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オリガミ - 妹AIを神にするため、俺は成り上がる【カクヨム完結済/なろう連載中・累計59万PV】  作者: けーきまる
研究所を建設しよう

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マオートコの爆散(ユークン視点)

「村長、おはようございます」


早朝の澄んだ空気の中、僕は村長の家を訪れていた。


学園都市への出発の日だ。挨拶を欠かすわけにはいかない。


「ああ、ユークン。おはよう」


村長は少し疲れた顔で出迎えてくれた。


僕が学園都市へ行くことは、すでに伝えてある。


「村長、実は……本日学園都市に向かうことになりました。今までお世話になりました」


頭を下げる。感謝の言葉は本心だ。


この村での生活は、僕にとって重要な基盤となった。


「そうか……ユークン、村を出てって行ってしまうのか。まあ、仕方ないな。お前は、この村の中に収まるような才能じゃなかったからな」


村長は寂しげに笑い、僕の肩を叩いた。


「魔糸樫(ましがし)を切り倒すことで頂ける、村長の報酬のおかげで、ここまでやってこれました。本当にありがとうございました」


「あれは、正当な報酬だよ。ユークンのお陰で、邪魔な魔糸樫はほぼ切り倒した。これで村の周辺をもっと開拓できる。ユークンのおかげだ」


「そう言っていただけると、頑張ったかいがあります。感謝します」


社交辞令のようなやり取り。


だが、ここからが本番だ。


※※※


「それで……ですね……ひとつだけよろしいでしょうか?」


僕は声を潜め、周囲を伺う素振りを見せる。


「ん?なんだね?」


「これを見ていただけますか?」


頭の中で記述式を明確にイメージし、右手の人差し指を左に親指を上に向け、詠唱する。


――『記憶再生』


ヴォン……


空中に映像が浮かび上がる。あのときの映像だ。


「こ、これは?魔法かね?ユークン、魔法使いになってたのか……なるほど……だからか……」


村長が驚きの声を上げる。


無理もない。事象記述操作は一部の人間のみ知る秘匿された技術であるため、こんな辺境で見ることは、ほとんどないのだ。


「映像の方、見ていただけますでしょうか?」


僕が促すと、村長は恐る恐る映像に目を向けた。


映像の中では、マオートコの下卑た声が響きわたる。


『へへっ、カルシーリも好きだなぁ。相変わらず、最高だぜ。おらぁ!』


低俗な笑い声と、肉欲に溺れる声。それから、僕に対する侮辱と、托卵の宣言。


『ギャハハ!あいつ貧乏人だからな!俺様みたいに高いネックレスなんか買えねぇよ!』


『あ〜、そりゃそうかすまんな。お詫びに俺の優秀な種、たっぷりと仕込んでやるから勘弁してくれよ?』


マオートコがやらかしたことの決定的な証拠だ。


村長の顔色が見る見るうちに青ざめていく。


「はあ……マオートコ……あいつまたか……。ユークン、すまない……」


村長は頭を抱え、深いため息をついた。


また?


「また?どういうことですか?」


「あいつな、以前にも人妻に手を出してな、子供をこさえてるんだよ。人間関係を踏みにじりやがって……一度足らず二度までも……許せん……」


怒りと悲しみが入り混じった声。


村長の苦悩は深いようだ。


「本当に申し訳ない。私の教育が悪かった」


「いえ……村長のせいじゃないですよ。ほかのご兄弟は立派じゃないですか」


「そうだな……なんであいつだけ、あんなんなっちゃったんだろうなあ?ユークン、命だけは助けてやってくれないか?あれでも一応、私の息子なんだ。命さえ奪わないでくれたら、何をしてもいい。頼む……お願いだ……」


