玄武キャピタルの終わりと始まり
私は、玄武キャピタルという投資会社のCEOをしている。
玄武キャピタルは、この大陸において、急成長しているヘッジファンドだ。
徐々に、その名も知られてきている。これから、もっと多くの人に知られることになるだろう。
私の信条はただ一つ。金は頭を使って稼ぐ。
それだけだ。
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玄武キャピタルの金儲けの手法は、いつも大体同じだ。
まずは、金を持っている企業にあたりをつける。急にのし上がってきたような新興企業がいいだろう。脇が甘いことが多い。
そこの製品を入手し、徹底的にバラバラにし、使用されている部品や技術を洗い出す。最近は画像認識AIや構造解析AIのおかげで、この作業が格段に楽になった。人間がやっていた頃と比べれば、時間もコストも圧倒的に削減できる。
次に、その部品に使われてそうな特許を、特許データベースから探し出す。これも、AIの力で効率化された。特許文献を解析し、製品の技術要素と一致しそうな特許の候補を見つけ出してきてくれる。
こうして見つかるのは、特許侵害の可能性がある特許。それを保有している会社が中小企業であれば、しめたものだ。
中小企業は特許を取得しても、その無断使用の調査をしているところなんてほとんどない。その価値を気づきもしない。
こういった特許を持つ中小企業を、色々な手段を用いて、安く買い叩く。これで特許は玄武キャピタルのものだ。
あとは、手に入れた特許を使って、金持ち会社に訴訟を起こせばいい。莫大な賠償金をとってもいいし、ライセンス料と称して大金を定期的に徴収してもいい。
え?買収した企業?そんなものは、もう用済みだ。適当な理由を付けて、潰してしまう。中小企業の経営なんて面倒だし、従業員に給与も支払う必要がある。無駄なコストだし、非効率だ。
金は頭を使って稼ぐ。
真面目に価値を生み出して、それを商売のネタにするなんて馬鹿げてる。
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これからはヒューマノイドロボットの時代だ。
最近は、先行投資として、ヒューマノイドの製造に関係していそうな特許を中心に入手している。
大陸近くにある、ある島国は私にとっては宝箱だった。
この国は精密機械工業において、過去で世界の覇権を握っていた時期があった。美味しい特許を持っている会社がうじゃうじゃある。
さらに何より、お花畑な思考の持ち主が多いのか、日々の鬱憤が溜まっているのかわからないが、ハニートラップによく引っかかる。
さらには、その社会性。一度失敗したら終わりと言った、その風潮。
おかげで、ハニトラされた事実を必死に隠そうとして、何でも言うことを聞いてくれるようになる。
全てが上手く噛み合って、高品質な特許の狩り場となっている。
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ここでの特許狩りは、いつも同じ方法でうまくいく。
銀行員をハニトラで落としターゲット企業の貸し剥がしを行わせる。企業側にもハニトラでスパイを作ることで、更にスムーズにことを進ませる。
そうすれば、簡単に倒産の危機に陥った企業を安く買うことができる。目的の特許も手に入れられるのだ。
この国での仕事は、楽で美味しい仕事ばかりだった。
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千羽工業株式会社も、美味しい特許を持った会社だった。
いつもと同じように、銀行と千羽工業の執行役員をハニトラした。
途中まではうまくいっていた。
だが、話がまとまりそうなタイミングでケチがついた。
どうやら、他社から千羽工業を買収したいという申し出があったらしい。
それも、玄武キャピタルの二倍もの金額でだ。
あの会社が持っている特許には、実際、それぐらいの価値はありそうだった。だが、こんな島国の一企業にそんな金額を渡したくなかった。
生意気な連中だ。少し分からせてやらないといけないだろう。
私は千羽工業の経営者を脅すことにした。大陸でも、いつもやっていることだ。今回もうまくいくだろう。そんなふうに思っていた。
案の定、千羽工業の社長は簡単に落ちた。
玄武キャピタルが最初に提示した金額でだ。
ただ、売却の条件として、従業員の雇用を守ってくれるという約束をしたいから、一度会ってくれという申し出があった。
約束なんて、後でどうとでもなる。仕方ないから、島国に一度行ってやることにした。
ついでに、従順なことで有名な、この国の女を味わうのも悪くない。
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飛行機で、島国に到着する。
出迎えたのは、私が工作で使う見知った男だった。
私は何の警戒もせずに、その男に案内され、車の後部座席に乗りこむ。
さて……とりあえず、千羽工業で取引を終えてしまおう。遊ぶのはそれからだ。
千羽工業へ連れてけと、迎えに来た男に声をかけようとした。
そのとき、初めて気づいた。後部座席から、運転手が見えない。
変な車だ。周りを見渡すと、先程まで見えていた外の景色も見えなくなっていた。
私が車内の様子に違和感を感じた、そんなときだった。
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『ぴーんぽーんぱーんぽーん。』
場違いなほど陽気なチャイムが車内に響き渡った。
『こんにちは、保母ガミです。』
その声は、どこまでも澄んでいて、きれいだった。
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これが、私と玄武キャピタルの終わりが確定した瞬間だった。
いや、違う。
本当の、私と玄武キャピタルの始まりが確定した瞬間だった。
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