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オリガミ - 妹AIを神にするため、俺は成り上がる【カクヨム完結済/なろう連載中・累計59万PV】  作者: けーきまる
研究所を建設しよう

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銀行とスパイとパテントトロール

ヒューマノイドを作れる会社を子会社化できるなら、それがベストだ。


機密保持の面でも有利だし、密なコミュニケーションにより、開発効率も上がるはずだ。


ただ、叔父さんの知人の会社を買収したりして本当にいいのだろうか?その知人から、叔父さんが何か言われたりしないのだろうか?


「叔父さんのお知り合いの会社を、ドールハウスの子会社にするってことですか?この理解で合ってますか?」


「合っている。工場一体型の会社でな。資金繰りに困ってるみたいなんだ。技術力だけは俺も保証する。経営はうまいとは言えないようだが」


叔父さんが技術を保証するほどの会社……是非とも欲しい。だけど疑問がある。


「でも、そんな会社なら、藤崎グループが子会社化しちゃえばいいんじゃないですか?叔父さんのところも介護ロボットの生産力不足でしょう?」


「それがな……一つの部品を大量生産する工場なら使いやすいんだが、あいつの工場は、少量多品種の部品を作っているところなんだ。生産計画に組み込むのが難しいんだよ」


叔父さんはさらに説明を続けた。


「だから、子会社化してもあまり意味がなくてな。こちらもビジネスでやってる以上、役に立たないものは買えない。プロトタイプ生産には向いてるんだが、介護ロボットについては、その段階はもう終わっちゃってるからな」


「正太郎がほしいのは、百体程度のヒューマノイドだろ?そいつの工場の方が向いてるんじゃないか?」


「なるほど……確かに、そちらの方がありがたいですね」


数千体ものヒューマノイドは、今のところ必要ない。将来はどうなるかわからないけども。


「それと、さっきも言ったが、資金繰りに困ってるみたいでな。投資先を募ってるんだが……柚希が言うには、面倒な組織が手を上げてるらしいんだよ」


「面倒な組織ですか?」


「ああ。大陸系のヘッジファンドだ。どうやら、会社を安く買い叩いては、使えそうな特許を吸い出すだけ吸い出すなんてことを繰り返してるみたいでな。特許が国外流出するって、東堂議員も嘆いてたよ」


「その上、そのヘッジファンドは吸い出した特許を使って、パテントトロールみたいなことをして、荒稼ぎしているらしい。ゴミみたいな会社だよ」


「それは……ゴミですね。許せません」


パテントトロールというのは、自分で製品や技術を開発せず、特許だけを買い集めて、その特許を使って他の企業に訴訟を仕掛けたり、ライセンス料を請求して金儲けをする連中のことだ。


要するに、買い集めた特許で製造業を脅して利益を得る悪質なビジネスだ。


虫唾が走る。叔父さんも同じ気持ちのようだ。


「何も生み出さずに、金だけ動かしている連中だ。それで、『ものづくり』がしやすくなるならまだしも、邪魔にしかならないからな」


叔父さんは俺の反応をうかがうように言った。


「正直なところ、そんな連中に友人の工場は渡したくない。正太郎が買ってくれると助かるんだが」


叔父さんがそう言ったとき、イヤホン越しにオリガミの声が聞こえてくる。


『お兄様、社名とヘッジファンド名を。調査いたします。』


「えっと、会社名教えてもらえますか?できれば、そこを狙ってるヘッジファンドの名前も」


「千羽(せんば)工業株式会社だ。ヘッジファンドは確か……玄武(げんぶ)キャピタルだったかな」


『少々お待ちを……調査します。』


叔父さんは話を続ける。


「……玄武キャピタルに買われたら、千羽工業はどうなってしまうか分からない。下手すると、旨味がなくなった時点で、計画倒産させられるんじゃないかと思う。そうなってしまえば、従業員は路頭に迷うことになるだろう。だが、今も資金繰りが不味くて、倒産寸前らしくてな……」


