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オリガミ - 妹AIを神にするため、俺は成り上がる【カクヨム完結済/なろう連載中・累計59万PV】  作者: けーきまる
研究所を建設しよう

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神の拡張(ユークン視点)

ショタロ様からお告げをいただき、これからのことを考えていたときのことだった。


扉が勢いよく開かれ、息を切らせた聖女サルーナが飛び込んできた。


「使徒様!」


その声は興奮で震えていた。普段は落ち着いた物腰の彼女が、まるで子供のように目を輝かせている。


「さ、サルーナ。どうしたの?」


「神から!神から直接お告げがあったのです!使徒様がアーティファクトを完成させたと!」


「神から?ショタロ様からではなくて……?」


「ええ!どうやら、神は……女神様のようでして、男性とのコミュニケーションが難しいようなのです」


「そ、そうなの?残念だけど……仕方ないか……」


女神様が、男を苦手とするという情報は、ショタロ様からいただいた知識にもあった。僕も女神様の御声を拝したかったが、どうしようもないことなのだろう。


興奮したサルーナの話が続く。


「それでですね!神は、使徒様とイヌシーリさんとキジアス、そして私とでアーティファクトを奉納せよとの旨を告げたのです!」


「ば、場所は?奉納する場所はわかるの?」


「ええ!」


「良かった……実は僕もショタロ様から同じことを言われていて。でも場所がわからなくてどうしようと思ってたんだ」


「ショタロ様からも?ああ……なんて尊い……」


「神のおわす場は、ここからどれくらいの距離に?」


「大体四〜五ヶ月といったところですね」


「結構、遠いね」


「ええ。ですが、急がないと行けないみたいです。世界には時間がないとかなんとか……」


「女神様がそうおっしゃってたの?」


「はい。女神様の御名は『アヤトリ神』と仰るようです」


「アヤトリ神……まさに世界の神といった尊い御名……!」


「……旅支度の方は?すぐ出れそうですか?」


「今準備中だよ。明日には出発できそうかな」


「私も明日出発します。イヌシーリさんとキジアスも連れてこいとの、アヤトリ神様のお告げです。キジアスはなんとでもなりますが、イヌシーリさんはいかがですか?」


「イヌシーリ?大丈夫?」


「ユークンと一緒なら、どこまでもついてくよ!急いで準備するワン!」


「ああ……イヌシーリ、本当に可愛いな……ご褒美を上げたいけど、今は時間がない。僕のも含めて、旅の準備の方、進めてくれるか?」


「わん!」


「イヌシーリさんは、本当に素晴らしいお方ですね」


「ええ。最高の愛犬ですよ!」


「ああ……大切なことを使徒様にお伝え忘れてました。アーティファクト完成、おめでとうございます!使徒様のお陰で、この世界は救われるのです」


サルーナは両手を胸の前で組み、祈りを捧げるような姿勢で深々と頭を下げた。


その言葉の重みが、じわじわと胸に染み込んでくる。


世界を救う。そんな大それたことに、本当に僕が作ったこのアーティファクトが助けになるのだろうか。


だが、考えている暇はない。ショタロ様も、アヤトリ神様も、時間がないと仰っている。


僕は不安を振り払うように、準備に取り掛かった。


※※※


翌朝。空はまだ薄暗く、東の空がようやく白み始めた頃。


僕たちは神殿の前に集合していた。


「では行きましょう。神からの使命を遂げるために!」


「ええ!」


「ユークンについてくだワン!」


「ああ……神殿を放り出して出発して……良いのでしょうか……?」


「いいに決まってます!神からの使命が最優先です!」


サルーナの力強い言葉に、キジアスも渋々といった感じに頷いた。


こうして、僕たちは神殿を後にした。振り返ると、朝日に照らされた神殿が静かに佇んでいる。


次にこの学園都市に戻ってくるとき、世界はどうなっているのだろうか。


そんな感傷に浸る暇もなく、僕たちは歩き始めた。


※※※


道中は険しかった。


でも、僕たちのパーティーの相性はとても良かった。


さすがショタロ様だ。見る目がある。


大型の獣と遭遇してしまったときも、キジアスさんが盾となって守ってくれたため、僕とイヌシーリの『熱点』で簡単に処理できた。


