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オリガミ - 妹AIを神にするため、俺は成り上がる【カクヨム完結済/なろう連載中・累計59万PV】  作者: けーきまる
研究所を建設しよう

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とっても怖い柚希さん

柚希さんと手フェチの変態が来た日の翌日午前中。


俺達は、じいちゃんの家の居間で作戦会議を開くことになった。


いろいろな人が出入りして、落ち着かないかもしれないが、たぶん今日で全て終わるはずだ。


じいちゃんとばあちゃんには、もう少しだけ我慢してほしい。


※※※


そして今、警察署での話し合いに参加するメンバーがここに勢ぞろいしている。


まずは、俺と柚希さん。


それからネム。柚希さんの推薦だ。東応大学准教授という肩書きと幼い見た目が役に立ちそうだかららしい。幼い見た目という理由で選ばれたことについて、本人は不本意な顔をしていたが。


あとは叔父さんの秘書である笹木玲奈さんと、司法修習生の笹木詩織さんの二人。この二人には、主に笹木家の威光を借りる目的で来てもらっているらしい。


昨日と違い、今日の笹木家の方々は静かだ。詩織さんのこちらを見つめる視線は、相変わらず熱いが、昨日みたいに絡んでこない。きっと、柚希さんにお説教を食らったのだろう。


そして、最後に柚希さんが連れてきた二人の男性弁護士だ。「弁護士いっぱいいるよ係」らしい。そんな係のために、こんなところまで来ていただいて実に恐縮だ。事が終わったら、何かお礼が必要かもしれない。


ちなみに千穂は出席しない。俺のリラックス剤として居て欲しい気持ちもあるが、彼女は交渉にはとことん向かない。だからお留守番だ。


※※※


居間に集まった面々の前で柚希さんが説明を始める。


「署長と副署長が署にいることは確認済です。カチコミは本日実行します」


か、カチコミ?


柚希さんが、ゆっくりと説明を始める。


「では、今日の作戦について伝えます」


「まずは、フェイズ1。私と正太郎くんとネムさんの3人で署内に入ります。若い2人と私だけだと、警察側も油断して失言をしやすくなるはずです。署内では正太郎くんとネムさんが、被害届の受理をしつこく頼んでください。このとき、警察側にできるだけ多く話させるようにしてください。タイミングを見計らって、私が弁護士であることを明かして、担当者を問い詰めます」


柚希さんが問い詰めるための材料がそろうまで、警察にたくさん話をさせればいいってことか。知らないふりをして、警察にいろいろ質問すれば、きっとどこかでボロを出すと考えているのだろう。


「そしてフェイズ2。おそらく話し合いの相手が当事者である副署長本人に変わるはずです。そこでも、向こうは必死に被害届を出さないようにお願いしてくるかもしれません。でも、このフェイズで残りの弁護士や笹木家の人たちにも加わってもらいます。副署長は、きっと観念すると思います」


オリガミによると、笹木一族には「警察庁長官」がいるらしい。そりゃあ、自分たちの組織のトップが一族にいると知られたら、違法な手段を使ってまで出世しようなんて思えなくなるよな。


正直、笹木さんがなんでいるんだろう?と疑問だったけど、ここでその「威光」を使うためだったのか。納得だ。


柚希さんが口を開く。


「最後に、フェイズ3。事件を揉み消そうとしたことを追及します。ここでは署長も同席させます。持てる限りの権威を使って、署長と副署長を問い詰めます。私が合図を出したら、正太郎くんは優しい警官役をお願いします。そのあとは、正太郎くんの好きにやってくれていいですから」


つまり、徹底的に圧力をかけて、相手の心が折れそうになったところで俺が優しくフォローする、というシナリオだ。


これ「よいこ保育園」でやった手法と似てるな。やっぱり、相手に言うことを聞かせるアプローチって基本は共通してるんだな。勉強になる。


しかし……こうやって作戦の説明を聞いていると、なんだかオリガミの話を聞いている気分になる。


俺だって、オリガミの主導のもと、似たようなやり取りを何度も経験している。今回は柚希さんの主導だけど、いつも通り動けば問題ないだろう。


ただ、こっちが大人数で臨むのは初めてかもしれない。オリガミにとっても良い勉強になりそうだ。


※※※


作戦説明が終わった後、玄関から外に出て、皆それぞれの車に分かれて乗り込む。


俺が乗るのは、早瀬さんが運転する車だ。後部座席は俺とネムだけだ。


笹木ズの二人と一緒じゃなくて助かった。きっと柚希さんが配慮してくれたのだろう。


「しょうちゃん、ネムちゃん、がんばってきてね!」


千穂が大きく手を振って、俺たちを見送ってくれる。かわいい。


俺とネムも千穂に手を振り返していると、車はゆっくりと所轄警察署に向けて出発したのだった。


よし、気合い入れていこう!