村長が悲壮な表情をして、僕の手を握り締める。


息子の愚行を知りつつも、親としての情を捨てきれない。哀れな人だ。


「命さえ奪わなければ、何してもいいのですか?」


「ケジメをつけていいかって聞きに来たんだろ?お前のそういう誠実なところ、好ましいよ。やっちゃってくれ。今後、他人に迷惑かけられないようにしてくれ」


村長の目には、決意の光が宿っていた。


恩のある村長からも、マオートコへのケジメの許可が降りた。


「……マオートコのマリーさんとの婚約もなしになりますが、よろしいですか?」


「大丈夫。マリー嬢の商会とはユークンが関係をつないでくれたからな。マオートコと結婚の必要はもうない」


「わかりました。ご理解、感謝いたします」


「いや、こちらこそ……本当に……本当にすまなかった」


村長は何度も頭を下げた。


僕は静かに村長の家を後にした。


これで、思う存分やれる。


※※※


そのすぐ後のことだった。


村の中をぶらぶらと散歩していると、マオートコが現れた。


「おい、ユークン!なんでお前がウチから出てくるんだ?」


どうやら、村長の家、つまりマオートコの自宅から出てきたところを見られたようだ。


相変わらずの虚勢を張った態度。僕への恐怖が透けて見えるが、自分の立場の方が上だった過去を取り戻そうと、声をかけずにはいられなかったのだろう。


「ああ。マオートコ。村長に挨拶をと思ってね」


「挨拶?なんでだよ?」


「僕、村を出るんだよ。学園都市で学園に入って研究することになった」


僕が告げると、マオートコの顔が歪んだ。


「はあ?んだと?なんでお前ばっかり……!」


「ショタロ様のおかげだね。本当に、全てショタロ様のおかげだ」


「ショタロ様?誰だよそいつ!」


「そいつ」だと?今、ショタロ様のことを「そいつ」呼ばわりしたのか?……許せん。ショタロ様を侮辱することだけは絶対に許せない。


仕方ない。村長には申し訳ないが、再起不能にさせてもらおう。


命は取らないようにしないとな。


僕はにっこりと笑いかけ、頭の中で記述式を明確にイメージし、再び右手の人差し指を左に親指を上に向け、詠唱する。


――『記憶再生』


ヴォン……


「マオートコこれ見て?」


「ん?なんだ?魔法?おまえ魔法まで!?くそっ!」


「いいから映像の中身見てよ」


空中に浮かび上がる映像。


今度は、マオートコとカルシーリの映像ではない。別の映像だ。


『なにこれ……すごすぎ!』


『すごい!すごい!ユークン、好きになっちゃう……!』


そう、僕がマリーさんと夜を過ごしたときの映像だ。映像内で、マリーさんの熱を帯びた声が響き渡る。


『な、なにこれ……!すごい!こんなの初めてぇ!ユークン、すごいぃぃ!』


『……っ、すごい……』


理性を失い、甘い熱に溺れるマリーさんの姿。これは、すごいな……。


マオートコは口をあんぐりと開け、呆然と映像を見つめている。


「な、なんだよこれ……」


「何って、マリーさんと夜を過ごしたときの映像だよ。最高だったよ。カルシーリはキュッとしてるけど、マリーさんはふわっとしてるんだ」


僕は涼しい顔で告げる。


「て、てめぇ!俺も、まだマリーと夜を過ごしてないのに!」


「あれ?そうだったの?ご愁傷さま。お先にいただいたよ。すごい良かったよ?あ、でもマオートコは、マリーさんと夜を過ごせないと思うよ?カルシーリとのこと伝えといたから。マリーさん怒ってたなあ……」


マオートコは、ぼくの言葉に顔を青くし、そしてすぐに真っ赤になった。


「おまえ!ぶっ殺す!」


腰のナイフを抜き、襲いかかってくるマオートコ。よし挑発成功。チョロいなあ。


マオートコが、ナイフを僕にお腹にむけて突き出してくる。殺意のこもった一撃だ。


だが、遅い。


僕は事象操作式をイメージし指を鳴らす。


――『熱点』


パンッ!