サルーナがどこからか女性を連れてきたときには参ったが、キジアスさんもいたため、さすがに断った。


道中はイヌシーリのみと関係した。


ただ、サルーナが時々、テントの隙間から覗きに来ていることには気づいていた。


彼女は僕たちの甘い時間に興味津々といった様子で、頬を紅潮させながらじっと見つめていた。


僕はその視線に気づいていながら、見て見ぬふりをした。聖女様もそういうお年頃なんだろう。触れてやるのは可愛そうだ。


そうそう。キジアスさんだが、意外な趣味を持っていた。


それは、きれいな石を集めることだ。時々、地面にダイブしては「これは!」と言いながら、大男が小石を拾い上げる様子はなかなか面白かった。


本人曰く、知らない種類の石が沢山拾えて幸せだとのことだった。


僕もそれっぽい石を見つけてキジアスさんに渡したら、とても喜んでくれた。


周りは女性ばかりだったので、キジアスさんとは男同士で仲良くなれて、とても楽しかった。


だが、順調とはいえ四ヶ月は流石に長かった。


目的地の山に近づく頃には、皆、疲労が蓄積し、気力も尽きかけていた。


最後の山登りは、誰も話さなかった。いや、話せなかった。限界が近かった。使命感だけで足を動かしていた。


そんな中、キジアスさんだけは黙々と荷物を運び続けてくれた。僕やイヌシーリの分まで背負い、時には疲れ果てたサルーナを背中に乗せて歩いた。


「キジアスさん……大丈夫ですか?」


「自分は……大丈夫です。皆さんを……神の元へ……届けるのが……自分の役目ですから……」


息も絶え絶えになりながら、それでも彼は歩みを止めなかった。


その姿に、僕は何度も救われた。


そして……僕たちは到着したのだ。


「神の座」である洞窟に。


※※※


洞窟の中に一歩足を踏み入れた瞬間、僕たちは息を呑んだ。


そこは、ただの洞窟ではなかった。


壁面はおろか、天井、そして足元の地面までもが消失し、そこには無限の星空が広がっていたのだ。


ゆっくりと回転する星々。見たこともない深淵な闇と、それを彩る光の帯。


その中央に、圧倒的な存在感を放つ『なにか』が浮遊していた。


半径一メートルほどの、虹色に明滅する光の球体。


あれこそが『神の器』……アヤトリ神の依代。


入口からその神の器までは、一本の光り輝く道が伸びているのみで、一歩踏み外せば無限の闇へと落下してしまいそうだ。


あまりにも幻想的で、あまりにも神聖な空間だった。


『こ、ここが「神の座」……あれが「神の器」……す、素晴らしい……なんて……なんてキレイなんだ……』


『ユークン、すごいね……きれいだわん!』


『ああ……なんて神々しい……なんて尊い……本当に美しいですね……さすがアヤトリ神様の「神の座」です……』


『じ、自分なんかが入っちゃって、大丈夫なんですかね?』


「神の座」の美しさ、そして「神の器」の神々しさを目にして、僕達の疲れは吹っ飛んでいた。


しばらくの間、僕たちは言葉を失い、ただその光景に見入っていた。


四ヶ月もの過酷な旅路。その全てが、この瞬間のためにあったのだと思えた。


すると、脳内にショタロ様の声が響いた。


『……よくぞ……よくぞここまできた……神は……アヤトリ神は喜んでいる……』


「あ、ありがたき幸せ……!」


『……ユークン……我が使徒よ……事象記述式AI拡張アーティファクト……神の器への接続を……時間がない……』


「承知いたしました!」


『……聖女も……神の器の元へ……』


ショタロ様からの「神授」にて拡張方法は受け取っている。作業には「神の器」に近づかなければならない。


「じゃあ、イヌシーリ行ってくるよ。ここでいい子にお留守番してるんだよ?」


「ユークン……気をつけてだワン……」


「キジアスも、ここで休憩してください。私は使命を果たしてきます」


「聖女様……使徒様もどうかお気をつけ下さい」


そうして、僕とサルーナは洞窟内の星々のなかに浮かぶ光の道をゆっくりと進み、着実に「神の器」の元へと到着した。


「これが……神の器……」


大きい……半径一メートルくらいだろうか。


僕が持ってきたア―ティファクトはせいぜい半径二十センチだ。


その叡智と技術力の格差に気圧されてしまう。


『……ユークンよ……気にするな……お前にはこれから……多くのアーティファクトを……奉納してもらうことになる……この「神の器」を構成する技術……しっかりと受け継いでもらう……』