※※※


警察署にはすぐ到着した。


署内はあまり混雑しておらず、作戦を実行するにはちょうどいい雰囲気だ。


受付で事件の担当警官を呼んでもらうように頼む。


しばらくすると、担当警官が少し面倒そうな顔をしてこちらにやって来た。


俺はその警官に、もう一度被害届についてお願いする。


「すみません、先日発生した藤崎家の放火事件について、被害届を提出しに来ました」


「いや、だからですね……あの事件の受理は出来ないんですよ」


「受理できない?どうしてですか?」


「いや、前にもいいましたけど、証拠が不十分でして……」


ここまでは以前と同じ流れだ。ここからは、相手に質問を重ねてできるだけ多く話させなければならない。


「証拠が不十分だと被害届って受理できないんですか?」


「はい、そういう決まりになっています」


「それって、法律に書いてあるんですか?」


「そ、そうなんです。自分もおかしいなと思うんですけど……」


おかしいと思うなら受理してくれてもいいじゃない。まあ、今更スムーズに受理されちゃったら、困るのはこっちなんだが。


俺は少しずつ具体的な回答をしなくちゃいけなくなるように質問を重ねていく。


「本当にそんな法律があるんですか?思い違いとかじゃなくて……?」


「本当にあるんですよ。あの、そろそろいいですか?こっちも忙しいので」


警官は面倒くさそうな態度を隠さない。


「その法律、実際に法律書で確認されたことあるんですか?」


「なんですか?自分を疑ってるんですか!」


きた。こうして話を無理やり終わらせようとするのは想定の範囲内だ。この場合は、事前の打ち合わせ通り「被害者アピール」だ。


俺はそっとネムの背中を叩いて合図を送る。


それを受けて、ネムが憤った演技をして口を開いた。


「わ、ワタシも焼き殺されそうになったんだぞ!こんなにちっちゃいワタシが、必死で訴えてるのに!ちゃんと教えてくれてもいいじゃないか!」


ごめんなネム……自分のこと「ちっちゃい」とか言わせちゃって。でもよく頑張ってくれた。ここは俺が話をつなげる番だ。


「そうですよ!この子も俺も本当に怖い思いをしたんです!こっちは焼き殺されそうになってるんですよ!それくらい教えてくれてもいいじゃないですか!」


「あ、ありますよ!見たことあります!」


ほう……証拠不十分だと被害届が出せないと法律書で確認したとな?どこの国の法律書を見たのかな?


「それ……自分でも見てみたいんですけど、どんな法律かわかります?」


「……すみません。忘れてしまいました。もういいですか?他にも仕事があるんですけど」


その後も、この場を離れたがる警察官に、しつこく質問したり、被害者アピールしたりしていると、柚希さんが静かに俺たちの前に出てきた。追い詰める準備が整ったってことだろうか。


彼女は落ち着いた声で、担当警察官に向けて話し始める。


「私もその法律、聞いたことがありません。もしご存じでしたら、ぜひ教えていただきたいのですが」


「いや、だから忘れたって言ってるじゃないですか!」


「でも、一度ご覧になったんですよね?覚えている範囲で結構ですので、教えてもらえますか?」


「もう、しつこいですよ!こちらも忙しいんです。公務執行妨害で訴えますよ!」


「公務執行妨害?それはおかしいですね……公務員に対する職務執行に暴行や脅迫がなければ、公務執行妨害にはなりませんよ?あ、自己紹介が遅れましたね。藤崎柚希と申します」


――「弁護士です」


「!!」


柚希さんの言葉に、担当警察官の顔がみるみる強張っていく。


これ、御老公とやってること同じじゃないか。この弁護士バッジが目に入らぬか!って感じだ。


「ところで、証拠不十分だと被害届を受理できないっていう法律、刑法第何条に書かれているのか教えてもらえます?」


「そ、それは……」


当然、答えられるはずがない。そんな法律は存在しないのだから。


「……ちなみに、あなたが被害届を受理しないのも、間違った公務執行妨害を主張するのも、刑法第193条の職権濫用罪に該当する可能性がありますけどね?」


「いえ、そんなつもりは!」


そして、柚希さんは率直に要求を伝えた。


「副署長とお話しできますか?」


「な、なぜ副署長なんですか?」


その言葉に、柚希さんは担当警察官の目をハイライトのない目でじっと見つめ黙る。無表情で、何を考えているのか全く分からない。


それから、十秒くらいそのまま黙ってたろうか。再び、ゆっくりと話しはじめる。


「……色々わかってるからですよ……色々ね?」


「い、色々……」


「それに、部下の不手際について、上司と話し合うのは当たり前のことですよね?」


担当警察官はしばらく黙っていたが、重い動作で内線を手に取って、どこかへ連絡を始めた。


「……少々お待ちください」


こうして俺たちは柚希さんのおかげで、副署長と直接話せることになったのだった。


※※※


だめだ……怖すぎる……やっぱり、この人だけは敵に回したくない。


なんだ、さっきの沈黙の威圧。心理的制圧術か?俺も今度真似してみようかな?でも、どうやって目のハイライトって消すんだ?


ネムが小さな声で俺に尋ねてくる。


「な、なあ、柚希さんって、いつもあんな感じなのか?」


彼女の声は少し震えている。初めてあんな柚希さんを見て衝撃が強すぎたのだろう。無理もない。


「俺の中のイメージでは、大体いつもこんな感じだ……」


「こ、こわいな?」


「ああ……怖いよな」


やっぱり、ネムとは気が合うな。でも、こんなことで気が合いたくなかったよ……。

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