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オリガミ - 妹AIを神にするため、俺は成り上がる【カクヨム完結済/なろう連載中・累計59万PV】  作者: けーきまる
研究所を建設しよう

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ざまぁ:放火男のポエム大公開

「移動おもちゃ箱」にて洗脳……もとい更生を完了させた副署長。


あの様子なら、この先俺たちの駒として、じいちゃんやばあちゃんを守ってくれるだろう。


ゴタゴタの後も、俺とネムは、じいちゃんたちのセキュリティレベルの強化作業を着々と進めた。


※※※


家にはトビガミも配備した。外でじいちゃんたちが襲われたときのためだ。


大型ドローンであるトビガミがいれば、イヌガミタイプを空輸できる。いざというときはイヌガミタイプによる強襲が可能だ。外で緊急事態があったときのための対策だ。


オリガミ端末も念のため渡してある。首にかけるようにお願いしているが……果たして持ち歩いてもらえるだろうか?


そうだ、イヌガミタイプに、オリガミ端末をじいちゃんたちが持ち歩くように毎日お願いさせればどうだ?うん、それなら大丈夫だろう。


さて……これ位やっておけば、じいちゃんとばあちゃんのセキュリティ対策は大丈夫だろう。今できることは全てやったはず。


そろそろ、次のステップに進む必要がある。俺たちは俺たちのやるべきことに戻らなければいけない。


※※※


じいちゃんに、そのことを伝える。


「じいちゃん、ばあちゃん、俺たち明日帰るよ」


俺の言葉に、じいちゃんが残念そうに答える。


「そうか……急じゃな。もう、こっちでやることは終わったのか?」


「ああ。ゆっくりするつもりだったんだけどな。放火男のせいで台無しだよ」


「すまんな。ワシが事故ったせいで」


「いや、じいちゃんは一方的な被害者じゃないか。気にしちゃ駄目だよ」


そう、事故と放火に関しては、俺達は一方的な被害者だ。何も悪いことはしていない。


ばあちゃんも寂しそうに口を開く。


「正太郎?もう帰っちゃうの?千穂ちゃんともネムちゃんとも、もっとお話したかったのに……」


「ごめん、婆ちゃん。向こうでやることがあるんだ。研究所が完成したから、研究を進めなきゃいけないんだ」


「そうよね……正太郎たちも忙しいものね……」


「また来るからさ。そんなに寂しそうにしないでよ。ね?」


とはいえ、次に来れるのはいつになるのか……オリガミタンクが自宅の地下にあるから、あまり自宅から離れたくないんだよな……うん?よく考えたら、俺が来ることなくない?


俺は思ったことを口に出す。


「研究所ができて、部屋もたくさん余ってるし、いつでも遊びに来てよ。うちにはイヌガミタイプもたくさんいるからさ」


「あら、そう?お邪魔じゃなければ、おじいさんと遊びにいこうかねえ」


ばあちゃんの提案に、じいちゃんも乗っかる。


「いい考えじゃな!ワシ、ネムさんに将棋で勝利しないと駄目じゃからな!」


「ふっふっふ。たとえ、じいちゃんでも、ワタシは手加減しないぞ!そう簡単には勝たせないからな!」


お?じいちゃん相手のネムの大人モードがなくなってる。


どうやら、将棋を通して仲良くなったようだ。「仲良きことは美しきかな」だな!


※※※


さて……家に帰る前に一つだけ、やりのこしていることがある。


そう、放火男への「ざまぁ」だ。


放火男の顔の火傷は、前庭砲により意識を失い、火の中に倒れたときのものである。だが、あれは偶然起きたことだ。


正直、こっちは千穂とネムが焼き殺されそうになったのだ。それぐらいで許せるわけがない。放火男の火傷や視力低下ぐらいじゃ割に合わない。


まだ足りない。あとちょっとだけ、嫌がらせして帰ろう。正直、放火男には、直接いろいろ言ってやりたいのだ。


もちろん、この行動には実利的なメリットはない。


だが、俺がスッキリするというのは、オリガミにとって重要なことらしい。


『お兄様?放火男に対して、何か制裁を与えられないのですか?あまり我慢しすぎるとメンタルによくありませんよ?』


なんて言っていた。


察するに、オリガミは俺に「放火男ざまぁ」をして欲しいと思っているようだ。


なんせ、俺が何も言わなくても、放火男をからかうためのネタをしっかり準備してくれていたのだ。


……乗るしかないでしょ、このビッグウェーブに!