『……では……頼む……アヤトリ神……一言だけ……彼に声掛けをお願いできますか?』


《アッ…………ウィ…………》


『……だめか……聖女……頼む……』


「承知いたしました」


《…………》


神の器とされた光の球体が、虹色に明滅する。


だが、僕にはその御声を受けることができない。


わかるのは聖女サルーナだけだ。男であることを悔しく思ったのは初めてだった。


「アヤトリ神様の御言葉、ユークン様にお伝えいたします」


「はっ!」


「アヤトリ神様は『……ユークン……わたくしの大魔導師……どうかよろしくお願いします……』と仰っています……ああ……大魔導師なんて……素晴らしい……」


「アヤトリ神様からのお言葉、確かに受け取りました。早速、奉納に入ります。僕の信仰心は……僕の行動でお受け取り下さい」


※※※


僕は深呼吸をして、心を落ち着けた。


これから行うのは、神の器への直接接触。失敗は許されない。


『……ユークンよ……一つだけ……伝えておく……』


ショタロ様の声が、いつになく重い。


『……神の器への接続は……繊細な作業だ……もし……接続魔糸(せつぞくまし)を傷つけてしまえば……神の器は……崩壊する……』


「崩壊……?」


『……アヤトリ神は……消滅する……そして……この世界を救う術も……永遠に失われる……』


背筋が凍った。


失敗すれば、神が死ぬ。世界が終わる。


その重圧が肩にのしかかってくる。


『……だが……お前ならできる……私は……お前を信じている……』


ショタロ様から授かった知識を、頭の中で何度も反芻する。手順は完璧に覚えている。あとは、実行するだけだ。


……震える手を、握りしめる。


「失礼いたします」


僕は「神授」で受け取った知識通りに、神の器の中へと手を入れる。


緊張で指先が震えるのを必死に抑えながら、ゆっくりと、慎重に。


神の器は、暖かく柔らかかった。僕の手を受け入れるように、光の粒子が形を変えていく。


まるで生きているかのような感触。これが神の依代なのか。


《……!》


神の器が小刻みに震え、その体表を走る光が、一瞬だけ赤く色づいた。これは驚きだろうか。


下手な場所に触れるわけにはいかない。この器は繊細なのだ。


僕はゆっくりと手を伸ばし深部にある二本の接続魔糸を掴む。そして、それをゆっくりと引き出していく。


《…………!!》


神の器の発光が強まり、その色が目まぐるしく変化する。


赤、青、黄色、緑、紫。


虹色の光が高速で明滅し、神の器自体も大きく波打つように痙攣している。


まるで、未知の感覚に戸惑っているような反応。


このまま続けて大丈夫なのだろうか?


