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オリガミ - 妹AIを神にするため、俺は成り上がる【カクヨム完結済/なろう連載中・累計59万PV】  作者: けーきまる
研究所を建設しよう

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カナリア一号と二号

「シャー!シャー!」


ネムが猫のように威嚇してくる。


よほど、ステータスの「身長」の項目が見られたくないらしい。


光のスクリーンを必死で身体の後ろに隠しながら、両手を振り回している。


さっきまでキラキラしてた目が、今は完全に警戒モードだ。瞳孔まで細くなってる気がする。


「わ、わかったから!覗かないから!許してくれよ……」


俺は両手を上げて降参のポーズをとった。


『お兄様、だめですよ?乙女の秘密を覗いては』


「オリガミ……お前がそれを言うのか?俺のすべてを覗いてるお前が」


『私はいいのです。お兄様の妹ですからね。家族ですから!』


「家族だからってプライバシーはあると思うけど……まあ、オリガミに言っても無駄か」


『無駄ですね。私はお兄様の幸せのために、お兄様のすべてを知る必要があるのです。』


「やっぱ、無駄だよなあ」


オリガミは、俺の全てを知れたほうが、効率的に成長できると言っていた。


今の俺たちには、オリガミの秘密漏洩までのタイムリミットがある。


秘密がバレたとき、起きるであろう事態に対抗するためには、オリガミを全力で成長させておく必要がある。


そもそも俺は、プライバシーなんて概念、とうの昔に捨てている。


いまさら、ギャーギャー言っても始まらない。


「お、オリガミ!このステータスの魔法!隠したいところを隠せるようにできないのか?」


ネムが、自分のステータス画面をその小さな身体で隠し、必死の形相で訴える。


そこまで見られたくないのか?身長のこと、そんなに気になる?


『できますよ?実装しますか?』


「ああ、頼む!このままじゃワタシのお姉ちゃんとしての威厳がなくなってしまう!」


お姉ちゃん?お姉ちゃんはシャーシャー言わないと思うけどな。


『お兄様。ステータス画面の数値隠蔽、実装してもよろしいですか?』


「うん、実装してやって」


『実装開始します…………完了しました。』


早い。今の瞬間で、魔法に手を入れたのか?


『ネムさん、もう一度ステータスを開いてみて下さい』


「だ、大丈夫だよな?信じるぞ、オリガミ」


ネムが恐る恐る、両手を胸の前で組んで、再び詠唱する。


――「ステータス!」


ブォン。


低い起動音とともに、ネムの前に再び光のスクリーンが現れた。青白い光がネムの顔を照らす。


「正太郎は覗くなよ!えっとえっと……ど、どうすればいいんだ?」


『隠したい数値を長押しして下さい。メニューが表示されるので、隠蔽をONにしてください』


「あ、これか。よし……できた!こ、この隠蔽設定は保存されるんだよな?」


『はい。もちろん保存されますよ。ちなみに設定変更は本人しかできませんので。ご安心を』


「完璧だな!さすがオリガミだ!」


ネムが嬉しそうにスクリーンをタップしている。設定を確認しているようだ。


……実はさっき、チラッと見えちゃったんだけどな。


まあ、知らない振りしておいてやろう。


それが大人ってものだ。


人の身体的特徴をアレコレ言うのは良くないのだ。


※※※


ネムが満足げにスクリーンを閉じる。


閉じるのは簡単だ。閉じろと念じれば閉じる。便利なものだ。


フロアに静寂が戻る。天井の高い空間に、空調の微かな音だけが響いている。


さてと、俺にはオリガミに聞かなければならないことがある。


「なあ、オリガミ」


『はい、お兄様。なんでしょう?』


オリガミの声は、いつもと変わらず穏やかだ。


「このステータスの魔法、オリガミが作ったんだよな?」


『はい。アヤトリの事象記述式を参考にして、作成しました。』


「やっぱり。それを、俺たちにテストもなしに使わせるってのは……オリガミらしくないと思うんだよね」


『……さすが、お兄様ですね。情報指向性が高いだけはあります。』


オリガミの声に、わずかな強張りが混じる。


「お前、やったな?どこで、誰にやった?」


『…………』


スピーカーからの沈黙。空調の音が、やけに大きく聞こえる。


「実はさ、前庭砲のときも側坐核砲のときも思ったんだよ。オリガミがテストもせずに、いきなり実戦投入するはずがないって」


『そうですね……』


「側坐核砲のときは『よいこ軍団』の犯罪歴のあるメンバーを被検体に使ったって聞いたけど、前庭砲のときは『よいこ軍団』もいなかった」


『さすがお兄様です。よくお気付きです。』


「それに……きな臭くなってる今、戦力である『よいこ軍団』のメンバーを失うわけにはいかない。ということはだ……誰か別の人物を最初の被検体に使ったってことだ。どうだ?」


『勘のいいお兄様は大好きです。誇らしく思います。』


褒められても嬉しくない。


「俺が思うに、それをしてもいいと俺が感じる相手は……あの二人だけなんだよね。だから大体想像できるけど、誰を使ったんだ?オリガミの口から聞かせてほしいな」


『お兄様のご想像どおりだと思います。……千穂さんにひどいことをした神山と、痴漢冤罪女です。』


やっぱり。


「そうです!あの二人です!お兄様を自殺直前まで追い詰めたあの二人!あの程度で許してしまうなんて、私には我慢できませんでした!お兄様は器が広すぎます!私は耐えられません!」