今すぐ倒産するか、玄武キャピタルに頼って少し先に倒産するか、という状況に追い込まれているわけか。


でも、ドールハウスが子会社化すれば倒産を防げるし、従業員の雇用も守れる。それならWin-Winの関係にできる。


そこで、オリガミの声が聞こえてくる。


『お兄様。千羽工業ですが、悪くない会社です。お兄様好みの職人が多い会社ですね。さらに良いものを作ろうとして最新機器を導入した直後に、銀行が融資を引き上げたようです。典型的な貸し剥がしですね。これは……玄武キャピタルが何か関わっているかもしれません。銀行と組んでいる可能性も考えられます。』


オリガミが続ける。


『追加情報です。千羽工業は、お兄様のキャンピングカーを作ったあの匠ビルダーが創業者です。匠ビルダーは、引退後に趣味でキャンピングカーを作っているようですね。』


な、な、な、なんだって!あの匠ビルダーが創業した会社だったのか!買うぞ。買うに決まってる!


『本格的に動くなら、玄武キャピタルと正面からぶつかることになるでしょう。ただ、今の私たちなら十分に対応できると思われます。』


決まりだな。


叔父さんはじっと俺のことを見つめている。


「話し合いは終わったか?」


「か、考え事をしてただけですよ?」


叔父さんはニヤリと笑う。


「お前がそう言うことにしたいのなら、そういうことにしておいてやるか」


叔父さんのその言葉に反論せず、黙ってうなずく。暗黙の了解という形にさせてもらおう。


「それで?どうする?」


「千羽工業株式会社、買います」


「そうか、了解した」


「実は、うちのキャンピングカーを作ってくれたのが、その千羽工業の創業者さんらしくて。あの人が作った会社なら信頼できます」


叔父さんは目を丸くして驚いていた。


「そうだったのか……世間は狭いな……」


「やっぱり、叔父さんに相談してよかったです!早速、千羽工業に行ってきます!」


そう言って、俺が社長室を出びだそうとしたところ、叔父さんが慌てて呼び止めた。


「まてまて、俺がアポをとってやる。少し待ってろ」


しまった。興奮しすぎた。アポ無し行っても失礼なだけだろう。


叔父さんには本当に感謝だ。


「そうだ、イヌガミタイプをもう一体お貸しします。出産祝いの前渡しということで。最新型なので、前のモデルよりも性能がかなり上がっていますよ!」


赤ちゃん、めでたい!


俺がそう言うと、叔父さんは呆れたように口を開く。


「それは助かるが……お前はどこに向かってるんだ?軍隊でも作るつもりなのか?」


「大丈夫ですよ。うちは専守防衛なので。手を出されない限りは、こちらも手を出しません」


手を出してきたら、洗脳……じゃなくて更生するけど。


だって、復讐とか怖いもん。


※※※


その三時間後。


俺は千羽工業株式会社にいた。


こういうのはスピードだ。できれば玄武キャピタルに動向を掴まれる前に子会社化してしまいたい。


同行者は、エイトとよいこ軍団二人。あと五体のイヌガミタイプだ。


千羽工業株式会社は、首都圏のはずれの盆地にある工場一体型企業だった。工場一体型企業というのは、工場が会社の中核であり、本社機能も同じ敷地内にあるような会社だ。


そのほとんどが中小企業であり、訪問中の千羽工業も同様であった。


※※※


そんな千羽工業のミーティングルーム。


白い壁と長テーブル、簡素な椅子が並ぶミーティングルームだ。


よいこ軍団は、椅子に座る俺の後ろに護衛として立っている。


千羽工業の会社経営陣と向き合い、ドールハウス株式会社による、千羽工業株式会社の企業買収を提案をしていた。


「……というわけで、藤崎グループの代表からご連絡がいった通り、千羽工業を子会社化させていただきたいと考えています。もちろん、雇用はそのまま、経営陣も一部を除いて現体制を維持していただいて構いません」