※※※


俺は、ネムと千穂に話しかける。


「今から放火男をいじめてこようと思うんだけど、千穂やネムもくるか?」


俺の言葉に、千穂は、眉をハの字にして答える。


「私はいいかな。怖いし」


まあ、予想通りだ。千穂は人が追い詰められるのを見て喜ぶ子じゃない。


「ワタシも行かない。興味ない。帰った後の研究所接続の最終工程をチェックしとく。あー、ワクワクするな!」


ネムは放火男より研究所のことで頭いっぱいのようだ。それでこそネムだ。


俺は隣にいた、じいちゃんにも聞いてみた。


「じいちゃんはどうする?」


「行っとこうかの。正太郎がどういう風に、あの男を追い詰めるか見てみたいし」


一応、婆ちゃんにも聞いてみよう、絶対に来ないと思うけど。


「ばあちゃんは……行かないよね?」


「行かないよ。顔も見たくないし。わたしゃ、千穂ちゃんと料理談義してるよ」


うんうん。それがいいよ。こんなことに関わる必要はない。


こうして、「放火男ざまぁ作戦」の参加者は、俺とじいちゃんとオリガミに決まった。


まあ、作戦ってほどのものじゃないか。ケガ人に文句言ってくるだけだ。気楽に行ってこよう。


※※※


今回の「放火男ざまぁ作戦」は、副署長も一緒だ。


なぜなら副署長がいないと、放火男に面会できないからだ。


そりゃそうだ。俺達は放火男の親族でもないし、警察関係者でもない。


放火男は、事件の容疑者でもあるのだ。逃亡の恐れもあり、放火男への面会は制限されている。


つまり、俺とじいちゃんだけで病院に行っても、追い返されるのがオチって訳だ。


※※※


副署長とは、病院の駐車場で落ち合った。


そして、副署長は、俺に会うなり声を張り上げる。


「正義!正義!正義!正太郎さま!」


副署長、やっぱり大丈夫じゃないんじゃないかな?側坐核砲打たれすぎたのでは?


「な、なんじゃ、なんじゃ?」


俺の前で態度を急変させた副署長を見て、じいちゃんも戸惑っている。


俺は慌てて、副署長に強めに声をかける。


「副署長、しっかりしてください!」


「はっ!んんっゴホン!正太郎殿、この度は甥があのようなことをやらかしてしまい、誠に申し訳ない」


「いえ。副署長は悪くないですよ。それに、こうやってあいつを糾弾する機会をくださったわけですしね?」


じいちゃんが戸惑った様子で話しかけてくる。


「正太郎、この人は?」


「紹介するよ。所轄警察署の副署長をしてる人だよ」


「け、警察署の副署長?なんでそんな人を正太郎が知ってるんだ?」


「この前、柚希さんたちと警察署に行ったときに色々あってさ。知り合いになったんだ」


副署長はビシッと背筋を伸ばし、じいちゃんに頭を下げる。


「お初にお目にかかります、正太郎殿の御祖父上。この地の警察署で副署長をしているものです。この度は甥があのようなことをやらかしてしまい、誠に申し訳ありません」


「いや……あんたは悪くないじゃろ?」


副署長の甥が放火犯だということは、じいちゃんにはもう伝えてある。


副署長は頭を上げずに、話を続ける。


「いえ、私の監督不行き届きでもあります。誠に申し訳ありませんでした!」


「まあ、ボヤですんだから大丈夫じゃ。あんたも大変じゃのう」


「恐縮です。さすが正太郎殿の御祖父上。器が大きい!」


「お、おう……」


じいちゃんは戸惑い気味だ。50台後半の地位がある男が、俺をやたら持ち上げるんだもんな。無理もない。


「しかし……正太郎殿は本当に立派な方ですな。御祖父上の息子殿は、さぞかしすばらしい教育をされたのでしょう」


「……な、なあ。正太郎?お前、副署長に何をしたんじゃ?」


訝しげなじいちゃんの視線に、俺は思わず目を逸らした。


言えるわけがない。電磁波で脳の側坐核を刺激してるなんて説明できるはずがない。


今だって、副署長、俺のことを褒め称えることで快感を感じてるんだろうな……。


じいちゃんの質問に、俺は口を閉ざすことしかできなかった。


※※※


副署長に案内されて、俺たちは放火男が入院中の病室の中に入る。


放火男は、顔の半分をガーゼで覆われた状態で、寝転がりながらスマホを触っていた。


話によると、火傷で片目はほとんど失明状態らしい。スマホを操作できるくらいだから、もう片方の目はまともに見えるのだろう。


俺は、放火男に声をかける。


「よう、放火男。久しぶりだな?男前になったんじゃないか?前より見れる顔になってるぞ?」


「て、てめえは!」


「片目みえないって?大変だな?」


「誰のせいだよ!?」


「自分のせいだろ?違うのか?俺達がなんかしたか?お前が放火するからそうなったんだろ?」


「……くそっ!」


こいつ……自分が悪いことしたって思ってないのか?罪悪感とかないのか?