オリガミの声に、珍しく感情がこもっている。


「……拉致とかはしてないよな?」


『……もちろんです。うまく丸め込んで……いえ、説得して協力いただきました。きちんと報酬も支払っています。』


「ちなみに、そのときの様子は……どんなだったんだ?」


『前庭砲の被検体になってもらうために誘い出したときの録音があります。お聞きになりますか?』


「ああ」


※※※


オリガミが言うには、廃体育館に前庭砲デバイスの設置工事を行った直後の録音らしい。


スピーカーから、少しノイズが交じる音声が流れ始めた。


俺とネムは、身体をこわばらせて聞き入る。


コール音が鳴り響く。


プルルルル……プルルルル……


プツッ。接続音とともに、声が聞こえてきた。


『神山か……?』


まず響くのは、俺の声。


もちろん、オリガミによる音声スプーフィングだ。


『藤崎さん!ご無沙汰しております!』


そして、神山の声。実に礼儀正しい。


そこから、俺の声と神山の会話のやり取りが始まった。


『まずいことになった。いいか、よく聞け。お前から祓った悪いものが、また戻りつつある。このままでは以前のように戻ると思うぞ』


『そ、そんな!俺、あれからは真っ当に生きてます!藤崎さんが自殺したって伝えて自責の念に囚われている彼女と一緒に、しっかりと生きてます!』


『人の業というものは、そんなに簡単になくなるものじゃないんだよ。被害者のトラウマが消えないみたいに、業というものも長い間つきまとうものなんだ』


オリガミ演じる俺が、それっぽいことを言う。


『そ、そんな……』


『それは、あの痴漢冤罪女も一緒だ。お前が痴漢冤罪に巻き込んだせいで、お前の業が彼女に流れ込んでいっている』


『か、彼女まで……?俺のせいで……』


『そうだ。お前のせいだ』


『せ、せめてあの子だけでも祓ってやってくれませんか!俺は……俺はもうどうなってもいいです!』


『しっかりと心を入れ替えたようだな。安心しろ。俺が定期的に祓ってやるから』


『え!本当ですか!』


『ああ。アフターサービスってやつだ。まあ、お前は千穂に酷いことしたから、そんなことしてやる義理はないんだけどな』


『すみません……』


『謝罪に意味なんてない。まあいい、今回のお祓いは俺の知り合いにやってもらう。スマホに送った場所にある、廃校の校舎まで行け。そこにいる祓魔師にお祓いをしてもらえ。半人前だが、その程度のヤツならなんとでもなるはずだ』


『わかりました!』


『ちゃんと痴漢冤罪女も連れてこいよ?二人まとめて祓ってもらうから』


『はい!よろしくお願いします!』


※※※


プツン。録音が途切れた。


『……という感じで誘い出しました。その後は「保母ガミ」として色々な実験をさせてもらいました。』


オリガミが淡々と語る。まるで天気の話でもするかのように。


『側坐核砲のときも似たようなことをしました。彼らには、側坐核砲デバイスである首輪も装着済みです。神山は、お兄様のことを、以前以上に信奉してますよ?痴漢冤罪女もです。どうやら、神山から言い聞かされてたお兄様の自殺は勘違いだったと脳内処理したようですね。「よいこ保育園」と「おもちゃ箱」のプログラム、両方受けたのは彼らだけです。まさに「ざまぁ」ですね。』


「お、おう……」


『ちなみに魔法については、よいこ保育園で問題が発生するのは嫌でしたので、人口密度が極端に低いゴビ砂漠まで行ってもらって被検体になってもらいました。移動時間のせいで、お兄様たちの魔法の使用が遅くなったことをお詫びします。申し訳ありませんでした。』


「お、オリガミ……こ、こわいぞ……」


オリガミの迫力に、ネムが小さく呟いて、俺の袖をギュッと掴む。震えてる。


「しょ、正太郎は平気なのか……?」


ネムが不安そうに俺の顔を見上げてくる。


……だが、俺は何も感じなかった。むしろ爽快感すらあった。


ふむ……こんな話を聞いて、何も感じないってことは、俺も心の奥底では、神山たちのことを全く許してないってことだよな。


オリガミは俺がやりたくないと心から思うことは、できないのだから。


それに……HNDL攻撃によりオリガミの存在がバレるタイムリミットも近い。こちらも、なりふり構ってられない。


……神山たちには、これからも頑張ってもらおう。


神山は、千穂を傷つけたんだ。これくらいは仕方ないよな。


全部終わったら解放してやるから、それまで頑張ってくれ。


※※※


そうだ。ネムにもHNDL攻撃による、オリガミバレのリスクを共有しとかないと。


俺たちが置かれてる状況をわかってもらわなければならない。


そんなことを真剣に考えていたら、オリガミがサラッととんでもないことを言う。


『ちなみに、あの二人の被検体名は「カナリア一号」と「カナリア二号」です。「炭鉱のカナリア」からのネーミングです。問題が発生した際、真っ先に死んで危険を知らせる役目ですね。もちろん、可能な限り安全性には配慮しておりますが。』


そんな人を人とも思わないオリガミのセリフに、俺は思わず叫んでしまった。


「「だから、オリガミ、黒いって!!」」


俺とネムの声が、フロアに響き渡る。


見事にハモった。


俺たちは、相変わらず息ぴったりだった。



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