そんな俺の説明に、千羽社長が口を開く。


「急なお話で、私たちも戸惑っていますが……本当に私たちを子会社化していただけるのでしょうか?雇用を維持して?」


「はい。是非とも。作って欲しいものがあるんです」


千羽社長は、メガネを掛けている。優しそうな雰囲気をまとった、柔らかい目元のおじさんだ。


年の頃は四十代前半くらいだろうか。髪はきっちり七三分けに整えられていて、よく見るとところどころに白髪が交じっている。


スーツ姿もどこか堅苦しさより親しみやすさを感じさせ、スーツより作業着が似合いそうな感じがする人だ。


千羽社長は前向きな様子だ。しかし、その空気に異を唱える人物がいた。


「私は反対です!こんな急に交渉に割り込まれては困ります。すでに玄武キャピタルとの話し合い、まとまりかけているんですよ!」


執行役員という男が口を挟んでくる。


この男、全体的に丸みを帯びた体型で、身長も低い。髪は薄くなってきており、額や頬は脂でテカテカと光っていた。体型はいわゆる小太りだ。


そんな執行委員の言葉に、俺はすかさず言葉を被せる。


「現在提示されている、玄武キャピタルの二倍の金額で買収させていただきます」


実は、玄武キャピタルが提示している投資金額は把握済みだ。


というのも、千羽工業への貸付を引き上げた銀行が、ドールハウス株式会社のメインバンクだったのだ。


メインバンクを変更しようかなあ?どうしよっかなあ〜?などと仄めかしたら、電話一本で情報を漏らしてくれた。


やはり玄武キャピタルとの癒着があったらしい。玄武キャピタルの投資予定金額まで教えてくれた。


しかし、あの銀行ダメダメだな。顧客情報も何もあったものじゃない。他の銀行にも預けて、預金の分散を図っていこう。


※※※


執行役員は粘る。


「それでも!誠意が足りないんじゃないですか!?」


「誠意、ですか……執行役員さん、あなた玄武キャピタルと随分仲がいいみたいですね?この前の大陸旅行楽しかったですか?随分スッキリとした顔で帰国されたようで……向こうで何をされてたんですか?」


執行役員の表情が固まる。


この情報も銀行からのリークだ。この執行役員、実は玄武キャピタルの窓口である。要はスパイだ。


さらには玄武キャピタルの仕掛けたハニトラにズブズブだったりする。


こんな情報が電話一本でいとも簡単に集まってしまうのだから、お金の力は本当に恐ろしい。お金がある側でいて、本当に良かった。


千羽社長は、信じられないといった目で執行役員を見ている。


「い、井口、お前……」


この執行役員、井口というらしい。まあ覚える必要ないだろう。どうせ今日でサヨナラだ。


「だ、だが!私は、この会社のことを心から思って!」


執行役員の言葉に、俺は割って入る。


「玄武キャピタルに投資を受けた会社、どうなってるかご存知ですか?」


「!!」


「その反応、やはりご存知だったようですね。俺が調べたところ、玄武キャピタルから出資を受けた企業の約八割が、二年以内に廃業しています。しかも特許を吸い取られた状態で。千羽社長、そのことはご存知でしたか?」


「いや、初めて聞いた。それでは意味がない!従業員の雇用が守れないじゃないか!」


千羽社長は従業員の雇用を一番大切に考えているようだ。いい経営者だ。


「ちなみに、銀行が融資を引き上げたのも、玄武キャピタルの指示があったからです。御社の特許を狙っていたのでしょうね」


「……全て向こうの思うツボってことか」


千羽社長は悔しそうに歯を食いしばる。


それでも執行役員は、空気を読まずに強引に食い下がってきた。


「しょ、証拠がないでしょう!証拠!あるなら見せてみなさい!」


「……」


俺は敢えて黙った。黙ることで失言を引き出させる。以前、柚希さんから学んだことだ。


「ほらご覧なさい、証拠なんてどこにもありませんよ!社長、こんな若造の話なんか信じてはいけません!」


「証拠ですか?えっと、これ、銀行からの情報なんですけど……」


俺はスマホを取り出し、銀行との通話の録音、銀行から送信されてきた玄武キャピタルとのやりとりの情報を画面に表示した。


「執行役員。あなたの楽しい楽しい大陸旅行の話や玄武キャピタルとの会食の記録、銀行から漏れてきましたよ?貴方への不可解な入金の記録もあります。証拠として十分じゃないですか?」