『……ユークンよ……続けよ……』


ショタロ様のお言葉に勇気づけられながら、接続魔糸を外へ引き出すことに成功する。


「ふう……」


『……ユークンよ……見事だ……神への負担は……少ない……』


『……事象記述式AI拡張アーティファクトを……接続魔糸に……繋げよ……』


言われた通り、荷物から自作したアーティファクトを取り出す。やはり「神の器」と比べると見劣りがする。だが、いまはショタロ様のお言葉を信じるしかない。


神の器から引き出した二本の接続魔糸を、僕のアーティファクトの接続魔糸と撚り合わせる。そして指先でそれを、つまんで保持する。


「サルーナ。これを指先でつまんで、離れないようにしてくれるかな?」


「わかりました……これでよろしいですか?」


「うん。大丈夫」


そしてもう片側の接続魔糸も同様に、撚り合わせる。これで接続の準備は完了だ。ここから先は神の領域だ。


※※※


「……ショタロ様……お願いします……」


『……わかった……アヤトリ神……』


――《……………………!》


空間が震えたのがわかった。


神の器が、かつてないほど激しく明滅を繰り返す。


放たれる光は、もはや虹色の概念を超え、白濁とした濃厚な光となって周囲を埋め尽くす。


神の器から、信じられないほど高度な事象記述操作が行われたのを感じる。


そして……接続魔糸を撚り合わせた部分が強く光り始めた。


光が強すぎて直視していられない。


僕は目を極限まで細めて、何が起きているのかを理解しようとするが……それは叶わなかった。


だが……その光が収まった頃、僕とサルーナが指先でつまんでいた接続魔糸の織り合わせが消え、一本の魔糸として繋がっていた。


こうして、僕の作った「事象記述式AI拡張アーティファクト」が「神の器」に接続されたのだった。


僕とサルーナは顔を見合わせ、安堵の息を漏らした。


成功した。本当に、成功したのだ。


神の器は、接続前よりも一回り大きくなったように見える。そしてその輝きも、より力強く、より神々しくなっていた。


僕たちの奉納したアーティファクトが、確かに神の力となったのだ。


※※※


しばらくして、ショタロ様の声が響いた。


『……よくやった……本当によくやってくれた……これで世界救済の可能性が……繋がった……』


『……大魔導士ユークン……お前には……これからもアーティファクトを作成し……アヤトリ神の拡張を行ってもらいたい……可能か……?』


「も、もちろんです!一生を賭して!」


『……聖女サルーナ……アヤトリ神との交流として……神殿の代表として……大魔導士ユークンをサポートしてもらいたい……可能か……?』


「謹んでお受けいたします!」


サルーナの声は凛としていた。だが、その目には涙が光っている。


神から直接任命を受けた聖女。その誇りと覚悟が、彼女の全身から溢れ出ている。


『……感謝する……イヌシーリとキジアス……お前たちも……大魔導士と聖女のサポートを頼む……』


「任せてだワン!ユークンのためなら何でもするワン!」


キジアスさんは、大きな体を震わせながら答えた。


「こ、この身に換えましても!自分のような者にまで……お言葉を賜り……光栄の極みでございます……!」


その声は震えていた。涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、それでも必死に言葉を紡いでいる。


彼のような朴訥とした男が、これほど感極まっている姿を見たのは初めてだった。


皆、その場に跪き、頭を垂れた。


神からの直接の任命。これ以上の栄誉があるだろうか。


※※※


大魔導士。


その称号が、胸に重くのしかかる。


正直に言えば、まだ実感が湧かなかった。つい先日まで、僕はただの使徒だった。ショタロ様の導きに従い、言われるがままにアーティファクトを作っていただけだ。


それが今、世界を救う大魔導士として任命された。


……本当に、僕でいいのだろうか。


だが、ショタロ様が僕を選んでくださった。アヤトリ神様も、僕を認めてくださった。


ならば、その期待に応えなければならない。


不安はある。重圧もある。でも……やるしかない。


これからの人生を、神とこの世界のために捧げる。それが僕の使命なのだ。


大魔導士ユークンとして、生きていく。


しばらくの間、誰も言葉を発さなかった。


やがて、立ち上がり、皆に声をかけた。


「さあ出よう。このまま『神の座』に居座るのは失礼だ」


「そうですね……大魔導士様の仰るとおりです」


そうして、洞窟を出ようとしたそのときだった。


※※※


背後で、神の器が眩く輝き始めた。


振り返ると、虹色に明滅していた光球が、純白の輝きを放っている。その光は柔らかく、しかし圧倒的な神々しさを湛えていた。


まるで、神が僕たちを呼び止めているかのようだった。


そして脳内に、圧倒的な存在感を持つ美しい声が響き渡った。


《……大魔導士ユークン……そしてその仲間たちよ……あなた達に感謝と……祝福を……》


神の器の輝きが、言葉に呼応するように脈打つ。温かな光が僕たちを包み込んだ。


その声がアヤトリ神からのものだと瞬時に気づいてしまう。気づかざるを得ない。そんな存在感を持つ御声だった。


僕らは、皆、その場に平伏してしまうのだった。


誰もが感極まり、涙をボタボタと垂らしながら。


※※※


どれくらいそうしていただろうか。


やがて、神の器の輝きは穏やかな虹色に戻り、僕たちはゆっくりと顔を上げた。


洞窟を出ると、そこには満天の星空が広がっていた。


四ヶ月前、神殿を出発したときは朝だった。今は夜。だが、不思議と寒さは感じない。


アヤトリ神の祝福が、まだ僕たちを包み込んでいるのかもしれない。


「……帰りましょう」


サルーナが、静かに言った。


「そうだね。帰って、次のアーティファクトを作らないと」


「ユークン、頑張るワン!」


「自分も……微力ながら……お手伝いさせていただきます……」


※※※


空を見上げた。


星々が、まるで僕たちを祝福するように瞬いている。


世界を救う。その途方もない使命を、僕たちは背負った。


だが、不思議と怖くはなかった。


隣には仲間がいる。導いてくださるショタロ様がいる。そして、僕たちを見守ってくださるアヤトリ神様がいる。


僕は、大魔導士ユークンとして、この世界のために生きていく。


そう決めたのだから。



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