた俺への世界からのご褒美なんじゃなかろうか。


感謝しかない。


『よかったですね、お兄様。お力になれて……本当に嬉しいです。これで……これでどこでもいつでも折り紙が折れますね。』


「しょ、しょうたろうには、嬉しいことだもんな?よかったな?」


オリガミもネムも半ベソの俺に優しい声をかけてくれる。


「ああ!ありがとう!ありがとう!」


俺、幸せだよ!


※※※


空中に折り鶴を作ってから、数分たった。


折り鶴は、まだ空中に存在している。


動かないかな?と思い回る様子をイメージしてみたら、ゆっくりと回転をはじめた。


オリガミいわく、これは事象記述の追記というらしい。


魔法発動後でも、少しだけその魔法に干渉できるとのことだ。


さっきの、ネムに触られて元気よく反り上がってしまった紙?もそれが原因だったみたいだ。


そして、そのネムはというと……駄々をこねた子供のように、地団駄を踏んでいた。


どうやら後になって、悔しさが込み上げてきたようだ。


「くそう!悔しい、悔しすぎるぞ!正太郎、次は負けないからな!今夜から、夜の大運動会をやりまくるからな!夜になったらお前の夜のオトナ部屋にいくから!私の魔法適性の向上に協力してもらうぞ!」


ネムが拳を握りしめて、高らかに宣言する。


あれは夜のオトナ部屋じゃない。自室だ。


だが、そんな彼女の声に、俺は深く頷いた。


これっぽっちも下心なんてない。あくまでネムのためを思ってだ。本当に、本当に、本当にネムのため『だけ』を思って、賛同するのだ。


「ああ、ネムのために頑張るよ。俺は愛するネムのためなら、何でもするからな!」


ふっふっふ。


ネムの瞳にやる気の炎が宿っている。今夜からはフィーバーだ。


彼女はやると言ったら、やる女だ。今日からは気合の入りようが変わるだろう。


いやっほう!



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