「な、なんで!なんで!銀行はそんな情報を……」


銀行が俺の言いなりなことに信じられないようだ。そこで決定的な言葉で追い詰める。


「この銀行、うちのメインバンクなんですよ。数百億を預けています。この意味、わかりますね?」


「ぐっ……!」


俺は千羽社長に向かって話しかける。


「御社には、ドールハウスの子会社になっていただくことになります。ただし、先ほども申しました通り、経営陣も社員の雇用も維持します。今回の不正の関係者以外となりますが。書面で契約してもいいですよ?」


「玄武キャピタルとは、そんな契約結べてますか?」


「いや……話にも出てないな……」


「玄武キャピタルの投資を受ければ、特許や技術を搾り取るだけ搾り取られて、数年後には会社は閉鎖。全員無職となってしまうでしょう。逆に、ドールハウス株式会社の傘下に入っていただければ、面倒事は引き受けます。御社は、純然にいいものをしっかりと作ることだけに注力できます。いかがでしょう?」


千羽社長は疲れた様子で言った。


「……少し……考えさせてくれませんか?」


「もちろんです。ただし回答は一週間以内でお願いします」


「玄武キャピタルは大陸系です。この国の常識が通用しません。あまり長期間こちらも警戒態勢を維持できませんので」


俺の言葉が意外だったのだろう。少し表情を硬くして答える。


「け、警戒ですか?」


「はい。社長本人ではなく、従業員や、その家族を狙って来ることも考えられるということです。もちろん、私たちドールハウス株式会社の関係者もその対象となるでしょう」


ネジの外れた人間は、簡単に強硬手段に打って出る。


あー、嫌だ嫌だ。世知辛い世の中だ。


※※※


オリガミがイヤホンから話しかけてくる。


『お兄様、イヌガミタイプを三体とよいこ軍団二名をこの会社に置いていきましょう。イヌガミタイプ、トビガミ、ハチガミを即時展開できるトラックを準備します。よいこ軍団十名ほどと共に、こちらへ向かわせます。』


俺も唇だけを動かしてオリガミと会話する。


「わかった。俺は……どうしよう。この地に残ったほうがいいかな?」


『いえ、お兄様ができることは、ここにはないでしょう。おそらく襲撃があるとしたら、ここ数日のうちです。お兄様は、オリガミタンクの追加による、私の能力の底上げの継続をお願いします。』


千穂の家にも爺ちゃんたちの家にも、叔父さんのところにも、イヌガミタイプはいる。とりあえず俺の身近な人間は安全か……。


オリガミとの密談を終えた俺は、改めて千羽社長の方へ向き直った。


「千羽社長、護衛として俺が持っている警備会社の二人とイヌガミタイプを置いていきます」


「え?イヌガミタイプとは?」


そんな言葉を千羽社長が言い終わった直後、隠蔽デバイスを無効化したイヌガミタイプが、俺の周囲まで駆けてくる。


ものすごい速さで現れて、俺の周りでぴたりと動きを止め、おすわりの姿勢をとった。


そして、俺はドヤ顔で彼らを紹介する。


――「こちらがイヌガミタイプです」


※※※


ナイスだ!


今のイヌガミタイプの登場、かなりカッコ良かった!オリガミ、分かってるじゃないか!


イヌガミタイプは、よいこ軍団の後ろをついてこさせていた。もちろん、直前まで、光学迷彩とノイズキャンセリングを有効化していた。ここに、武装した玄武キャピタルの人間がいる可能性を考えての備えだった。


千羽社長は、突然現れたイヌガミタイプに、かなり驚いているようだ。


「な!これは……!犬型ロボットですか?市販品のように見えますが……動きが……」


「はい。護衛のために連れてきていました。ドールハウス株式会社のAIが制御しています。これ一体で、環境にもよりますが成人男性二十人程度の相手が可能です。三体置いていきますので、狙われそうな場所に配置して下さい。千羽社長の指示を聞くように言っておきますので」


俺はさらに説明を続けた。


「ちなみに千羽工業がうちの傘下になった場合には、ヒューマノイドと新型の犬型ロボットを作っていただく予定です。設計と制御AI開発はうちがやります。うちは制作ができないので、千羽工業にそれをやってもらいたいのです」