少し気になったので聞いてみた。


「お前さ……反省してないの?俺の大切な人達を焼き殺す可能性あったんだぜ?」


「それがどうしたよ!あれはな!ただの『勘違い』だったんだよ!」


「『勘違い』だって?何をどうしたら、勘違いで放火しちゃうの?」


「知るかよ!」


なるほどね「勘違い」ね。お前が勘違いするなら、俺も勘違いしていいよね。


俺はニヤリと笑って、放火男に話しかける。


「なあ、放火男。この前、笑えるXYのアカウントを見つけちゃったんだよね。裏垢っていうの?ポエムとか書いてあってさ。なんかお前のこと思い出しちゃってさ」


その言葉に、放火男がビクリと体を震わせる。


「見てみろよ?あ、片目じゃあんまり見えないかな?じゃあ、俺が読んでやるな?」


※※※ †堕天使の真なる翼† ※※※


――我が魂、闇より目覚め、虚空に舞い散る黒き羽根。


滲む記憶は過去の残滓。滅びの予感は鼓動を蝕む。


幾億の夜を超えて 運命の鎖は絡みつく。


偽りの法(ルール)、偽りの光。


微笑む月だけが、真実を照らす。


朽ちた楽園を彷徨いながら 俺の中の“獣”が目覚める。


この傷はしがらみ、この痛みは契約(パクト)。


禁忌の書に記せ、絶望すら美学になると。


我が名を問うな。


世界が壊れるその瞬間、俺だけが自由だ。


消え入る運命に抗って、今――魂に黒い炎を灯す。


“堕天の檻を破りて、真の翼を解き放たん――”


※※※


ポエムを読み上げてやると、放火男の顔が真っ赤になっていく。


「ぐあああああああ!やめろ!やめろ!やめろ!」


「あれぇ?どうしちゃったの?なんで、やめないと駄目なの?誰が書いたか知らないけど、最高のポエムじゃないか!これ、みんなに見てもらったほうがいいんじゃないか?」


裏垢にはこんなポエムが500個以上投稿されていた。こいつ、ナルシストってやつかな?


さらに放火男を精神的に追い詰めていく。


「ちなみに、このスマホのボタンをポチッと押すと、お前が今まで関わってきた人達に、このポエミーな裏垢情報が送られるようになってるんだ。せっかく見つけた裏垢だし、皆の笑いのネタにしないか?」


「おねがいだから、やめてくれぇ!」


「大丈夫だって!もちろんお前の初恋のあの子や、つるんでたアイツら、それに職場で気になってる受付のあの子にも送信されるようになってるから!この笑える『裏垢』みんなで一緒に見て楽しみを分かち合おうぜ!ポエムみたいに『真の翼』解き放っちゃおうぜ!」


「たのむぅ……頼むからぁ……」


「どうしよっかなあ……ん?あれ?おっと!『勘違い』で送信しちゃったぁ!でもいいよね!お前が大好きな『勘違い』だもんね!」


「なっ!」


ピコン!ピコン!ピコン!


「お?なんかたくさん反応が帰ってきたぞ……どれどれ……『なんで自分の裏垢をバラしちゃってるの?』だってさ!あれ?しまった!裏垢情報、お前のXYのアカウントで送っちまった!ごめんな!また『勘違い』して!というか、この裏垢、お前のなの?良いセンスしてるじゃん!」


俺の言葉に、顔を真っ赤にする放火男。


「おーおー。みんな大爆笑してみるみたいだぞ。いい年してチンピラみたいにイキってるのに『堕天使の真なる翼』なんてポエム書いてるんだもんな。お?お前のあだ名『堕天使』になったみたいだぞ?センスいいな!あ、お前お気に入りの受付の子も反応してる!『その年で厨二病はある意味貴重』だってさ!良かったじゃないか!」