爆発音が響いた。


「うがっ!ああああああああっ!!!!!」


マオートコが急所を押さえて転げ回る。


マオートコの急所周辺にピンポイントで、瞬間的に強めの熱放射を行ったのだ。


「最初に刃物持ち出してきたのは君だよ?これは、正当防衛だからね?あれ?」


見下ろすと、マオートコの急所は酷い有様だった。


黒く焦げ、肉が崩れている。


もちろん、マオートコの急所は爆散していた。どこにも見当たらない。


さらには、出血がひどい。このままでは出血多量で死んでしまうだろう。


「やばいやばい。村長に殺すなって言われてたんだった」


少し焦って再び事象操作式を構築する。今度はじっくりコトコト煮込む弱火タイプの熱放射だ。


手を前に出し、再び指を鳴らす。


――『熱点(弱)』


ボワッ!


マオートコの急所周辺に火球を出現させる。そして、出血が止まるように、急所の傷口を炙る。


「があああああっ!!!」


「傷、焼いて止血するから。痛いけど、我慢してね?」


「あちぃ!あちぃ!ユークンやめてくれよぉ!頼むよぉ!」


マオートコが涙と鼻水を流して懇願する。


うへぇ。痛々しい。男として同情しちゃうな。


だが、出血が止まるまでは止められない。これは「治療」なのだから。


「だって、このままじゃ出血多量で死んじゃうよ。もうちょっと焼くからね」


「あああっ!いたいっ!あついいいっ!」


ジューッという肉の焼ける音と、香ばしい匂いが立ち込める。


マオートコの絶叫が村に響き渡る中、集まってきた村人たちは、驚愕の目でこちらを見つめていた。


特に男性陣の顔は、皆、一様に苦悶に歪んでいる。マオートコの痛みを、我がことのように想像してしまっているのだろう。


わかる。僕も男だ。同じ気持ちだよ。想像するだけで痛いもんね。


でも、ちゃんと止血しなきゃ死んじゃうからね。仕方ないんだよ。


そんな慈悲の心を込めて、僕は丁寧にじっくりとマオートコの急所を熱で炙り続けた。


やがて傷口は炭のように黒くなり、血管は完全に塞がったようだ。


よかった……これでマオートコを殺さずに済みそうだ。村長との約束を守れそうだ。


「よし。これで止血は出来たかな。出血多量で死なずに済んだよ。良かったね。僕、マオートコの命の恩人だね?」


「いてぇよおぉぉ……ああああ……俺のが……」


「マオートコ、僕、命の恩人だよね?感謝の言葉は?」


僕は優しく問いかける。


マオートコは絶望の表情で自身の急所を見つめていた。


「アレが……アレがなくなっちまったよおぉぉ……」


「マオートコ?感謝の言葉は?ずっと急所を凝視してるけど、まだ出血してる?もう一回焼いとく?」


右手を前に出して指を鳴らす準備をする。


その動作を見たマオートコは、ビクリと震えた。足がガクガクと震えている。


「やめてくれよぉ!ごめん!許してくれよぉ!」


「だから、命の恩人への感謝の言葉はないのって聞いてるの。次はないよ?」


冷たい声で告げる。だって、本当に命の恩人だからね。


マオートコが必死に首を振った。そして、慌てたように感謝の言葉を叫びはじめた。


「あ、あ、あ、ありがとうございます!ありがとうございます!ありがとうございます!」


「うん。うん。そういう感謝の言葉が述べられてこそ、立派な大人だよね」


僕は満足げに頷いた。


これで、村長との約束も果たせた。


マオートコが「他の人に迷惑かけれないように」できたのだから。


「うっうっうっ……」


地面に突っ伏して泣くマオートコ。


かつての偉そうな様子は見る影もない。この男、これからどうなっちゃうのかな?どうでもいいけど。


さて、そろそろ出発の時間だ。皆、村の出口で待ってるかもしれない。


「じゃあ、僕行くから。マオートコ、元気でね?」


僕は彼の背中を踏みつけないように気をつけながら、村の出口へとゆっくりと歩き出した。


空は青く、澄み渡っている。


今日は、いい天気だなあ。



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