「これを……作る?」


バク転を繰り返して、その運動能力アピールを行うイヌガミタイプに、千羽社長の目は釘付けだ。その瞳が少し輝き始めたように見える。


「どうです?ワクワクしませんか?」


「正直、ワクワクします……」


イヌガミタイプに見入っている千羽社長に、俺は今後の説明を始めた。


「残していく警備二人は、イヌガミタイプのオペレーターみたいなものと考えていただければ結構です。ホテル代はこちらで払いますので」


「いえ。社に泊まれるスペースがあるから大丈夫です」


「助かります。それでは、俺は社に戻ります。千羽社長のご判断をお待ちしております」


俺は、エイト以外のよいこ軍団の二人に声を掛ける。


「じゃあ二人とも、後は頼むぞ?」


「「は!社長!」」


※※※


イヌガミタイプを見て、そして「よいこ軍団」の反応を見て、思うところがあったのだろう。


千羽社長は、小さな声で質問を投げかけてきた。


「……藤崎社長は……悠斗の甥なんですよね?」


「はい。そうです。悠斗叔父さんは俺の尊敬する人ですね」


「悠斗も悠斗だが……藤崎社長もとんでもないですね……藤崎家って超人の家系かなにかですか?」


「あははは……俺は折り紙の天才って呼ばれてます」


そう苦笑いをしながら、席を立つ。


「では、そろそろ失礼します。あ、そうだ……執行役員のスパイ疑惑の証拠はスマホに送ってあります。確認しておいてください」


がっくりと肩を落とす井口執行役員を横目で見ながら、俺は千羽社長に、そう声をかけたのだった。


※※※


千羽工業の社屋を出てすぐ車に乗り込み、そのまま自宅へと向かった。


疲れた。ネムか千穂に会いたい。


家に帰ると、ふらふらと廊下を歩いているネムを見かけたので、俺は飛びついてその胸に顔を埋める。


「ネムぅ!つかれた!」


「おわあ!びっくりした!ん?正太郎は甘えん坊さんモードか?いいぞ?お姉さんに、甘えろ?大変だったんだな?」


ああ……癒やされるぅ。


俺は、ネムに頭を撫でられながら、スーハースーハーとその胸元で深呼吸を繰り返したのだった。


※※※


そして、束の間であろう日常へと戻る。


ネムと一緒に毎日コツコツとオリガミタンクを追加し、千穂の手料理をたべつつ、穏やかな日々を過ごす。


最近のネムは昼夜逆転の生活を直したらしい。千穂によると、体力をつけるためだそうだ。


それって……俺とのアレのためだよね。ああ……俺のお嫁さんたちはやっぱり最高だ。


ネムは、変わらず介護ロボットを制御するフィジカルAIの調整作業をしていた。自分が作ったAIが人の役に立つというのが、彼女にとってはすごく嬉しいようだ。目をキラキラさせながら、毎日作業に取り組んでいる。


千穂は真面目に大学に通っている。早瀬さんによると、優雅なキャンパスライフとは程遠く、毎日勉強づけらしい。それなのに、俺たちのためにご飯まで作ってくれる。千穂の料理がないと俺達の生活は成り立たない。本当に頭が上がらない。


俺は、三階のフィジカルAI学習フロアで、百体程度のイヌガミタイプの持続的な学習の立ち上げ作業をしていた。オリガミのお陰で、色々なことが自動化できているとは言え、何かを始めるときは、やはり人の力が必要となってくるのだ。


だけど、ヒューマノイドの学習がある程度完了したら、それも必要無くなるのかも知れない。


そのとき、俺は何をしたらいいんだろう。やはり、交渉とかがメインになるのだろうか。でも、ビジネスでの交渉とか、疲れるからできれば避けたいんだよな。


俺はビジネスがしたいわけじゃない。オリガミに賢くなってもらうために自分にできることをしたい。俺の折り紙スキルを活かしたDNAナノボットの作成や改良のような形で、もっと何か貢献できないだろうか。今度オリガミに相談してみよう。


※※※


そんな日々を過ごし、千羽工業から戻ってきて五日が経った。


オリガミタンクは五つ追加され、二十二個になっていた。


そして、その夜のこと。


想定していた通りの事態が発生したのだった。

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