「なんて!なんてことをぉ!」


放火男は、顔を抑えて、ベッドの上をゴロゴロとのたうち回ってたのだった。


※※※


少し時間が経ち、真っ赤から真っ白になった放火男に、さらっと声をかける。


「あ、そうだ。お前、退院したら逮捕されるから」


「は?え?」


「副署長さん、病室に入ってきて」


そう言うと、副署長が病室の中に入ってくる。大きな精神的ダメージが与えられるタイミングまで、外で待機してもらっていたのだ。


放火男は呆気にとられて、口を開く。


「お、叔父さん……」


「お前……いい年して情けないやつだな」


心底アホらしいといった目で、放火男を見る副署長。その視線、いいね。副署長、やるじゃないか。


「という訳で、副署長も俺の味方だ。放火も、過去の悪いことも、全部の被害届が警察に受理されたから。退院したら、すぐに逮捕状が執行されるだろうな」


「そ、そんな……なんで?」


放火男の問いかけに、副署長が低い声で答える。


「悪いことやったからに決まってるだろうが」


「当分、刑務所から出れないだろうな。放火の罪は重いぞ?十年くらいは出てこれないんじゃないかな?」


俺の言葉に、自分の暗い未来を想像してしまったのだろう。


とうとう、放火男の精神が決壊した。


「うおおおおん!助けてくれよおおお!俺はそんなつもりじゃなかったんだあああ!!許してくれよおおおお!!」


しゃくりあげて喉をふるわせ、情けなく泣き叫ぶ男の声が部屋に響き渡る。


床に崩れ落ち、もがくように手を伸ばしながら、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして叫び続けている。


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……もうしません、絶対にもうしませんから……!」


その姿は惨めで、情けなくて、あまりにも滑稽だった。


その様子を上から見下ろしながら、副署長に声を掛ける。


「副署長。あとはコイツにしっかりとわからせてやって下さい。逆恨みされても面倒なので、出所してきたらコイツも正義プログラムを受けさせるので」


副署長は、力強くうなづいた。


「正太郎殿!わかりました!おまかせください!」


放火男は手駒にはいらないけど、出所後の更生は必要だろう。悪いことができないようにしなければいけない。じいちゃんたちに迷惑かけられたら困る。


っていうか、それも十年以上先の話か。そんな先のことまで心配しても仕方ないな。


「じゃあな。自分のやったことを深く考えて、この先の人生、後悔して過ごせ」


そう言うと、泣きじゃくる放火男を背にして、病室を出たのだった。


――うん、スッキリした!


※※※


ずっと黙って、俺と放火男のやり取りを見ていたじいちゃんが口を開く。


「正太郎……お前、怖いやつじゃな……」


じいちゃんは、俺のやり方を見て少したじろいでいるようだった。


「あいつ、俺たちみんなを焼き殺そうとしたやつだよ?これでも甘いくらいだよ」


「まあ……それもそうじゃな」


放火男は、顔のやけどがひどいし、片目も失明寸前だし、逮捕もされる。今回はこれくらいで許してやるさ。


じいちゃんが、少し不安げな顔で俺に尋ねてきた。


「さっき、あの男のポエムを晒したって言ってじゃろ?大丈夫なのか?名誉毀損とかで訴えられたりしないんじゃろか?」


「ああ、大丈夫大丈夫。あれ、嘘だよ。実際には晒したりしてない。ダミーのXYアプリを作って、それっぽくスマホに表示しただけ。さすがに警察官の副署長の前で本当にそんなことしないよ。でも、放火男の心は完全に折れてたでしょ?」


じいちゃんは、さらに距離を取るような目で俺を見てきた。


「……お前だけは怒らせちゃ駄目だと思ったわい」


いやいや、俺はまだ優しい方だと思うよ。オリなんとかさんだったら、放火男はきっとこの世にいないと思うし。


『お兄様?』


こういうことを考えていると、すぐに察知してくるオリガミ。


なんで気付かれるんだろう?どこで見抜いてるんだ?


じいちゃんに聞こえないように小声でオリガミと話す。


「じいちゃんたちの孫である藤崎オリガミとして、オリガミが怒るのは当たり前じゃないか。俺だって、普通に社会で生きてなかったら、放火男を消してたかもしれないしさ」


そう言い訳めいたことを言うと、オリガミが予想外の反応を見せた。


『ふ、藤崎オリガミ……なんだか新鮮です!家族みたいですね!』


オリガミは「藤崎オリガミ」と呼ばれたのが嬉しいようだ。声のトーンがやわらかくなった気がした。


そういえば、今までオリガミをフルネームで呼んだことなんてなかったかもしれない。でも、俺の妹なんだから「藤崎オリガミ」で当たり前だよな。


ただ……家族か……確かにオリガミの言う通りだ。


「同じ苗字だと家族って感じがするな……よし、オリガミのフルネームは藤崎オリガミな。オリガミは家族なんだし!」


『はい、お兄様!』


オリガミはとても嬉しそうな声を出したのだった。


※※※


さあ、今度こそ、こっちでやることは全部終わった。


あとは、じいちゃんとばあちゃんに、ちょっとだけ祖父母孝行をして、明日帰る。


次は研究所だ。オリガミを神に近づけるぞ!

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